1,連絡帳の役割

連絡帳は、園での子どもの様子と家での子どもの様子を書くものですが、その役割はいくつかあります。ここで連絡帳の役割をおさえて、連絡帳を効果的に活用していきましょう。

・情報共有で子ども理解を促進し、園生活をスムーズにする
保育者は園での様子、家庭からは家での様子を共有することで、子どもへの理解が深まります。家庭での様子がわかれば、いつもと少し違う子どもの行動の意味も読み取りやすくなり、適切な保育をしやすくなります。
・保護者とのコミュニケーションを向上させる
連絡帳は子ども理解だけでなく、保護者と保育者の相互理解を促す役割もあります。日々どんな思いで子どもに接しているかを伝えあうことで、お互いの理解が深まります。また、保育者は各家庭からの情報や保護者の思いを受け止めて、必要な情報を伝えることが重要です。保護者は連絡帳に保育の不安や悩みを書くこともあります。なるべくその日のうちにきちんと答えていくことで保護者との信頼関係を築いていくことができます。
・保護者の子育てをサポートする
保育園は家庭との緊密な連携をとり、必要な時には保護者を支援することが求められています。日々の子どもの生活や遊びをよく観察しながら、「今、子どもに必要な援助はなにか」を把握し、保護者に必要なアドバイスをすることで子育てをサポートすることができます。連絡帳は、こうした家庭との緊密な連携を結ぶ上でも大切な役割を担っています。

2,連絡帳を記入するポイント

連絡帳の書き方のポイントを押さえておけば、スムーズに連絡帳を書くことができます。ここでは、3つのポイントをご紹介します。

ポイント① 保護者のコメントに返信する

前述しましたが、連絡帳は保護者とのコミュニケーションツールです。保護者のコメントには必ず返信をしましょう。返信をすることで、保護者は「ちゃんと読んでくれている」と感じます。
家での楽しいエピソードには「○○ちゃんの楽しそうな姿が目に浮かびます」「すてきな一日になりましたね」「園でも○○したお話を聞かせてくれましたよ」と子どもが楽しく過ごせたことを一緒に喜べると保護者も嬉しくなります。また、育児不安や体調など心配なことが記入されていた場合は、「突然のたくさん泣いてしまったとのこと、○○ちゃんなりにいろいろ感じ取って表現しているのですね」「ぶつけてしまった足を『痛い?』と聞くと、『痛い』と答えるものの、遊んでいる間、気にしている様子はなかったです。」「夜少し微熱が出たとのこと、お母様も心配ですよね。園では熱も出ず、機嫌よく過ごしていましたよ」というように、園での体調はどうだったかを書くようにしましょう。

ポイント② 後から思い出して書くのではなく、保育中に書く内容を決める

連絡帳がなかなか書けないのは、「その子の様子を、後から思い出して書こうとするから」です。大きな成長や印象に残ったことがあれば、思い出せるかもしれませんが、後から子どもの様子を思い出しながら、書く内容を決めると、「ブロックで楽しそうに遊んでいた」「給食を全部たべていた」という大枠しか思い出せず、書けなくなってしまうのです。

このため、連絡帳に書く内容は保育中に決めたほうが書きやすいです。ブロックで楽しそうに遊んでいることを書くと決めたら、その前後に何があったか、どんなものを作っていたかなどをよく観察して、インプットします。すると、「お散歩のときもパトカーや消防車が通ると指さして教えてくれる○○くん。白と黒のブロックを使ってパトカーを作っていました。」など具体的に書くことができます。ほかにも、給食を全部食べたということを書くと決めたら、「にんじんは少し嫌がりましたが、隣に座った□□先生がおいしい~!と食べる様子をみて、一口でぱくり。苦手な人参も全部食べることができて感動しました」というふうに、その子の興味関心やどんな関わりがあったかの細かい姿までみることができます。このように、一人ひとりの連絡帳に書けるエピソードをみつけられるようになると、子どもの新たな発見が増え、保育も楽しくなります。

ポイント③ 嬉しい、面白い、成長したと感じる出来事は積極的に伝える

子どもが楽しく過ごしている姿、どんどん成長している姿は保護者にとって、とても嬉しいものです。ネガティブな内容よりも、嬉しかったこと、面白かったこと、成長していると感じたことなどは積極的に伝えましょう。ポジティブな内容を伝えることで、保育園での生活に安心します。また、場合によっては伝えなければいけないネガティブなことは、できるだけ口頭で伝え、コミュニケーションの齟齬がないようにしましょう。

3,年齢別のポイントと書き方例

子どもの年齢によって、保護者の子どもへの心配事や気がかりが少しずつ異なります。保育者は、保護者の気持ちに寄り添い、子どもの発達段階を理解するプロとして、子どもの気持ちを代弁したり、成長の兆しを捉えて伝えることで、保護者を支援しましょう。

