保育園の園長時代「事務作業の多さ」に苦労

自らも保育園の園長だった経験のある貞松社長

Q:まず、株式会社CHaiLDの事業内容を教えてください

貞松:株式会社CHaiLDは、保育サービスに特化したICT事業やAI事業、ロボット事業などを広く展開しています。

800園以上の保育施設に関わってきたなかで蓄積されたデータと、これまでに培ってきた研究体制を生かして、保育園のDX事業をより充実させていきたいと考えています。

特に注力しているのは、保育ICTシステムである『Child Care System(チャイルドケアシステム,CCS)』です。CCSを活用することで、保育士不足に悩む保育園の事務業務を効率化し、保育士が園児と向き合う時間を増やせる環境づくりを目指しています。

Q:CCS(チャイルドケアシステム)を作ったきっかけは何ですか?

貞松:私は以前、保育園のオーナー園長をしていた経験があります。いまから10年ちょっと前の話です。保護者への連絡や子どもたちの体調管理など、日々の業務を行うなかで、保育現場の事務作業の多さに大変苦労しました。

例えば、園児が朝何時に来て、何時に帰ったかという登降園時間の記録、保育計画、活動記録など保育士はたくさんの書類を作らなければならないのですが、これらがすべて手書きでした。これに加えて、保育士たちの出勤・退勤時間、連絡事項、日報などももちろん手作業で記録します。当然勤務時間内に終わらず、休日出勤は珍しくありませんでした。

こうして保育現場に携わっていくうちに、保育士の業務負荷を改善させることで、保育業界を取り巻く環境をより良いものにできればいいと考えるようになりました。
保育業界はデジタル化が明らかに遅れていました。そこで「保育業務をもっと効率化ができないか」と考えてつくったのがCCSです。

当時の保育園はタイムカードすらなし!残業も多く保育士が疲弊

Q:当時の保育現場では、どのような課題があったのでしょうか?

貞松:当時は、業務のほとんどを手書きで行っており、保育士の出勤簿にはタイムカードすら使っていませんでした。保育士の仕事は多岐に渡り、常に忙しい毎日を過ごしています。

また、時間外労働などが多く発生して、心身ともに疲弊してしまう保育士が多くいたことも事実です。他の業界と比較しても、保育業界はデジタル化がかなり遅れている状況でした。

保育園のデジタル化で、1園あたり年2600時間の効率化

Q: そのような保育現場にCCSを導入することで、どのような効果がありましたか?

貞松:CCSを導入して保育業務をデジタル化することで、こうした手書きの記録を大幅に削減して、様々な業務を自動化することで、およそ2600時間の業務効率化を達成しました。
しかし、業務を効率化しただけでは保育の質は良くならないと考えています。業務を効率化した上で、さらに保育のレベルを向上させていく必要があるのです。

Q:株式会社CHaiLDが目指しているものは何ですか?

貞松:我々が目指すゴールは「全ての幼稚園、保育園、認定こども園で個別最適な保育が提供される」ということです。子ども一人ひとりにはそれぞれの個性があり、才能があります。データなどではわからない部分があるのも事実ですが、データを比較することで先回りして予測できることもあるのです。

膨大なデータを駆使して、一人ひとりの子どもに適した保育を提供していきたいと考えています。

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さだまつ じょう

学生時代に少子高齢化という人口問題を知り、2007年に株式会社global bridge設立。千葉県にて無認可保育所(のちに認可保育所へ転換)を開園。2014年、保育園運営管理システム「Child Care System」をリリースし、ICT事業を開始 2017年保育ロボット「VEVO」の開発に着手。

ライター:小町 ヒロキ

早稲田大学政治経済学部を卒業後、大手損害保険会社で5年間営業職として勤務。退社後、金融機関での勤務経験を生かし、Webライターとして独立。
現在は、複数のメディアにて取材ライターとして活動中。

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