保育園が保護者からクレームを受けた時の対処法

世間では保育士の仕事に対して子どもと遊んでいる「だけ」というイメージが持たれている方が一定数いるのではないでしょうか。園庭で子どもたちと遊んでいるところや、お散歩しているところのみを切り取られて、仕事というよりも楽しく過ごしているように見えてしまうのかもしれません。

 

しかし保育士は日々の子どもの成長を見守り、監査に対する帳票類を準備したり、保護者が安心して子どもをあずけられるように様々な気配りと配慮を行いながら仕事に取り組んでいます。

保育士の方々からすると、「保育士がこれだけ不足になるほど、大変な仕事」というイメージが強い方が多いかもしれません。

 

保育士に対して大変な仕事というイメージがついてしまった原因として、保護者からのクレーム対応などを思い浮かべる方もいるのではないでしょうか。保育士にとって保護者へのクレーム対応は、避けられない仕事の一つです。

 

保護者によって育児への考え方は人それぞれなため、そのため理不尽な要求も多く、クレーム対応は非常に難しいとも言えます。

 

だからこそ、初期対応が重要です。最初の対応でまずは保護者に寄り添う姿勢を見せ、クレームがさらに大きくなるのを防ぎましょう。

①チームで解決する

クレームを受けた際、自分一人で解決できそうな内容のクレームの場合は自分一人で解決したくなることもあるかもしれません。しかし、クレームは一人で解決してはいけません。

 

どんなに小さなクレームでも周りの人、できれば上司や先輩など目上の人に報告し、対処法を相談するようにしましょう。

 

自分一人で解決しようとしたことで逆に相手側を怒らせてしまい、大きなクレームになる場合もあります。また保護者側も、園全体で自分のクレームを受け止めてくれたと感じることで、いらだちを沈めてくれる可能性もあります。

 

どんな些細なことでもクレームや保護者から意見をもらった際は、上司や同僚などに報告をし、チームで解決することが大切です。

②反論しない

クレームの中には理不尽な内容のものもあります。そしてそのようなクレームを言われると反論したくなることもあるでしょう。しかし、反論は良くありません。

 

クレームを言う段階で保護者側の心はいらだちや不満でいっぱいです。そのため反論してしまうと、さらにヒートアップさせてしまい、大きなクレームになる可能性もあります。

 

クレームを言われた際、まずは相手の話をよく聞くようにしましょう。そしてできる限り共感する姿勢を示すように心掛けてみて下さい。

 

また事実確認などが必要な際は、後日返事する旨を伝えるようにします。日にちを空けることで、お互い冷静になった状態で話し合いができ、クレーム解決につながることもあります。

③「クッション言葉」を活用する

クレームの中には、事実とは違うことで怒っているような場合もあります。また保育園側から保護者にお願いをしなければならない時もあるでしょう。

 

そのような時は、「クッション言葉」を活用しましょう。たとえば、「お手数をおかけしますが」や「よろしければ」などの言葉です。この「クッション言葉」を使うだけで丁寧さが増し、保護者側も理解してくれる場合があります。

 

また、どうしても反論しなければならない時には、「大変申しにくいのですが」という「クッション言葉」を使うと攻撃的な表現でも違った印象になるかもしれません。

 

保育士は、子どもと接するのと同じくらい保護者と接することが多い職業ですので、この「クッション言葉」を活用して話せるように準備しておくと良いでしょう。

④事実確認を行ったうえで謝罪する

クレームの中には事実確認をしなければ分からないようなものもあります。その際は事実確認する旨を保護者側に伝えましょう。

 

そして、事実確認をしたうえで保育園側に非があった際は、丁寧に謝罪するようにします。まずはしっかり謝罪をして、そのうえで今後の対応について伝える順番を心掛けましょう。

 

また一方で、クレームを言われた際に自分の行動に非があると気付く場合もあるかもしれません。その際は、素直にその場で謝るようにします。

 

当事者にそのままクレームをぶつけてくるということは、保護者は当事者からの謝罪を聞きたい可能性があります。うやむやにしたり素直に謝らなかったりすると、クレームがさらに大きくなったり二次クレームに発展してしまう可能性があるため注意が必要です。

クレーム対応のコツ

その他にもクレーム対応のコツはまだまだあります。たとえばクレーム対応する際は、ゆっくりと話すことです。

 

クレームを言う際、保護者側はいらだちがいっぱいになり、感情的に話を進めることもあるかもしれません。そのような状況になると、一般的に人間は早口になったり声が大きくなったりする傾向があります。

 

そのためクレームを言われた際は、相手につられないよう冷静にゆっくり話すことが大切です。

 

また解決策や対処法を求められた時は、園全体で話し合う旨を伝え時間をもらいましょう。簡単な答えでその場をおさめようとすると余計に保護者を怒らせてしまう場合があります。

 

一方で、園全体で受け止めてくれたと保護者側が感じれば、これ以上大きなクレームになることはないでしょう。

保護者がクレームを入れる心理

保育園に子どもを預けている保護者は一般的に仕事をしており、子育て以外にも忙しい方が多いのではないでしょうか。そのような状況の中でクレームを入れるのは、よほど保育園側の対応が気になるという場合が多いです。

