保育ドキュメンテーションを知っている方には、導入するメリットや作り方などたくさんの疑問や不安があるのではないでしょうか。

 

本記事では保育ドキュメンテーションを利用した事例を挙げながら、導入するメリットや効果を紹介しています。

 

この記事を読むことで、自分の園で保育ドキュメンテーションを導入するべきかどうかを判断できるようになります。

 

保育ドキュメンテーションについて詳しく知りたい方は、ぜひこの記事を読んでみて下さい。

保育ドキュメンテーションとは?

 

保育ドキュメンテーションとは、子どもの普段の活動を写真や動画、音声、コメントで記録するものです。保育者と保護者間で、子どもの活動が共有できるため、保護者はより安心して保育者に子どもを預けられるようになります。

 

文字だけでなく、写真や動画を用いた記録も行えるのが特徴で、保護者が保育の場面をイメージしやすいです。

 

文字だけでは行えない「保育活動の見える化」を実現できるシステムといえるでしょう。

保育ドキュメンテーションの始まり

保育ドキュメンテーションは、イタリア発祥の幼児教育方法が起源です。

 

イタリア発祥の幼児教育方法は「レッジョ・エミリア・アプローチ」といい、子ども個人の感性や意志、個性を尊重し、それらの感性たちを伸ばしていくことを目指します。

 

子どもの感性や意志、個性を伸ばしていくためには、まずその子どもがどのような特性を持っているのかを知ることが必要です。また普段の様子を見て、興味対象になるものや、行動を観察しなければいけません。

 

観察した内容を記録に残しておくことで、今後の保育に役立つ有益な情報を得られるのです。保育ドキュメンテーションは、各子どもに適した保育を行うための、有効な記録法といえるでしょう。

保育ドキュメンテーションの役割

 

保育ドキュメンテーションの役割は、子どもの探求心や学びを具体化し、可視化するという点です。ただし、子どもの興味対象は変化するのが当たり前であり、継続的な記録が必要になります。

 

また、記録することが目的になっていると本来の役割を果たせません。記録した内容から、子どもの行動における本質的な意味を解釈する工程をはさむことが重要です。

 

子どもの行動を解釈することで、これからの保育計画にも役立つでしょう。

保育ドキュメンテーション事例

 

行事の様子を伝える際に活用した場合

新型コロナウイルスの影響で、行事に参加できる家族の人数が限られることもあるでしょう。保育ドキュメンテーションを、行事の様子を共有するために活用すれば、行事を見に来られなかった家族にも様子を伝えられます。

 

また遠足等の園外で行う行事をドキュメンテーションに記録すれば、行事に参加したクラス以外の先生や園長先生など、園全体への共有も可能です。

 

行事の活動を記録しておくことで、行事を運営する園のための資料にもなるでしょう。来年度以降も同じ行事を行う際に、配慮点や改善点を明確にできます。

クラスの掲示板として活用した場合

保育ドキュメンテーションを配布したり、ネットで配信したりすると、保護者が子どもの活動を見られます。さらに園に掲示すれば、子どもをお迎えに来る保護者の目に入り、ドキュメンテーションを見てもらえるでしょう。

 

高い頻度でドキュメンテーションを更新すれば、比較的最近の出来事が載せられるため、保護者と保育者、保護者と子どもの会話も弾むかもしれません。

 

また、ドキュメンテーションに、子どもが作成した作品を取り入れるのも効果的です。子ども同士でお互いの作品を見たときにも、刺激になるでしょう。

保育ドキュメンテーションのメリット

 

保護者は子どもの様子がわかる

保育ドキュメンテーションを通して、保護者は活動内容や子どもの興味、関心対象を理解できます。言葉や文章では伝わりづらい内容も、写真や動画と共に見られるため、保育者目線でも状況を伝えやすいでしょう。

 

保護者は、子どもが保育園で示した興味対象を理解できれば、家庭での教育方法にも役立てられます。

 

さらに親戚が遠方に住んでいて会えない場合でも、園での様子を手軽に伝えられるでしょう。

子どもの成長を感じやすくなる

保育ドキュメンテーションは、子どもの活動を継続的に記録するものです。そのため、断片的な出来事ではなく、長期的な成長に気づけるでしょう。

 

例えば、「ジャンプできるようになった」や「以前まで興味を持たなかった遊びに興味を示した」などです。写真や動画と共に、保育者のコメントを添えることで、成長をより具体的に実感できます。

 

子どもの成長を実感できれば、保育者の仕事に対するモチベーションを維持できたり、保育の質を上げたりすることも可能でしょう。

子どもの学びのきっかけにつながる

ドキュメンテーションを効果的な資料にするためには、その日の活動を振り返り、子どもの行動の本質を考える必要があります。そのため、おのずと子どもの言動についてじっくり考えられるようになるのです。

 

その結果、「これに興味を示していたため、このような行動を取ったのか」という気づきが得られます。興味対象がわかれば、それに対応できるような保育を導けるでしょう。

 

子どもの特性を知ったうえで、その子に応じてあげれば、学びのきっかけへと変化するはずです。

保護者と情報共有しやすくなる

保護者はドキュメンテーションに目を通せば、1日の活動や行事の様子を把握できます。よって保育者が情報共有のために対話する時間は不要です。

 

