子どもがリラックスして楽しい園生活を送るためにも、慣らし保育はとても重要な期間ではないでしょうか。

 

初めて保育園に預けられる子どもにとって、安心できる保護者の元を離れるのは未知の世界といえます。子どもと保護者に信頼できる環境であることを感じてもらうのが重要でしょう。

 

今回は慣らし保育の目的や行うべきタイミング、よくある子どもが慣れてくれない場合の対処法などについてまとめました。この記事を読むと、慣らし保育の理解を深めることができますので参考にして下さい。

慣らし保育とは何か?

慣らし保育とは、一定の期間を決めて子どもを短時間から預かり、少しずつ環境の変化に慣れてもらうために行うものです。

 

自宅が生活の中心だった乳幼児にとって、知らない大人や子ども達が大勢いる環境に入るのは高いハードルといえます。大人の人見知り以上にストレスや不安が大きいため、子どものペースに合わせて慣らしていくのが大切です。

 

慣らし保育は保育施設ごとの慣習により、必ず実施されるものでありません。期間や対応も異なるため、所属する園がどのような対応を取っているか把握しておきましょう。

慣らし保育はなぜ必要?目的は?

慣らし保育は子どもの心理的不安を取り除くのと同時に、子どもを取り巻く人間関係の基盤を固め、信頼感を深めるためのものです。以下から詳しく解説していきます。

保護者が子どもと離れることに慣れる

保護者が初めて子どもと離れ、他人に我が子を預ける際の不安は大きいものです。保育施設の雰囲気や働く保育士の人柄、一緒に過ごす子どもたちの様子を知って安心してもらうのも、慣らし保育の目的となります。

 

また、保護者は育休中から生活リズムが大きく変化します。仕事が始まっても無理なく子どもの送迎ができるか、復帰前に慣らし保育で把握してもらうのも重要です。

子どもに保育園を安心できる場所だと認識させる

慣らし保育は子どもに保育園が安心できる場所だと認識させ、リラックスしてもらう大切な期間です。短時間から段階的に保育士や園内の子どもたちと接していくことで、雰囲気に慣れていくことができます。

 

最初は不安で泣いてしまう子どもでも、玩具や遊具で遊び、楽しい場所だと感じてもらううちに安心して過ごせるように変化していきます。

子どもの生活リズムを作る

保育施設に通うようになると、子どもはそれまでの過ごし方から大きく変化します。決まった時間の起床や朝食、身支度などに慣れてもらい、無理なく登園できるよう、生活リズムと体調を整えるのが重要です。

 

復帰後は時間の余裕がなくなってしまうため、子どもだけでなく、保護者にとっても復帰前に生活サイクルを整える良い機会となります。

保育士が子どもや保護者と信頼関係を深める

保育において重要なのは、子どもと保護者に信頼してもらうことです。慣らし保育は保育士にとっても、子どもや保護者とのコミュニケーションを通じて信頼関係を深めるための大事な時間となります。

 

子どもと一緒に過ごして安心感を持ってもらい、保護者と情報をやり取りしながらお互いの理解を深めるのが大切です。園内での様子だけでなく普段の子どもの様子や体調を把握することで、子どもと保護者に寄り添う保育ができます。

慣らし保育の期間とスケジュール

スケジュール

慣らし保育は保育施設によってスケジュールに違いはありますが、基本的に短時間から始めるケースがほとんどです。子どもが環境の変化に慣れているかを見極めながら、少しずつ段階を踏んで終日保育のスケジュールに合わせていきます。

 

新しい生活に慣れず泣く頻度が多かったり、保育士になかなか慣れてくれなかったりしてスケジュールが変更されるケースも少なくありません。また、園内生活が始まってすぐは子どもが体調を崩しやすいため、お休みの期間も出てくるでしょう。

 

保育士は子どもがミルクを飲んでいるか、ご飯を食べているか、周囲の環境に慣れているかなどをチェックしながら、保護者と話し合ってスケジュールを進めてください。期間は1~2週間で行われることが多く、慣れるのが早い場合は短くなるケースもあります。

 

慣らし保育のスケジュール例は、以下の通りです。

1~3日目午前中1~2時間、昼食前にお迎え
4~7日目登園から昼食まですませてお迎え
8~10日目登園から昼食、お昼寝、おやつまですませてお迎え
11日目以降終日保育開始

慣らし保育のタイミングはいつがベスト?

