今回は保育士の離職率をテーマに解説していきます。保育士は本当に離職率が高いのか、他業種や年齢構成、都道府県などで比較調査しています。入職後のギャップが少ない園を見つけるポイントや、現場で働きやすくなるためのサービスをまとめました。

保育士の離職率は高い?

 

厚生労働省が調査した令和2年(2020年)の社会福祉施設等調査によりますと、保育所にフルタイムで勤務する保育士の総数は、公営施設・私営施設合わせてのべ317,346人になります。一方、離職した人数は総数28,547人、そのうち公営施設は4,258人、私営施設で24,289人です。なお、保育士の資格を有し保育所に勤務している方は、約45万人ほどになります。

 

離職率を見ますと、全体が9.0%、公営施設だけでは4.6%、私営施設は10.8%となり、私営施設での離職率が高い傾向が数字で見て取れます。一方で、令和2年にフルタイム勤務の保育士としての採用者数は合計で40,752人、公営施設は6,850人、私営施設は33,902人です。また、パートターム勤務の保育士は、2,1422人採用され14,915人が離職しているようです。

 

データから見ると保育所で勤務する保育士の総数は、5年前の平成27年(2015年)の307,119人からおよそ1万人ほど保育士が増えています。

令和2年 社会福祉施設等調査の概況|厚生労働省

 

他の業種と比較すると保育士の離職率はどう?

厚生労働省による令和2年度の雇用動向調査結果をみますと、全業種のパートタイムを除くフルタイム労働者の離職率は10.7%となっています。

 

こちらは日本国内の全職種の平均離職率になりますが、保育士の離職率は9.0%のため、全業種平均を下回っています。この調査では、「社会保険・社会福祉・介護事業」に保育事業が介護事業と共に含まれており、約12%の離職率を示していますが、公益財団法人 介護労働安定センターの令和2年度「介護労働実態調査」結果によりますと、介護施設職員(訪問介護員、介護職員、サービス提供責任者)の離職率は、14.9%となっていますので、整合的であります。

 

しかし、私営の離職率である10.8%は、全業種平均とほぼ同じレベルにある結果となりました。

令和2年度介護労働実態調査 公益財団法人 介護労働安定センター

若手保育士の離職率が高い?

平成30年度の社会福祉施設等調査では、常勤保育士の経験年数を調査したところ、民営の保育施設に勤務し、経験年数が不詳を除くと経験年数が8年未満の若手保育士が全体の半分を占めています。一方で、公営の保育施設に勤務し、経験年数が不詳を除くと、経験年数12年以上の保育士が半数を占めています。

 

令和2年の雇用動向調査から、年齢階層別の離職率をみると、全業種平均と保育事業を含む「社会保険・社会福祉・介護事業」のいずれも、34歳以下の若手の離職率が高い傾向があり、全業種平均をも上回っていることがうかがえます。

なお、60歳以上の全産業平均が高いのは、定年退職や再雇用からの退職などの理由から高めの離職率を示唆しているのではないでしょうか。

 

平成30年 社会福祉施設等調査の概況|厚生労働省
令和2年雇用動向調査結果の概況-|厚生労働省
 

保育士の離職する原因・理由は?

保育士が離職してしまう原因として上位にあがるのが、「職場の人間関係」「給料が安い」「仕事量が多い」「労働時間が長い」などです。

 

離職者は多いものの、毎年保育士の資格を取る方も多い現状で、なぜ保育士不足が加速しているのでしょうか。

 

この記事では保育士不足について軽く解説しますが、以下に添付したリンク記事では、さらに踏み込んで詳しく解説しています。
・保育士が不足している現状について
・不足の原因
・それに対する解決策
気になった方はぜひ読んでみてください。

 

保育資格を持っていても保育士になる人が少ない

令和3年度の保育士試験を受験した人数は83,175人、合格者数は16,600人も存在します。また、厚生労働省の資料によりますと、指定保育士養成施設を保育士の資格を取得した卒業者の就職先を、平成28年度から平成30年度を均してみると、保育所、認定こども園、児童福祉施設に約66%、幼稚園に約15%、その他に約15%となっています。

 

日本国内で保育士として登録されている人数は約154万人いますが、実際に勤務形態がフルタイム、パートタイムに関わらず保育士として働いている人は約59万人しかいません。

 

残りの約95万人が資格を持っているにもかかわらず、社会福祉施設では働いていないということになります。

 

保育士の現状と主な取組 厚生労働省

 

保育士不足と待機児童の関係性

保育所の設備運営基準として、0歳児3人に対して1人保育士がついている必要があり、1~2歳児では6人に1人、3歳児では20人に1人、4歳児以上になれば30人に1人の保育士が必要です。

 

上記の基準を満たさないとならないため、保育士が少ないと子どもを預かることができません。保育士が減っていくと、反比例して待機児童が増えていくという関係になっています。

 

保育士の労働需給を示す指標として「有効求人倍率」があります。「有効求人倍率」とは、厚生労働省がハローワークに届けられた求人数と求職数から算出した倍率になり、数値が1を超えると求人数が多く人手不足を示します。

この数値をみますと、令和4年4月の全職種の有効求人倍率が1.17倍に対して保育士の倍率は、1.98倍となっています。1人の求職者に対して求人が約2倍あることになります。

過去をみますと月々の変動がありますが、毎月2倍以上となり年間ピーク値をみると3倍以上を超える月がありますので、保育士の採用に厳しい状況が慢性的に続いていることがうかがえます。

 

子どもを持つ親御さんたちの中には「働きたいけど預け場所が無い」という理由で、自宅でお子さんの面倒を見ている方もいます。そのような待機児童の解消に向け、様々な取り組みがなされていますが、まず保育士不足を解消することが大前提でしょう。