情報共有の対話時間を短縮できるだけでなく、具体的な内容を伝えられます。口頭のみ、もしくは文字のみでは、保護者に様子をイメージしてもらうのは難しいです。

 

写真や動画と共に活動内容を伝えられる保育ドキュメンテーションなら、保護者により明確に様子を理解してもらえるでしょう。

保育者同士で情報共有しやすくなる

保育ドキュメンテーションを日々の活動記録に活用している場合には、担当していないクラスのものを見て、新たな気づきを得られます。またミーティングの際に保育者同士がドキュメンテーションを見て、議論すれば、保育の質を高めるための話し合いも行えるでしょう。

 

さらに行事の活動記録に活用している場合は、園外の行事を行ったときに、引率しなかった先生が行事の様子を把握できます。これからの行事運営における改善点を明確にできるでしょう。

保育ドキュメンテーションの効果

 

保護者とのコミュニケーションがとりやすくなった

保育ドキュメンテーションを保護者と共有することで、子どもの活動内容や興味対象を詳細に伝えられます。言葉だけでは伝わりづらい内容も、写真や動画と共に共有すれば、保護者も理解しやすいです。

 

子どもの1日の報告がやりやすくなると、コミュニケ―ションのしやすさにも大きな変化が現れるでしょう。

 

さらに保護者が園での活動を理解してくれると、保育方針の理解につながり、園への協力も得やすくなります。

親子のコミュニケーションが増えた

子どもが保育園にいる時間のことを保護者が把握、理解できれば、家に帰ってきてからのコミュニケーションがよりたくさん生まれるでしょう。

 

保育園での出来事や子どもの行動に対する話など、家庭で保育園での話をできます。家庭と保育園が分裂した場所でなくなるためにも、1日の振り返りを家庭で行うことが重要です。

 

保育者と保護者だけでなく、保護者と子どものコミュニケ―ションにも役立つツールであるといえるでしょう。

子どもたち同士の触れ合いのきっかけになった

保育ドキュメンテーションには、行動の記録のほかに、子どもたちが作成した作品を添付することも可能です。子ども同士でお互いの作品を鑑賞し合うことで、刺激を与えあったり、触れ合いのきっかけになったります。

 

また過去の出来事について子どもたちが振り返れば、会話のテーマにもなります。

 

記憶の中で不十分なところを保育ドキュメンテーションで補うことで、子ども同士のコミュニケーションに役立つでしょう。

保育の質の向上につながった

保育ドキュメンテーションを記録することで、保育体制の現状を把握できます。そこから保育者同士で改善点を話し合えれば、保育の質を向上できるでしょう。

 

また、映像に収めることで、普段気づけない子どもの行動に気づくことも可能です。そして、新たな気づきを園内に共有できれば、保育者全員のノウハウが拡大されます。

 

園内で保育におけるノウハウが蓄積すれば、研修も充実していくでしょう。

事務作業がしやすくなった

1日の活動のまとめを保育ドキュメンテーションに一元化できるため、複雑な業務が削減されます。よって、他の業務に充てられる時間が多くなり、結果的に、事務作業の効率化につながるでしょう。

 

またお便りや連絡帳もシステム化して連携すれば、保育ドキュメンテーションに記録した写真を転用することも可能です。

 

媒体ごとに写真や動画を登録せずに済むので、事務作業全体の効率化が見込めます。

保育ドキュメンテーションの作り方

 

1.素材を集める

 

保育ドキュメンテーションを作ると決めたら、まず子どもを観察して、様子や行動を写真や動画に収めたり、メモしたりしておきます。

 

素材を集めるときに子どもの行動をすべて記録するのではなく、子どもがなにかに興味を抱いているときや成長を感じられる場面などにおいて、収集するのがおすすめです。

 

2.ドキュメンテーションに取り上げるテーマを決める

 

どのようなテーマでドキュメンテーションを作成するかも明確にしておくことが重要です。例えば、自由に遊ぶ時間やご飯の時間、行事当日や行事に向けた練習時間などがあります。

 

テーマを決めておくと、狭い範囲での観察や考察が可能になり、より深く子どもたちを観察できるでしょう。

 

3.写真に付けるコメントをまとめる

 

写真や動画などの素材を集められたら、各素材に添えるコメントをまとめます。

 

写真や動画を見てわかることだけでなく、その場面をより具体的に想像できるようなコメントを書くことが重要です。例えば、どのような点に興味を示していたのか、興味対象に対してどのように感じていたのか、などです。

 

また成長した部分に対しては、どのように成長したのか、なぜ成長できたのか、という点が大切でしょう。

 

保育の意義が保護者に伝えられれば、園に対する理解が得られます。

 

4.保育者同士で共有する

 

ドキュメンテーションが完成したら、園内で共有して、ドキュメンテーション内の表現や作り方について確認するのがおすすめです。また保育者同士で共有すれば、各保育者が持っている視点を共有でき、保育の質を向上させることにもつながります。

まとめ

 

これまで、保育ドキュメンテーションの概要や導入のメリット、作り方を紹介しました。

 

保育ドキュメンテーションを活用することで、保育者と保護者や、保護者と子どものコミュニケーションを活発にできるという点が大きなメリットです。また、子どもの学びにおいても、重要な役割を果たすといえるでしょう。

 

保育ドキュメンテーションの導入を迷っている方は、本記事で触れたメリットや効果を考慮した上で、検討してみて下さい。