 

通常、仕事復帰前に行うケースが多い慣らし保育ですが、開始するタイミングには適した時期があります。

 

スケジュールに無理がないよう、ポイントを押さえて日程を提案しましょう。

長期休暇・土日は実施していない可能性がある

お盆期間や年末年始、ゴールデンウイークなどの長期休暇や祝祭日、土日は慣らし保育を実施しない保育施設もあります。

 

保護者にスケジュールを伝える際には所属する保育施設のルールを事前にチェックし、日程に誤りがないように伝えてください。

育児休暇中に預けるのが安心

慣らし保育は保護者の仕事復帰前、育児休暇中に余裕を持って行ってもらうのがおすすめです。

 

慣らし保育は短時間から始めるため、最初は1~2時間や午前中のうちにお迎えに来てもらうことになります。また、子どもが慣れなかったり体調を崩したりした場合は、スケジュールが遅れてしまうことも考えておかなければなりません。

 

保護者から慣らし保育の日程について質問があったら、仕事復帰と慣らし保育を同時に始めてしまうと、時間的に両立が難しいことを事前に伝えておきます。無理なく利用できるよう、保護者と相談しながら余裕を持ってスケジュールを組んでください。

仕事をしている保護者の場合は?

すでに仕事をしている保護者の場合は、祖父母やきょうだいなど家族の協力が必要となります。代わりにお迎えに来てもらえる家族が同居していたり近隣に住んでいたりする場合は、協力してもらいながら無理なく仕事復帰しているケースも珍しくありません。

 

ただし、慣らし保育中は子どもが体調を崩しやすいため、急なお迎えが必要になる場合もあります。保護者には無理なくお迎えの連絡に対応してもらえるよう、事前に伝えておきましょう。

慣らし保育がうまくいかないときによくある不安と対処法

慣らし保育中は子どもだけでなく、子どもと離れる保護者も情緒が不安定になりやすい時期です。保育士は子どもと保護者双方の不安を受け止め、適切に対処する必要があります。

 

以下から紹介するのは、慣らし保育中に多いトラブルと対処法です。

登園時に泣いてしまう子どもへの対処法

登園時に子どもが泣くのは、保護者が二度と戻ってこないのではないかという大きな不安によるものです。「分離不安」とよばれる心理で、一度離れても保護者が戻ってくることを子どもが理解できれば、徐々に泣かなくなっていきます。

 

対処法は保護者から子どもに安心感を与えてもらうよう働きかけ、登園時は笑顔で明るく子どもと離れることです。離れる際に時間をかけて寂しさを表情や声に出してしまうと、子どもはますます泣いてしまいます。

 

お迎えの際には保育士から保護者に子どもの園での様子を伝え、安心感を与えてください。登園時に泣いていても、その後は問題なく過ごせているとわかれば、保護者も笑顔で送り出せます。

 

登園前に園の催しや遊びについて子どもと会話してもらい、保護者から楽しいところだと伝えてもらうのも効果的です。

お昼寝ができない子どもへの対処法

子どもがお昼寝できない原因として挙げられるのは、緊張や不安などの心理的なものと、睡眠環境によるものがあります。

 

リラックスしてお昼寝してもらうために、声かけやトントンなどのスキンシップで入眠を助けてあげてください。自宅で入眠時に使っているものがあれば、持ってきてもらう方法もあります。

 

室内の温度や湿度が眠りに適していないと寝苦しいため、お昼寝の間は子どもが眠りやすいよう適温を保つのも重要です。エアコンの風が直接当たらないように配慮します。

 

自宅での生活リズムによってお昼寝が難しい場合は、保護者と自宅での入眠時間や起床時間について情報を共有し、無理なく進めていきましょう。とくに0歳児のうちは午前中もお昼寝が必要な場合があるため、子どものペースに合わせて進めてください。

保育園に慣れたかどうかの見極め方

子どもが保育園に慣れてくると、さまざまな変化が現れます。

 

保育士は子どもをよく観察し、以下から解説する兆しが見えたら保護者に報告後、慣らし保育のステップアップを提案してください。

泣いても切り替えられるようになる

環境に慣れてきた子どもは登園時に嫌がり激しく泣いていても、保護者の姿が見えなくなるとピタリと泣き止むようになります。

 

気持ちの切り替えができるようになるまでは、保育士は子どもの気持ちに寄り添い、優しく声かけしたり抱っこしたりして落ち着かせます。また、子どもが泣き止むのが早くなってきたら保護者にも状況を伝えて、安心してもらうのが重要です。

 

どうしても保護者と離れたくないため登園時の大泣きが長く続く子どももいますが、すぐに泣き止んで遊べるようになったら園での生活に慣れてきた兆しといえます。

おやつ・給食が食べられる

最初のうちは緊張や人見知りから、給食やミルクを嫌がる子どもも一定数いるものです。このような場合は慣れるにつれて徐々に飲食の量も増えていくため、子どもが慣れたかどうかの目安になります。

 