 

そのため、クレームを入れる際の保護者の心理としては、まずは聞いてほしい、受け止めてほしいという思いがあると言われています。

 

保育士側としては、すべての保護者の期待に応えることは難しい場面も出てくるかもしれません。

保護者の要望に応えることが難しい場合は、保護者側が大切な子どもを預けている場所であるということは十分に理解したうえで、誠実な対応を心掛けるように配慮をしてみてください。

保護者からのクレームが増えた要因

保護者からのクレームが増えた理由の1つとしては、ネット社会となった現在の生活にあるとも言われています。

 

昨今ではインターネットの利用が広がりSNSが普及したことから、さまざまな情報を個人が簡単に拡散できるようになりました。

個人が発信する情報が数百万人の人の目に触れるわけですから、そこから解決策を見出したり色々な意見を聞こうとする文化は現代の風潮から仕方のないことなのかもしれません。

 

他にも晩婚化や少子化により、以前に比べて子どもを大切に育てるという風潮から、保育園の対応に対して過敏になってしまったり、本来の保育園の業務以上のサービスを期待してしまう保護者が多くなってしまったことがクレームが増えてしまったのではないかと言われています。

実際に起きたクレーム事例

保育園のクレームと一言で言ってもその内容はさまざまです。保育士の対応に不満を感じた、他の子どもと自分の子どもを比べられたことへの不満など、いろいろとあります。

 

次は実際に起きたクレーム事例をご紹介します。起こりそうなクレームは事前に予想しておき、クレームが発生しないよう日々の行動に注意すると良いでしょう。

保育士の指導に対する事例

クレームの中でもよくある内容が保護者の指導に関するクレームです。たとえば、「子ども同士のトラブルに気付いているにもかかわらず放置した」、「子どもへの話し方や態度が冷たい」というクレームがあります。

 

保護者にとっては自分の子どもが何よりも大切な存在です。そのため、子どもがないがしろにされたり、保育士から大切にされていないと感じたりしてしまうと不満となり、積み重なるとクレームになる恐れがあります。

 

また保育士側が冗談のつもりで言った発言でも、それを冗談と思わずその言葉通りに受け止めてしまう場合があります。

 

保育士と言えども一人の人間です。そのため子どもへの接し方も人それぞれです。自分の接し方に非があるのかどうか分からないという場合は、同僚や先輩に相談してみるのも良いでしょう。

怪我関連の事例

子ども達の怪我関連のクレームも保育園には多くよせられます。たとえば、「子ども同士のトラブルで怪我をしてきたのに報告がない」または、「子どもの怪我にすぐに対応してくれなかった」などがあります。

 

子どもが怪我をしてしまうこともあるかもしれません。そのため怪我の場合は後の対応がとても大切になってきます。

 

怪我をしたらすぐに対応しましょう。またどんなに小さな怪我だったとしても連絡帳などを使い保護者に報告をするのも良いです。

 

怪我に対して今後保育園としてどのように対応していくのか回答を求められた際は、先輩や園長などに相談してから返事をするようにしましょう。今後の解決策に対して具体的な案などを示せると、保護者との信頼関係が向上する可能性もあります。

行事関連の事例

保育園にはお遊戯会や運動会などさまざまな行事が用意されており、そのような行事に関してもクレームを言ってくる保護者がいます。その内容としては「行事の日程を変えてほしい」または「劇の内容や配役を変えてほしい」などの理不尽なものもあります。

 

理不尽な内容を受け入れていると保護者側もこの保育士さんは聞いてくれると感じて、内容がエスカレートしていく場合があります。

 

そのためこのような理不尽な内容の場合は、一人で抱え込まずチームで解決していくようにします。保護者側には自分では回答できないため、後日お返事しますと伝えると良いでしょう。

 

また、そのクレームには答えることができないと伝える際には、まずは保護者側の話をよく聞くようにします。そのうえで、どうしても難しいということを柔らかい表現やクッション言葉を使い、相手の気持ちを汲み取りながら伝えていくと良いかもしれません。

クレームを未然に防ぐために意識すること

クレームは人と人が関わりあっている以上、どうしても生じてしまう事柄です。しかし保護者や子どもと保育士の間に良好な信頼関係が築けていると、たとえクレームや不満が生じたとしてもそこまで大きな問題にならずに済むと言われています。

 

そのため、クレームを未然に防ぐためにも保育士は保護者や子ども達と信頼関係をなるべく早い段階で築き上げることが大切になってきます。子どもについて細かいことでも報告をするなど、まずはできるところから始めてみると良いでしょう。

まとめ

クレームと聞くと悪い印象を与えてしまいますが、より良い保育を行って行くためには保護者側の気持ちを日頃から理解することで、気付けていなかった問題点にも気づくことができます。

 

クレームを言われた時こそ、丁寧に誠意をもって対応すると、業務改善以外にも保護者との関係が以前より良好に築ける可能性が上がります。

 

理不尽な要望が多いのも事実ですが、一人だけで抱え込まず、保育園の方々で協力して意見を出し合いながらチームで解決するように心掛けると良いでしょう。