1.保育における「養護」

保育所保育指針によると、保育における「養護」とは、子どもたちの「生命の維持」と「情緒の安定」を目指して保育者が関わることを指しています。

「養護」とは子どもの生命の保持及び情緒の安定を図るために保育士等が行う援助や関わりであり、保育所における「保育」とは、養護及び教育を一体的に行うことをその特性とするとされています。

つまり、「養護」とは子どもが心身ともに心地よいと感じる環境を整え、子ども自身が主体的に育つことをたすける営みのことです。

 

※厚生労働省  保育所保育指針  より引用

2.保育における「教育」

保育所保育指針によると、保育における「教育」とは、子どもが健やかに成長し、その活動がより豊かに展開されるための発達の援助とされています。

つまり「教育」とは、子どもの感じる・気付く・探る・考えるといった興味や関心を引き出す援助のことを指しています。

 

※厚生労働省  保育所保育指針  より引用

3.養護の2項目

養護には「生命の保持」と「情緒の安定」の2つの項目があり、保育計画ではそれぞれにねらいと内容を定めていきます。

生命の保持

生命の保持とは、子どもの健康と安全を維持できる生活を保ち、それができるように援助することです。

排泄を感じたらトイレに行くようにする、汗をかいたら着替えるといった生活習慣を子供が自らできるように助けることは「生命の保持」に含まれます。

 

<ねらい>

① 一人一人の子どもが、快適に生活できるようにする。

② 一人一人の子どもが、健康で安全に過ごせるようにする。

③ 一人一人の子どもの生理的欲求が、十分に満たされるようにする。

④ 一人一人の子どもの健康増進が、積極的に図られるようにする。

 

<内容>

① 一人一人の子どもの平常の健康状態や発育及び発達状態を的確に把握し、異常を感じる場合は、速やかに適切に対応する。

②家庭との連携を密にし、嘱託医等との連携を図りながら、子どもの疾病や事故防止に関する認識を深め、保健的で安全な保育環境の 維持及び向上に努める。

③ 清潔で安全な環境を整え、適切な援助や応答的な関わりを通して 子どもの生理的欲求を満たしていく。また、家庭と協力しながら、子どもの発達過程等に応じた適切な生活のリズムがつくられていくようにする。

④ 子どもの発達過程等に応じて、適度な運動と休息を取ることができるようにする。また、食事、排泄せつ 、衣類の着脱、身の回りを清潔にすることなどについて、子どもが意欲的に生活できるよう適切に援助する。

※厚生労働省  保育所保育指針解説  より引用

 

情緒の安定

情緒の安定は、子どもの気持ちや行動を受け入れて自己肯定感を育てることです。

子どもの喜怒哀楽を受け入れることで安心や信頼を得て、情緒の育ちを促します。ひとりひとりが自己肯定感を抱けるように援助する項目が「情緒の安定」です。

 

<ねらい>

① 一人一人の子どもが、安定感をもって過ごせるようにする。

② 一人一人の子どもが、自分の気持ちを安心して表すことができるようにする。

③ 一人一人の子どもが、周囲から主体として受け止められ、主体として育ち、自分を肯定する気持ちが育まれていくようにする。

④ 一人一人の子どもがくつろいで共に過ごし、心身の疲れが癒されるようにする。

 

<内容>

① 一人一人の子どもの置かれている状態や発達過程などを的確に把握し、子どもの欲求を適切に満たしながら、応答的な触れ合いや言葉がけを行う。

② 一人一人の子どもの気持ちを受容し、共感しながら、子どもとの継続的な信頼関係を築いていく。

③ 保育士等との信頼関係を基盤に、一人一人の子どもが主体的に活動し、自発性や探索意欲などを高めるとともに、自分への自信をもつことができるよう成長の過程を見守り、適切に働きかける。

④ 一人一人の子どもの生活のリズム、発達過程、保育時間などに応じて、活動内容のバランスや調和を図りながら、適切な食事や休息が取れるようにする。

※厚生労働省  保育所保育指針解説  より引用

4.各年齢ごとのねらいと内容

保育現場に求められる養護は、子どもの年齢によって変わります。乳児保育、1歳以上3歳未満児、3歳以上児の3段階に分かれています。

 

乳児保育に関わるねらいと内容

乳児保育のねらいと内容には以下の3つの項目があります。

乳児保育は養護2項目である「生命の保持」と「情緒の安定」の基盤づくりになります。成長過程がひとりひとり違うことから、心身の機能が未熟なことにを配慮した内容であることが大切です。

 

