チームワークが求められる保育現場。新しいメンバーでやっていくには…

これまで働いてくれていた先生たちが退職する一方で、新しいメンバーを迎えて園として新たなスタートをするとき、皆さんはどのようにチームを作り上げていきますか?
保育園運営にはチームワークが大切ですが、良いチームワークを発揮するために、まずチーム作りで必要となることとは一体何でしょうか?チームビルディングの基本について、まとめてみたいと思います。

チームビルディングとは?

保育施設におけるチームビルディングとは、各メンバーの経験やスキル能力を最大限に発揮し、保育理念に基づいた目標を達成していく組織をつくることです。
チームビルディングにおいては、保育理念や目標が園の職員全員に浸透していることがとても重要です。
例えば、目の前の子どもにどんな保育をしてあげたいか想像してください。それを行うために具体的に何をするかを考えたとき、同じ園の隣に座っている人と答えは同じでしょうか?同じこともあれば、違うこともあると思います。人それぞれ考え方が違うのは当然ですが、職員1人ひとりがそれぞれ自分の思うままに行動すると、子どもたちも混乱してしまうだけでなく、保護者も何を信じればいいのかわからなくなってしまいます。
園長先生は、職員全員が共通認識を持っているかに目を配り、それぞれの個性を把握し、実践されているかどうかを確認しながら目標を達成していく必要があります。

保育現場のチームビルディングに必要なこと

1.目標設定~共通の認識を持つためのポイント

メンバーが同じ方向を向いて行動をするために、まずは目標設定を行うことが重要です。職員のまとまりある行動を促すため、達成可能な具体的な目標を設定し、課題を解決しながらゴールに導くことになります。
例えば、「1人ひとりに寄り添った保育をする」という目標を立てただけでは、その目標が達成されたかどうかをどのように判断したら良いか、わかりません。
寄り添った保育とはどのような状態なのかの定義を明確にし、それを達成するために必要なことが何かを把握する必要があります。場合によっては、状況を再認識するために職員にアンケートを取ることも有効です。

2. 目標達成に向けた計画の周知、全員が計画をしっかりと理解するためには?

新しいメンバーを迎え、目標達成に向けた計画を周知したものの、なぜか計画通りに進まないという場面があります。
計画の周知方法としては
① 文書を回覧して周知する
② 昼礼のなかでまとめて説明する
③ 口頭で具体例を挙げながら説明する
などの方法が考えられます。この中で、「③ 口頭で具体例を挙げながら説明する」という方法が丁寧で良いと思いませんか?しかし、具体例を挙げて説明しても伝わらないこともあります。なぜなら、具体的かどうかは、聞き手である職員の判断に委ねられるからです。
そこで、メンバー全員の理解度を高めるため、目標達成に向けた計画を周知にあたっては、経験の浅いメンバーに計画を説明してもらいながら、その中で、説明者の理解を妨げている問題点を確認するという方法が有効です。経験の浅いメンバーが問題点を把握できれば、他のメンバーも問題点を把握できたと言えます。
こうすることで理解が不十分な点や誤解している点を確認できます。

3. 役割分担(ルール化、構造化)

複数のメンバーで構成されるチームにおいて、1人ひとりのメンバーが能力を最大限に発揮するには、チームメンバーの中での役割分担やルール化を行うことが有効です。
(1)分担する業務・役割を洗い出し(2)業務・役割を割り振るルールを設定する(3)ルールに沿ってメンバーに業務・役割を分担する、という流れで行います。
メンバーに分担することで、割り振られた業務に対するスキルや能力が向上し、より効果的に個々の力を活かすきっかけが得られます。役割分担の必要性をメンバー全員がきちんと理解することが重要です。

チームの“実行力”を上げるためのポイント

1.報連相の指示

チームで目標達成を目指すにあたって、園長先生は、上司として「必要なときに”報連相”をしてください」と進捗を確認することが一般的ですが、経験の浅い先生には、その「必要なとき」がいつなのか、わからないことがあります。
園長先生が忙しそうにしていると、なかなか相談するタイミングをつかめなかったり、その場の雰囲気によっては、言い出せないこともあるでしょう。
チームメンバーとの信頼関係が築けていない時期には、園長先生は、自ら報連相を求めに行くことも意識したいものです。
また、「報告すべきこと」を事前に決めておくのも1つの方法です。どのようなタイミングで報告してもらいたいかを明確にすることで、他の先生も報連相のタイミングの判断がしやすくなります。

2.トラブルへの対処

仕事において、何かしらのトラブルに遭遇することはあります。トラブルが発覚した時に、園長先生が落ち着いてフォローすることで、上司として信頼されるようになり、良好な関係を築くことができます。
トラブルには2種類あります。1つ目は「計画していたことができない場合」、2つ目は「全くの不測の事態」の2種類です。
1つ目のトラブルは、職員からの報告によって発覚するケースが多いです。あらかじめ報連相のタイミングを決めておくことや、定期的な報告を指示することで早めに把握することができます。
2つ目のトラブルを収束させるには、情報の収集力がカギとなります。事実と原因を把握するための正確な情報を集めたうえで、特に複雑な問題については、多角的にその問題を分析する場を設けることが効果的です。
チームメンバーに対する糾弾にならないよう、問題を整理して多くの意見を求めれば、解決の糸口に近づきます。
また、そのような場を設定するときには、あらかじめ「問題点について意見を出してもらう」ということを伝えておくことも大切です。

まとめ

新しいチームをつくっていくときに、職員は、チームの中で迷惑をかけたくないという気持ちのあまり、発言するのを恐れたり、新しいことに挑戦することをやめて無難に済ませてしまうこともあるかもしれません。
そうしたことにならないよう、園長先生は、職員が安心して業務に取り組めるように、チームビルディングを通して、職員の心の安全地帯になることが大切になります。

まずは、目標設定をしてメンバーが共通の理解をすること、そして園長先生は、職員に仕事を任せながらも、自らは施設の責任ある立場として、職員が取り返しのつかない失敗をする前にリカバリーできるよう配慮していくことで、信頼関係を築き、チーム全体も目標の達成に大きく近づけるようになります。

参考文献:

一般社団法人 日本社会福祉マネジメント学会 佐藤剛 「ケースで考える社会福祉マネジメント」

株式会社AIAI HOLDINGS 施設長の教科書 ーあい・あい保育園の場合-