【最初から読む】登園・降園も、保育士の勤怠管理もすべて手作業。保育士が疲弊する現場を変えたかった…第1回目のインタビュー記事はこちらから。

待機児童問題の解消が与える影響とは

Q:保育を取り巻く状況について、どのようにお考えですか?

「待機児童問題」がもっとも深刻だった東京での入園倍率が1倍となり、待機児童問題は解消されつつあります。また、2020年の人口動態統計では、合計特殊出生率は前年比0.02ポイント減の1.34まで落ち込んでおり、今後もどんどん少子化の流れは止まることはないでしょう。

2020年の婚姻届の数は、その前の年に比べて7万件以上も減少しています。
保育を取り巻く状況は、新型コロナウイルスの影響で加速度的に変化しているとも言えるでしょう。

Q:待機児童問題が解消されたことでどのようなことが考えられますか?

従来であれば、保育園をつくれば利用者がすぐに集まってきました。たくさん保育園を作って、多くの保育士を育てることができれば売り上げが確保できるような状況だったのです。言い方を選ばずにいうと、日本の保育園は”殿様経営”の状態であったと思っています。

どんなに質の悪いサービスを提供しても、よっぽどのことがない限り、保護者が保育園を退園・転園させることはありませんでした。しかし、これからは保育園も選ばれる時代になります。待機児童が解消されたことで、保育業界での競争が生まれ、経営危機に陥る保育園も増えてくるのではないかと考えています。

戦後初めて、保育園が選ばれる時代に突入するのです。今まで保育園の定員が余るなんていうことはなかったですからね。

選べる立場になれば親御さん達は、なるべく良い保育サービスを提供してくれる保育園に自分の子どもを預けたいと考えるようになります。実際に、地方ではすでに経営危機に陥る保育園も出てきており、他の保育園との差別化ができない保育園は潰れてしまっています。

一般的なビジネスと同じように、緻密なマーケティング戦略がなければ、保育園も潰れてしまう時代になると言えるでしょう。いかに、選ばれる保育園になるのかということが重要なポイントになります。

選ばれる保育園になるためには、良い保育計画が必要

Q:選ばれる保育園の条件とは何であると考えていますか?

私は、良い保育計画をもとに良い保育を提供している保育園こそが、選ばれる保育園だと考えています。しかし、保育園の保育計画書というものは外部に公開されておらず、ほとんどの場合において第三者が見ることができません。

小学校であれば、教科書や年間のカリキュラムを見れば、どのような教育がなされているのかを判断することができますよね。しかし、保育園では、そのような判断基準となるものがほとんどないのが現状です。

実際に、保育園は保育計画書を作らなければならないと決められていますが、中身をチェックされることはありませんし、作成者の主観のみで作られている保育計画書がほとんどです。現実問題として、保育士の業務は多岐に渡り、現場の保育士が保育計画を作るのにかけられる時間は多くはありません。

私は、このような日本の保育における現状を変えたいと考えています。「保育士が良い計画をもとに、良い保育をする」という状態をつくっていきたいですね。

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さだまつ じょう

学生時代に少子高齢化という人口問題を知り、2007年に株式会社global bridge設立。千葉県にて無認可保育所(のちに認可保育所へ転換)を開園。2014年、保育園運営管理システム「Child Care System」をリリースし、ICT事業を開始 2017年保育ロボット「VEVO」の開発に着手。

ライター:小町 ヒロキ

早稲田大学政治経済学部を卒業後、大手損害保険会社で5年間営業職として勤務。退社後、金融機関での勤務経験を生かし、Webライターとして独立。
現在は、複数のメディアにて取材ライターとして活動中。

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