保育園経営者が抱える3つの悩みとは?~人材・教育・コスト~

現在の保育園経営の課題は、「優秀な人材確保」「保育士の教育」そして「経営コスト」の3つだと言われています。

フルタイムで働く女性が増えて保育園のニーズが高まる中、保育士不足が続いていますが、その主な原因は、多岐にわたる仕事内容と仕事量の多さ、そして給与の少なさがあげられます。

厚生労働省が2020年に発表した『保育の現状と主な取組』によると、全職種の月収換算が40.7万円のなか、保育士は30.3万円となっており、低すぎる賃金体系が社会問題となっています。

さらに、2018年には、保育所保育指針が改定され「子どもたちの育ちや生活」に軸を置いていた保育園も幼稚園同様に「教育施設」として位置づけられ、保育士の質の向上とそれに伴う研修体制が必要になったのです。

保育士に長く働いてもらえる環境整備や給与の見直し、人手不足の中、より質の高い保育と研修時間の捻出といった「人」「教育」「コスト」が保育園経営者に急務としてのしかかっています。

【悩み①】保育園の人材を確保するコツ

保育士の退職理由で「仕事量が多い」「労働時間が長い」と答える人は半数以上にのぼります。保育士を確保するポイントとして業務の分散や効率化は必須です。その方法をいくつかご紹介します。

保育補助の積極的な採用

保育士は保育の仕事に加え、登降園の対応や保護者からの電話対応、制作の準備や片付け、清掃などの事務や雑務も兼任することが珍しくありません。こういった保育以外の業務を保育補助に任せると、保育士の負担をずいぶんと減らせます。

また、保育士を目指す学生などを保育補助で採用すれば、資格取得後に正規保育士として声を掛けやすくなる利点もあります。正規雇用前に人となりが分かる上、園の実情も分かった人物となるので、有能な人材確保の先行投資としても有効です。

パート・アルバイト保育士の活用

保育士が短時間勤務(パート・アルバイト)をできる多様性のある働き方もポイントです。

週3日・1日3時間などの勤務が可能になると、育児や介護など家庭の事情がある保育士も働きやすい環境になります。わずかな時間でも、保育補助よりも幅広い業務を任せられる資格を持った保育士が増えることでフルタイムの保育士にも余裕が生まれます。

パート・アルバイトの保育士がいる時間帯に研修やミーティングを行ったり、連絡帳や保育日誌の作成時間にあてたりと正規の保育士が自由に動ける時間が多くなり、残業の削減にもつながります。

変動労働時間制を導入する

残業時間の削減には「変形労働時間制」もおすすめです。変形労度時間制とは、通常1日8時間とされている労働時間を、月単位や年単位で調整できる制度です。

変形労働時間制を導入すると、今月勤務時間が長かった保育士は翌月を短く設定するなど、個人の仕事内容や繁忙期に合わせてシフトを調整できるため、労働時間を効率的に利用できます。

暇な時でも必ず8時間勤務といった無駄な時間は減り、早く上がった分を忙しいときの勤務時間として回せるので、残業手当が減らせるのも経営的なメリットです。

また、各個人で上がる時間が異なるので、先輩が残っているから残るというような「付き合い残業」も発生しにくくなり、働きやすい環境が整います。

【悩み②】保育の質や専門性向上のポイント

2018年の保育園保育指針改定で「幼児教育施設」と位置づけられた保育園は、幼児教育の専門機関として保育士の研修とその時間の確保が必要になりました。多忙な保育業務の中でどのように研修時間を生みだせばいいのでしょうか。

ICT化による業務の効率化

保育ICTシステムは、保育士の業務時間を大幅に削減します。連絡帳や報告書、日案や週案、月案、計画書などの多数の書類作成を効率化し、作業時間を減らして研修時間を作り出せます。

また、前述のとおり保育士の時間の捻出には、パート・アルバイトの採用や変動時間制が有効ですが、勤務シフトや給与体系の複雑化に頭を悩ませる経営者の方も多いのではないでしょうか。

ICTシステムを導入すれば、シフト作成や給与計算も自動化し、園全体の勤怠管理も容易になります。外部研修に参加するメンバーのシフトもスピーディーに調整できるので、誰がどのような研修に何回参加したのかも把握しやすくなります。