とくに母乳育児をメインにしていた場合、子どもが哺乳瓶を拒否するケースもあります。飲まない理由は子どもによって異なるため、保護者と情報を共有し子どものペースで進めていくのが大切です。

 

好きなものだけでも水分や食事が摂れるようになったら子どもを褒めてやり、徐々に完食できるようにサポートしていきます。保護者にも状況を報告して、たくさん食べられた日は褒めてあげるよう働きかけましょう。

お昼寝ができる

睡眠はリラックスできる環境でないと、大人でも難しいものです。お昼寝ができるようになれば、子どもが園生活に慣れた状態ともいえます。

 

お昼寝の時間になると穏やかに入眠でき、寝つきがよくなっていれば、子どもは保育園を安心できる場所だと認識してくれています。なかなか眠れない場合は、自宅での入眠方法を保護者に確認し、子どもが眠りやすい入眠方法を取り入れましょう。

 

体力がついてくる3歳児以降になると、お昼寝がいらない子どももいます。保護者と話し合いながら柔軟に対応し、午睡の時間を短くする、別の活動をするなどの対応を検討してください。

保育士に甘えられる

子どもが保育士に甘えられるようになると、保護者以外との愛着関係が築けている兆しです。特定の保育士がお気に入りになるのも、子どもの登園へのモチベーションアップにつながります。

 

園での生活にも慣れてきた状態のため、子どもから甘えてきたら受け止めて信頼関係を築いていきます。機嫌が良いときには他の保育士にも積極的に関わってもらい、子どもの人間関係を広げていきましょう。

 

子どもにとって安心できる相手が増えれば、園での生活はますます過ごしやすく、楽しいものになっていきます。慣らし保育中は子どもからのスキンシップや抱っこに、できるだけ応じてあげるのが大切です。

保育士が保護者とコミュニケーションをとる際のポイント

保育士にとって慣らし保育中の保護者とのコミュニケーションは、今後の園生活を円滑に進めるために重要なものです。

 

以下のポイントを押さえて、保護者が安心して子どもを預けられるよう信頼関係を深めましょう。

子どもの様子を保護者に伝える

お迎えの際には子どもの様子をできるだけ詳細に伝え、保護者に安心してもらうのが大切です。連絡帳がある場合も、子どもが何を頑張ったのか、笑顔が見られたかなど、園内での成長の様子を細かく記載しておきます。

 

保護者からも子どもの好きなものや癖など、園生活を円滑にできるような情報を聞いておきましょう。保育士がしっかり見てくれているという信頼にもつながります。

元気よく挨拶をする

挨拶はコミュニケーションの基本です。保護者に好印象を与え信頼感を持ってもらうために、明るい笑顔で元気よく挨拶してください。

 

初対面で暗い印象を持たれてしまうと、保護者に不安感を与えてしまいます。登園時やお迎えの際だけでなく、園内見学などで来園の際にも挨拶は重要です。

スケジュールを変更する際は理由までしっかり伝える

スケジュールを変更する際には、どういった理由かまでしっかり伝えてください。理由もなしにスケジュールの延長だけを伝えると、保護者に不信感を与えてしまいます。

 

延長の理由と一緒に、子どもが安心して過ごせるようペースに合わせて配慮していくことをポジティブに伝えて、期間の延長や時間の変更を提案しましょう。

丁寧な言葉遣いを心掛ける

保護者から信頼してもらうには、丁寧な言葉遣いを心掛けるのも大切です。若者言葉や園内で使われる専門用語を避け、わかりやすく丁寧な言葉でコミュニケーションを取りましょう。

 

保護者から友達口調で話しかけられるケースもありますが、同じように口調を崩すのはNGです。保育士という立場を意識しながら節度を持って対応してください。

保護者と保育士の連携が楽になる連絡帳アプリ

保護者と保育士を繋ぐ連絡帳は大切なものですが、手書きの手間がかかるうえ、双方の入れ忘れなどトラブルもつきものです。

 

Child Care Systemの連絡帳アプリ「CCS NOTE」は、従来の連絡帳の役割に加えて、保育士の事務作業を軽減するための豊富な機能を搭載しています。保育から離れる時間をできるだけ省き、子ども達とじっくり向き合いたいという保育士の声から生まれたアプリです。

 

保育システムで検温や喫食状況などを記録すれば、自動で転記されるため再度記録する必要もありません。また、送迎変更や保護者からの欠席連絡もアプリ上で完結するため、保護者側の電話連絡の手間も省け、電話対応に追われる状況も改善できるでしょう。

まとめ

慣らし保育は子どもが環境の変化に慣れ、安心して園で生活できるようになるための期間です。1~2週間で実施されますが、子どもの状況によって早く終わることもあれば、延長されることもあります。