0歳児のポイント

0歳児は、成長の著しい時期ですが、成長のスピードはその子によって異なります。子どもと離れて不安に思う保護者も多いので、「安心して預けられる場所であること」と「保育者がちゃんと子どもを見ている」ということが分かるように書きます。
その子自身の成長のスピードを見守り、保護者が安心できるような言葉掛けを心がけましょう。
0歳児の連絡帳は、哺乳量や排せつの回数、状態、睡眠時間などを記録することが多いです。過剰に心配させる書き方は良くないですが、機嫌のよさや顔色、保育者への反応をしっかりと観察し、健康状態の変化があるときは必ず事実を報告するようにします。心配なことがあれば直接口頭で声掛けるほうがよいでしょう。

0歳児の連絡帳の書き方例

・午睡
午睡明けの様子や入眠までにしたことなどに注目します。また午睡のリズムなどの変化などの気づきがあれば記入しましょう。
(書き方例)
「午睡中、少し鼻が詰まっているようで、何度か起きてしまいましたが、室内遊びでは元気に過ごしていました。2歳クラスのお兄さんが風船をくれたので、ムニムニした感触を楽しんでいました」
「今日は、午前中からとても元気な○○君。○○先生の後ろをハイハイでついていって、だっこして!のポーズ。○○先生の抱っこで気持ちよさそうに眠っていました」
「お昼寝から目を覚ますととってもすっきりしたお顔。のどが渇いていたのかミルクをごくごく勢いよく飲んでくれました」
・遊び(興味、関心)
目の動き、手足の動きなど(目で追う、見つめる、笑う、声を出す、真似るなど)に着目し、興味関心のでてきたことを伝えます。
(書き方例)
「クラスのみんなと協力して、大きなこいのぼり作りに挑戦した○○くん。折り紙の感触とビニールの感触を少し嫌がりながらも、ぺたぺた上手に貼っていました。保育者ができたね~と拍手すると、○○くんも一緒にぱちぱちと拍手していました」
「朝の『いってらっしゃい』が悲しくて泣いてしまいましたが、くしゃくしゃと音のするおもちゃを持っていくと興味津々!自分でもくしゃくしゃ~を繰り返して遊んでいました」
「午前中の午睡から起きると、元気にハイハイ。お友達の傍にきて、おもちゃで遊んでいるのをじっと見ていました」
「今日は泣いている時間は少し長かったですが、抱っこでだんだんと落ち着いてきた○○ちゃん。いないいないばぁの音楽をかけると声を出して笑ってくれました」

1歳児のポイント

1歳児は身体機能の発達が目覚ましく、1歳~1歳3ヶ月くらいで歩き出し、手指の操作も巧みになってきます。スプーンやフォークをもって食べるのが上手になってきたり、クレヨンを使ってお絵かきをしたり、道具を使えることの喜びを感じられるようになります。このように活動の範囲が広がる1歳児は、探索活動も旺盛になってきます。言葉も習得し始めるので、どんなお話をしたのか、どんな活動に興味を持ったのか、どんな動きをしていたかなど活動の様子に着目して書きましょう。

1歳児の連絡帳の書き方例

・食事
飲む量や食べる量が普段と比べて多い、少ないと言った変化に注目し、どのように食べていたかを書きます。手づかみ食べからスプーン等を使えるようになる時期なので、食べ方の発達の変化、援助方法なども共有するとよいでしょう。
(書き方例)
「給食の時に少し眠そうにしていた○○ちゃん。一生懸命食べようとしていましたが、途中で眠ってしまいました。ぐっすり眠ってスッキリしたのか、午睡明けの補食はおにぎりを、おかわりしてくれました!」
「自分で食べたい気持ちが強い○○くん。フォークも持てるようになってきたので、保育者がとなりでフォークの持ち方を見せると、上手にまねしてくれました」
「園ではおやつの牛乳とお茶を一口くらいしか摂りたがらず、おしっこはお昼寝明けの一回が多いです。これから暑くなってくるので、もう少し水分が摂れるように誘ってみたいと思います」
・生活習慣
少しずつできることが増えてくるので、やってみたい気持ちが出てきた瞬間を見逃さず、伝えましょう。保育者の声がけやどのように援助したのかを書き添えると保護者の参考になります。
(書き方例)
「お散歩の靴下を履くときに、『自分で!』という○○くん。少しだけ様子を見てみたのですが、なかなか足が入らなかったので、『すこーしだけお手伝いするね』と声を掛けて、足を入れるところまで保育者がやると、上手に靴下を引っ張ることができました。できた!の顔でニコニコの○○くんでした」
「お昼寝の後、お友達が着替えていると、『○○ちゃんも!』といって自分から脱いで、服を畳んでくれました。お友達の様子をよく見ている○○ちゃんです」
・遊び、戸外遊び
動くものや自然に興味を持つようになる頃です。季節の移り変わりや出会った虫・花などにどんな反応だったかを書きましょう。また、保護者は友達とうまく遊べているかが気になります。いっしょに遊ぶことが少なくても、友達との小さなかかわりを伝えてください。もし、保護者が友達と遊べないことを気にしているようなら、一人遊び中心の時期であることを伝え、安心できる声掛けをしましょう。
(書き方例)
「今日はバギーに乗ってお散歩に行きました。○○くんが『いた!』と指さす方向をみるとアリが巣穴に入っているところでした。じーっと見つめて興味津々なのに、○○くんのほうにアリが寄ってくるとゆっくり逃げるところがかわいかったです」
「セミの抜け殻をみせると恐るおそるちょんと触った○○ちゃん。ドキドキしているのがこちらにも伝わるくらいの真剣な表情でした」
「お友達の遊んでいたおままごとのおにぎりが欲しくなった○○ちゃんですが、『じゅんばんこ!』が分かるようになって、待っててくれました」
「保育者が0歳児クラスの子を抱っこしていたら、傍に来て『あかちゃん』となでなで。とてもやさしいお姉さんの○○ちゃんでした」