  • 健やかに伸び伸びと育…健康な心と体を育て、自ら健康で安全な生活をつくり出す力の基盤を培う
  • 身近な人と気持ちが通じ合う…受容的・応答的な関わりの下で、何かを伝えようとする意欲や身近な大人との信頼関係を育て、人と関わる力の基盤を培う
  • 身近なものと関わり感性が育つ…身近な環境に興味や好奇心をもって関わり、感じたことや考えたことを表現する力の基盤を培う

※厚生労働省  保育所保育指針解説  より引用

 

1歳以上3歳未満児に関わるねらいと内容

1歳以上3歳未満児の保育は教育のベースになるため、ねらいに教育の5領域が含まれるようになります。

子どもの自発的な気持ちを尊重して自我の成長を助けること、探索が行える環境や安全性を保持することが重要な年齢です。

 

  • 心身の健康に関する領域「健康」…健康な心と体を育て、自ら健康で安全な生活をつくり出す力を養う
  • 人との関わりに関する領域「人間関係」…他の人々と親しみ、支え合って生活するために、自立心を育て、人と関わる力を養う
  • 身近な環境との関わりに関する領域「環境」…周囲の様々な環境に好奇心や探究心をもって関わり、それらを生活に取り入れていこうとする力を養う
  • 言葉の獲得に関する領域「言葉」…経験したことや考えたことなどを自分なりの言葉で表現し、相手の話す言葉を聞こうとする意欲や態度を育て、言葉に対する感覚や言葉で表現する力を養う
  • 感性と表現に関する領域「表現」…感じたことや考えたことを自分なりに表現することを通して、豊かな感性や表現する力を養い、創造性を豊かにする

※厚生労働省  保育所保育指針解説  より引用

 

3歳以上児に関わるねらいと内容

3歳以上児の保育も同様に5領域をベースにしつつ、情緒の安定をより意識することが大切です。

他者との関わりが増す3歳児以上の内容は身体の成長とともに自主性と社会性を育てることも重視します。特に小学校入学を控える6歳児では、感情や経験を言葉で表現することや友人と一緒の行動ができるように援助していきます。

 

  • 心身の健康に関する領域「健康」…健康な心と体を育て、自ら健康で安全な生活をつくり出す力を養う
  • 人との関わりに関する領域「人間関係」…他の人々と親しみ、支え合って生活するために、自立心を育て、人と関わる力を養う
  • 身近な環境との関わりに関する領域「環境」…周囲の様々な環境に好奇心や探究心をもって関わり、それらを生活に取り入れていこうとする力を養う
  • 言葉の獲得に関する領域「言葉」…経験したことや考えたことなどを自分なりの言葉で表現し、相手の話す言葉を聞こうとする意欲や態度を育て、言葉に対する感覚や言葉で表現する力を養う
  • 感性と表現に関する領域「表現」…感じたことや考えたことを自分なりに表現することを通して、豊かな感性や表現する力を養い、創造性を豊かにする

※厚生労働省  保育所保育指針解説  より引用

5.保育計画における養護の書き方のポイント

保育計画の養護の書き方は、以下の3つのポイントを押さえると書きやすくなります。

 

  • 文末を意識して保育者が主体となる文章にする。
  • 「生命の保持」と「情緒の安定」に関するねらいと内容で書く。
  • 「ねらい」を達成する方法を「内容」にする。

 

養護の書き方の一番のポイントは、保育者が主体となる文章にすることです。なぜなら養護は「保育者が子どもに対して行うこと」だからです。

 

例えば、「~安定感をもって過ごせるようにする。」のように、子どものために「~する」という文末にすると保育者が主体になりますが、「~を楽しむ」「~を感じる」で書いてしまうと子どもが主体の文章になってしまうので注意しましょう。

 

ねらいを書くときは「生命の保持」と「情緒の安定」に触れることが必須です。対して、内容は「ねらいに対して保育者が行うこと」を具体的に書きます。

 

例えば、「一人一人の子どもが安定感をもって過ごせるようにする。」というねらいであれば、「子どもの思いを保育者が受け止めて共感し、子どもが安心して過ごせるようにする。」というように、どうしたらねらいが達成できるかを考えて具体的方法を記載してみましょう。

6.まとめ

保育の「養護」とは、子どもたちの生命の維持と情緒の安定のために保育者が関わることで、教育の基盤となるものです。

 

保育計画の養護のねらいと内容を書く場合は、保育所保育指針にある「生命の維持と情緒の安定」のねらいを踏まえて書くこと、内容はねらいを達成する具体的な方法と考えつつ、子どもの年齢に適した内容にすることが重要です。

また、養護は保育者が子どもに対して行うものなので、文章の主体が保育者となるように文末に注意して記載するとよいでしょう。

 


参考文献:

厚生労働省

保育所保育指針

厚生労働省

保育所保育指針解説