 

保育士の有効求人倍率|厚生労働省

 

離職率の低い保育園を見つけるコツ

 

保育士のみなさんも、できれば長く働きたいと感じているのではないでしょうか。

 

ここでは、保育士の方が長く気持ちよく働くために、働きやすい保育園を見つけるコツを紹介します。

 

職場の人間関係や仕事量、給料、福利厚生など多方面で不満は生まれます。それらは働く前にしっかり保育園をリサーチすることである程度回避できるでしょう。

 

ぜひこの記事を参考に、ご自分に合った保育園選びをしてください。

保育園の理念や方針が自分と合っているか確認する

保育士として働いていて、将来進みたい方向性やこうなりたいという希望は誰しも持つものです。その希望や理想が保育園の理念と合わない場合、現実と理想のギャップが生まれ、だんだん不満が出てくるようになります。

 

公営の保育園であれば国や地方自治体の、私営であれば園長の理念や方針が定められており、園で働く一個人がそこを変えようとしても難しいです。

 

その保育園の理念や方針が自分の理想と合致するか、保育園に入る前に園長や上司となる方としっかり話し合いましょう。

保育士が十分確保されているか確認する

保育士の数が働く保育園の規模に見合ったものであるか確認しましょう。

 

園の理念や方針が自分に合っていたとしても、人手が足りなければそれだけ自分にかかる仕事量は増えます。

 

シフト制であったり、土日や祝日など休日に対して福利厚生が整っていたとしても、保育士の誰かが突発的に休んだり、体調を崩した時には関係なく呼び出される可能性が高いです。

 

仕事量が増え、残業が多くなるとそれだけ体力も気力も削れてくるため、保育士の人数は求人案内や園見学の時に聞いておく必要があります。

福利厚生が充実しているか確認する

長く働き続ける上で、育休や産休などの福利厚生が充実しているかも重要なポイントです。

 

安心して働くために、福利厚生がしっかり整っており、必要なときにその制度がしっかり使えることを確かめましょう。

 

育休や産休の項目があったとしても、実際に利用している人がいなかったり、少数だったりするのでは福利厚生がいくらあっても無意味です。

休日出勤や残業手当があるか確認する

保育園を探すときには、求人情報に休日出勤や残業手当など各種手当の記載があるか確認しましょう。

 

離職してしまうミスマッチの原因として多いのが、人間関係のトラブルを除くと「給料の安さ」と「仕事量の多さ」になります。

 

仕事量が多いうえに働いても残業代が出ない、もしくは微々たるものでは働く意欲も削られてしまいます。継続年数が長くなっても昇給や昇格が見込めないようであれば、長く働き続けるメリットを感じられなくなってしまうでしょう。

有休休暇の取得率を確認する

募集要項だけでは確認できないのが、有給休暇の取得率になります。有休取得率を公表している保育園はホワイトな運営をアピールしているため、他の福利厚生に関してもスムーズに使えることが多いです。

 

園内に独自のルールがあり、有休を取得するのに様々な条件を付けてくる園は避けましょう。

 

有休取得率が提示されていない場合は、園長や上司となる方に直接聞く必要がありますが、その際に言葉を濁したり嫌な顔をしたりする場合は、有休が満足に取れない園であることが多いです。

保育士同士のコミュニケーションが取れているか確認する

保育士の離職の理由として多いのが「職場の人間関係」です。

 

保育士だけでなくどの職業でも離職する原因として大きな割合を占めているほど、職場で一緒に働く同僚や上司との人間関係は重要なポイントです。実際に現場にいないと分からないのがネックですが、園見学というチャンスを活用しましょう。

 

心身共に健全に長く働きたい場合は決して外せない項目のため、働いている保育士たちがしっかりコミュニケーションをとれているか確認してください。

子ども達の園での様子を確認する

園長や保育士の方が園見学で普段と違う様子だったとしても、子ども達の様子を見ればどのような雰囲気の保育園かはある程度察することができます。

 

子ども達が元気でのびのびと遊べているようであれば、働いている保育士の方々もゆとりのある仕事ができているということになります。

保育士の業務負担を減らすチャイルドケアシステム

 

Child Care Systemは、園に通う子どもの連絡帳や、保育士のシフト業務など多岐にわたる業務をICT化し、保育士の日常の業務をサポートするシステムです。

 

複数の料金プランがあり、最初は安くお試しで始めてみることも可能です。トライアルプラン、ライトプラン、スタンダードプランと3つのプランがあり、勤める保育園の状況に合わせて適切な選択をすることができます。

 

現在保育園や幼稚園、学童施設など950もの施設に導入されており、保育士のみなさまの業務のお手伝いをさせていただいています。

まとめ

 

離職率が高いと言われている保育士ですが、実際は全体の3分の2が勤務する私営施設では全業種の平均とほぼ同じ水準であることが分かりました。保育士の給料の安さや、仕事量の多さなど待遇面の評判から、必要以上に離職率が高いと喧伝されている可能性があります。

 

離職率は全業種平均とほぼ同じですが、保育士の資格を持っていても保育園で働くことを選ばない人が多いのも事実です。保育士が不足すると保育園が回らなくなり、結果待機児童が生まれます。

 

離職率を下げ、保育士が定着するためには長く働き続けられる保育園を探すことが重要です。

 

園の理念や雰囲気、福利厚生など園見学などを用いながら事前に調べ、理想の職場を見つけましょう。

 

最近では一般でも良く知られるようになった乳幼児突然死症候群(SIDS)ですが、このような痛ましい事故のリスクは可能な限り下げる必要があります。

 

研究が進み徐々に乳幼児突然死症候群について詳細がわかってきました。保育現場では睡眠環境を含めこれらのリスク軽減が求められます。