2歳児のポイント

2歳児は体の発達だけなく、精神面も大きく発達します。幼児クラスにむけて、生活習慣や社会性を身に付けていく時期でもあります。自己主張が強くなり、一見、わがままに見える行動も多くなるので、その行動に悩む保護者も多いです。保育者は子どもの気持ちを代弁し、わがままに見える行動も発達において大事な過程であること、困った要求にどう寄り添っていくかを伝えることが大切です。
また、語彙(ごい)も増えてくる時期なので、子どもの何気ない言葉や保育者とのやりとりを伝え、子どもの様子を共有していきましょう。

2歳児の連絡帳の書き方例

・遊び、戸外遊び
2歳児になると、保育者が設定した遊びの中で友達と遊べるようになります。保育者とのかかわりはもちろん、友達とのかかわりをなるべく書きましょう。
(書き方例)
「○○公園に行きました。大きなアリを発見した○○ちゃん。『どこ行くのかな?お買い物かな?』とチョコチョコついていく姿が可愛かったです」
「花壇のところでダンゴムシをみつけた○○ちゃん。『こわいー』というものの興味津々!指でつんと触って、ころっと丸まるのが楽しかったようです」
「砂場にはっぱを並べて八百屋さんになった○○くん。△△くんと『いらっしゃいませー』と大きな声でお客さんあつめ。先生も食べる?と誘ってくれました」
「こいのぼりを製作しました。『これな~んだ?』とこいのぼりの絵本をみせると、大きなまごいを指さして『お父さん!』と教えてくれました。絵具はオレンジを選んで少しずつじっくり塗っていました」
・生活習慣
幼児クラスに向けて、1人でできることがどんどん増えていきます。洋服を畳んだり、使った道具の片付けたり、トイレトレーニングなども行う時期なので、出来たこと、完璧にできなくても、どこまで頑張ったのかをしっかりと伝えるようにしましょう。
(書き方例)
「お絵描きを楽しんだ○○ちゃん!保育者が『もうすぐ給食の時間だよ~』と声を掛けると、クレヨンを箱に片付けて、元の場所へ。○○ちゃんの様子を見ていたお友達もお片付けをしてくれて、とっても助かりました」
(トイレトレーニングがうまくいかず悩む保護者に対して)
「(おしっこの)タイミングが合わないことが続いているかもしれないですが、園では、トイレでおしっこができる回数も増えてきていますよ。辛いときは無理せず、紙パンツに戻して時間でトイレに誘ってみるという方法もあります。保育園ではパンツかオムツのどちらで過ごすのも問題ありませんので、またお声を掛けてくださいね」
「オムツがいいとおうちで言うのは、もらしてしまうのがいや!という想いが強いからかもしれないですね。園では、ほかの子がパンツを履いているのもあり、パンツを履きたがるので、引き続きトレーニングして、成功体験を増やしていこうと思います」
・心の安定
自分のことを自分で取り組もうとしても、なかなかうまくいかず、イライラして場面が多くなってしまうのも2歳児の特徴です。大声で泣いたり、かんしゃくを起こしたり、時にはモノを投げてしまったりすることもあります。こういった行動が続くと、保護者も悩み、辛くなってしまいます。園での様子をしっかり伝え、イヤイヤ期特有の行動の意味やどのように対応しているかを書きます。また、保護者が追い詰められている様子であれば、お迎えの時に声を掛ける、話をする時間をとるなど、保護者に寄り添うようにしましょう。
(書き方例)
「イヤイヤ期大変ですよね。何度も叱って辛いかもしれないですが、いけないことはしっかりいけないと伝える方法でよいと思いますよ」
「モノに投げてしまうのは、なかなか自分の気持ちを言葉で伝えられなくて、もどかしい気持ちなのかもしれないですね」
「嫌な気持ちになっている時は、園では、お話を聞くようにしています。困ったときはいつでも相談してくださいね」