外部講師を招く

英語や体操など、専門知識を持つ外部講師を招くカリキュラムを組み込んで、その時間帯を研修時間に活用するのも手です。

外部講師による専門的な授業やカリキュラムは子どもたちの刺激となることはもちろん、在園児の保護者や入園を検討している人にも保育園の特色としてアピールしやすく、経営的なメリットも十分にあります。

人材派遣を利用する

研修中に代わりとなる人材が確保できない場合は、職員の研修期間に合わせて、保育士の人材派遣会社に依頼するのもひとつの方法です。

研修のために慌てて募集しても、良い人材が見つかるとは限らず、すぐに辞められてしまうと、採用コストも無駄になってしまいます。しかし、派遣なら即戦力になる保育士がすぐに手に入ります。

保育士を自社で雇用し、研修をおこなっている派遣会社なら専門的な知識があるスタッフが派遣されるため、保育の質も安心です。

【悩み③】保育園の経営コストを削減する方法

保育園経営において人件費は全体運営費のおよそ8割を占めており、保育士の給与向上の影響ははかりしれません。人件費に関わるコスト削減方法について詳しく解説していきます。

ICTによる見える化で人件費の無駄を抑える

保育ICTシステムを導入すると、多様な勤務体制の導入や各自の勤務状況を最適化することで、人件費をむだなく利用できます。

また、時間がかかっていた日報やおたより、保育目標などの作成をテンプレートやデータ共有で効率化できるため、保育士は勤務時間中にスピーディーに処理できるようになり、残業時間と残業代の削減にもつながります。

保育士派遣を利用して採用コストを抑える

保育士の採用コストは40~50万円と言われていますが、早期に離職することも少なくありません。保育士派遣は、この採用コストなしで確実に雇用できるのが大きなメリットです。

紹介予定派遣という形も選べるため、職場の雰囲気や働き方を知ってもらったうえで、本採用をすることも可能になります。

初期費用や運用費はかかりますが、繰り返しの離職が起こるリスクなどを考えると、一時的な保育士派遣や紹介予定派遣制度などを上手に活用することで採用コストは大きく下げられるでしょう。

助成金や補助金を最大限に利用する

保育園の運営には国や地方自治体から、助成金や補助金が支給されています。保育園の事業形態や規模など条件によって支給の有無や金額は異なりますが、必ずチェックしましょう。

認可保育園の場合

認可保育園の運営補助金は、園児の人数に応じて支給され、児童の年齢が低いほど支給額は高くなります。一人当たりの金額は、国が算定する「公定価格」から保育料を差し引く形で計算されます。

また開設や整備事業を行う際は、「保育所等整備交付金」と「保育対策総合支援事業費補助金」から整備費が支給され、2分の1~3分の2以上の費用を賄えます。

その他の保育園の場合

国や地方自治体の補助が基本的にないといわれる認可外保育園でも様々な補助体制が整えられています。

例えば、「企業主導型保育事業」は2016年度まで実施されていた「事業所内保育施設設置・運営等支援助成金」を拡充した国の制度ですが、事業所内に保育施設を設置する場合の整備費や運営費の補助を行っています。

また、病院や診療所に保育施設を設置する場合は、「院内保育事業運営費補助事業」が人件費や運営費の一部を補助してくれます。

東京都や横浜市など、保育園ニーズが高い地域では独自の助成を行っているところもありますので、確認してみましょう。

まとめ

保育園の経営は人材と教育、そしてコストという3つの大きな課題が存在します。

保育士の離職の大きな原因は業務量の多さがあげられています。人材確保も教育時間の捻出においても業務改善が欠かせません。それには、パート・アルバイトや派遣保育士の活用、変動時間制の導入で正規保育士の負担を減らす。保育ICT化で事務にかける時間を短縮するなどの対策が有効です。

ICT化すれば、複雑な勤務体制でもシフト作成が容易になり、無駄のない勤務体制で残業が減り運営コストの大部分を占める人件費も削減できます。

また、保育園ニーズの高まりから、国や地方自治体は保育施設に対する助成金や補助金の精度を充実させています。それもうまく活用し、保育士が長く働ける環境づくりを整備していきましょう。