保育園でクレームが発生する原因

保育園でクレームが発生する主な原因は「職員間」や「施設から保護者へ」の「不正確な情報伝達」によるものが多いです。人は誰しもうっかりミスをしてしまうものですが、ミスをできる限り減らすために、職員間ではチェックリストや引継ぎノート、保護者向けには既読機能付きの連絡帳アプリで確認漏れを防ぐようにするなど、仕組みを設けて、全員でその仕組みを守って業務を行うことが大切です。
あるいは、日常の挨拶やマナー、言葉遣いなど、小さな不満が積み重なって苦情に発展してしまうケースもあります。マナーを疎かにしているとクレームに繋がるリスクがあるということも忘れてはいけません。

保育園で発生する主なクレーム

では、実際に保育園で発生するクレームについて実例を挙げていきます。

・汚れた下着の返却が続いているが汚れた経緯がわからない
・出勤前の忙しい時間に長々と説明をされて時間をとられた
・早番の先生に答えたことを遅番の先生にまた聞かれた
・駐車場内で走り回っている子どもがいて危ない

ほかにも様々なクレームが保育園には寄せられます。多くの人がクレーム応対を苦手とする理由はいくつかありますが、その一つに「利用者の要望や反応が様々で、臨機応変な対応が求められるから」ということが挙げられます。
理不尽なクレームはごく一部で、多くの保護者は「子どもにとって良い環境であってほしい」「園との関係を良好にしたい」と考えています。そのため、「クレームには良い保育園になるための改善のヒントが隠れている」と前向きにとらえ、次でご紹介するクレーム応対の4つの基本をぜひ参考にしてください。

保育園でのクレーム対応の4つの基本

クレーム応対は、初動で結果が大きく左右されます。この4つの基本手順をマスターすることで、ほとんどのケースにおいて落ち着いて応対できるようになります。

1、当事者である意識を強く持つ

保護者からクレームを受けたときは、自分のミスでなくとも、この施設を代表しているという当事者意識を強く持って応対しましょう。自分は関係ないという態度はNGです。まずは相手の話を遮ったり、訂正したりせずに、話を丁寧に聞くようにします。話の途中で園側の事情を話してしまうと、言い訳に聞こえてしまうこともあります。2次クレームに繋がってしまうと解決までの時間がさらに長引くので、まずは傾聴することが大切です。

2、保護者の心情を理解し、そのことを行動で示す

話をじっくりと聞くことができれば、どんなことが発端であったのか、なにが悲しかったのか、大変だったのか、嫌だったのかがわかってきます。どんなに些細なことや勘違いであっても、「ご不便をかけてしまった」「不快な思いをさせてしまった」など保護者の心情に寄り添い、共感の言葉と真摯にお詫びをします。

3、解決すべき問題・要望の確認を行う

保護者からの話を聞いた後は、クレーム内容に対する事実確認を行います。クレーム内容に関わった人に個別に確認することはもちろん、前後にどんなことがあったのか、どんな環境であったか、どんなことが原因だったのかなど問題をしっかりと把握します。また、保護者の要望について、整理し、保育園が受け入れられるものなのかどうかを確認します。

4、代替案・解決策を冷静に提示する

保育園側に非がある場合は素直に受け止めて謝罪をしなければなりません。謝罪後、保護者の要望に対し、今後の対応策を具体的に提案する必要がありますが、保護者の要望に対応が困難な場合は、対応できない理由を丁寧に説明することが重要です。
その際、感情的に接すると、興奮している保護者をかえって刺激してしまうことに繋がるので、冷静に応対することを心がけましょう。落ち着いて対応することで、話し合いが進めやすくなるケースもあります。

クレームの再発を防ぐ方法

さて、クレーム応対の基本についてまとめてきましたが、そのクレームは自分や施設の運営の改善するチャンスと捉え、園内で共有し二度と同じ状況が起こらないようにすることが重要です。以下に、再発を防ぐ方法を紹介します。

新人保育士の場合、速やかに報告する

特に新人保育士の場合は、クレームの大小を自分で判断せず、まずはクレームがあったことを速やかに園長先生に報告することが大切です。クレームを受けた事実を隠してしまったり、自分の判断で誤った対応をしてしまうと、事態が悪化する可能性があります。正しい判断をできる人の指示のもと、クレームの応対やその後の改善策を考える必要があります。ですから、どんなことであれ、園長先生に報告するよう心掛けましょう。

園内で事例を共有し、対応策を園全体で検討する

園全体に事例を共有し、職員全員で対応策を検討することで同様のトラブルを回避できるケースもあります。先ほどのクレームの実例のなかにもあった「駐車場内で走り回っている子どもがいて危ない」というケースでは、1人だけで解決できるものではありません。保育園が保護者全員に周知し、園児が駐車場内に走っていかないような環境を考えたり、お散歩のときにルールを教えるなど、園全体で対策を講じることで、全体で取り組んでいる共通意識が生まれ、クレーム再発を防ぎます。

保育業務支援システムを活用する

連絡帳アプリなど保育業務支援システムを利用することも有効です。紙のおたよりでは、読んでいるか確認できませんが、連絡帳アプリであれば、保護者が読んだかどうか「既読」を確認できる機能があるので、未読の保護者に改めて案内するなど伝え漏れを防ぐことができます。
また、アプリのメモ機能を活用して、早番の職員が遅番の職員に伝えるべきことを入力することで情報共有もしやすくなります。こういった環境を整えていくことも、クレーム再発防止に繋がります。

まとめ

クレーム応対では、一瞬で問題を収められるような魔法のテクニックは、残念ながらありません。
大切なのは、「利用者の心情を理解すること」です。「利用者にご不便をかけてしまった」「不快な思いをさせてしまった」など利用者の心情を察し、それを理解しているとわかる言葉をかけ、誠実にお詫びすること、同じクレームが起きないよう園内でしっかり共有し、前向きに園運営の糧にしていきたいものです。