4,対応に悩むことが書いてあった時のポイント

答え方に悩む内容が連絡帳に書かれることもあります。このような場合、一人で判断せず、まずは園長先生や主任の先生に相談しましょう。「こんなことを質問してもいいのかな?」と思うことあるかもしれませんが、安易に答えてしまうとクレームに繋がる可能性があります。

園長先生や主任の先生に相談したうえで、状況を整理し、どう対処するべきなのかをしっかりと理解するように努めましょう。

5,保育園の連絡帳でNGな書き方とは?

保護者の想いを否定するのはNG
たくさんの想いを抱えながら子育てに奮闘する保護者の中には、保育者と異なる考え方をされる方もいるかもしれません。その場合、完全な否定は避け、「こんな方法もあります」「園ではこんなふうにしていますよ」といった提案をする形がよいでしょう。

出来事だけ羅列するのはNG
「室内遊びでゆったりと過ごしました」「お昼寝を1時間半しました」といった出来事を羅列するだけの書き方は避けましょう。特に伝えたい出来事をクローズアップし、どのように過ごしているのかイメージしやすいように伝えたうえで、保育者の想いを添えるとよいでしょう。

苦情を一人で抱え込むのはNG
保護者からの苦情は必ず、主任や園長先生に共有します。一人で対応を判断せず、相談するようにしましょう。また、苦情は真摯に受け止め、「こちらの確認不足で大変失礼いたしました」「貴重なご意見ありがとうございます」といった丁寧な対応を心がけましょう。

大事なことを連絡帳で書くのはNG
大事なことを連絡帳で伝えると、誤解を生んでしまうことがあります。例えば、怪我や噛みつきなどがあった際、連絡帳に書いて伝えるのはよくありません。文章では伝わりづらいため、必ず口頭でやり取りしましょう。

6,保育園の連絡帳業務を効率化する

連絡帳の書き方のポイントについてまとめてきましたが、やはり複数の子どもに毎日連絡帳を書く負担は大きいものです。特に行事の前などは慌ただしく、連絡帳を書く時間を十分に確保することもままならないことはあります。
そんな時は連絡帳アプリを活用するのも一手です。連絡帳アプリを使うと以下のようなメリットがあります。

保育士のメリット

  • 個別の連絡帳を都度開かなくても、端末ひとつで記入できる(記入するためのスペースを準備しなくてもよい)
  • 保護者からの急なお休みや送迎変更の連絡を確認することができて、電話対応する時間が軽減される
  • 園児に対する気付きを連絡帳アプリ内にメモすることができ、保育士間で気付きの共有できる
  • 園児の活動の様子を入力すれば、日誌にも反映されるため、書類作成時間を短縮できる

保護者のメリット

  • 急なお休みや送迎変更の連絡も連絡帳アプリから簡単に伝えることができる
  • 連絡帳アプリ内のカレンダーからイベント日程を確認できる
  • 施設から届いた資料は連絡帳アプリ内に保存されるため、連絡帳アプリ内で資料を閲覧できる
  • 施設で作成した請求データを保護者の連絡帳アプリに送信することで、請求金額の確認ができる

7,まとめ

連絡帳は、保育園と保護者との連携を図り、より良い保育をするためのツールのひとつです。
保育者は、日々の子どもの生活や遊びをよく観察しながら「子どもに必要な援助はなにか」を把握して連絡帳を記入しましょう。また、保護者の不安や話を聞き、必要なアドバイスをすることで保護者との信頼関係を築くことにも役立ちます。
さらに、時間のかかる連絡帳業務を効率化するためには連絡帳アプリも有効です。喫食状況や検温、共通の行事連絡などの二度書きの手間を減らすこともできるので業務を効率化・省力化できます。
保護者の気持ちに寄り添いながら、連絡帳・連絡帳アプリを活用していきましょう。


参考文献
東京都教育委員会 <参考>0歳児から2歳児の発達過程

中坪史典ほか編集 ミネルヴァ書房 2021 『保育・幼児教育・子ども家庭福祉辞典』
椛沢幸苗監修 ナツメ社 2021 『そのまま使える!0・1・2歳児 連絡帳の書き方&文例BOO』
東京都教育委員会 2016『就学前教育カリキュラム 改訂版
林悠子 2015 『保育学研究 第53巻 第一号』ー保護者と保育者の記述内容の変容過程ににみる連絡帳の意義