「食育って具体的にどんなことするの?」「食育計画を立てるために何が必要なのか知りたい」このように、保育士の方の中には、食育計画表の作成方法について悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、食育とはなにかを始め、食育計画表の具体的な作成方法まで紹介しています。本記事を読むことで子どもたちに正しい食育効果が期待できるでしょう。食育について悩んでいる保育士さんはぜひ参考にしてみてください。
保育園における「食育」とは何か?
「食育」を推進している農林水産省によると、「食育」とは「様々な経験を通じて食に関する知識と食を選択する力を習得し、健全な食生活を実現できる人間を育てること」と定義しています。
保育園で実行されている食育活動の基礎となるのが、食育基本法や食育推進基本計画です。全国の保育園では、子ども達が食事の重要性を認知し、健康的で正しい食習慣を身につけられるように、食育計画を立案し実践しています。
食育の目標について
農林水産省が推進する「第4次 食育推進基本計画」では、「食育に関心を持っている国民を増やす」「家族と一緒に食べる共食の回数を増やす」「朝食を欠食する国民を減らす」など、全国民に共通した16項目の食育の目標を掲げています。
一方、就学前の子どもに対しては、「食を営む力」の育成に向けての基礎を培うことが食育の目標です。(保育園の食育における具体的な「目指すべき子どもの姿」については後述します。)
そして、子どもが意欲的に食育活動に参加し、食に対する感謝の気持ちを育み、食文化に親しむ機会を重視するとされています。
なぜ必要?保育園で食育指導を行う理由
まず、保育園で提供される給食は子どもの心身の成長や発達に大きな役割を担います。また、子どもが生活と遊びの中で食に関わる体験を積み重ね、食を楽しむことができる人間に育てることも、保育園で食育指導を行う大きな理由です。
さらに、保育園での食育指導は、子どもの食に関する不安や心配を抱える保護者への支援としての役割も持ちます。食育は保育園と家庭が連携して進め、両者が協力して子どもの成長に関わることで、結果的に子育て支援の1つとなります。
食育を実施することの効果
食事の食べ残しが減り、集中力や学習能力をアップできる
保育園で食育活動を行なうことで、子どもは毎日規則正しく食事を摂ることやバランスのとれた栄養素を摂取することの重要性を理解します。それにより、食に対する関心が強まり、好き嫌いや食べ残しが減るなどの効果が出ます。
こうして食生活が整うことで、子どもの集中力や学習能力の向上が期待できるでしょう。特に、1日の始まりに摂る朝食は重要であり、朝食を抜くと集中力の低下などを招く可能性があります。逆に、規則正しく食事を摂ることで1日中、万全の状態で活動できるでしょう。
なお、「令和3年度 食育白書」によると、朝食を食べていない子ども(小・中学生)ほど国語と算数(数学)の平均正答率が低く、食べている子どもと食べていない子の平均正答率の差が10~15%となりました。
偏った食事を予防し、体力や免疫力をつける
子どもが食育を学ぶことで食事の好き嫌いが減り、偏った食事の予防になります。実際に保育園で提供される給食はバランスがとれており、少なくともそれを残さず食べることでムラなく栄養素が摂取できるでしょう。
バランスのとれた食事を摂ることで、体力や免疫力の向上が考えられます。逆に、塩分や脂質が極端に多いなどの偏った食事を続けていると、病気をしやすくなったり、心身の成長や発育の妨げになったりするでしょう。
なお、前出の食育白書によると、朝食を食べていない子ども(小・中学生)ほど体力合計点が低いという結果になりました。この結果からも、朝食の摂取が体力に影響を及ぼしているのは明らかです。
感謝の気持ちや食事のマナーを身につける
保育園での食育活動では、農家の人々や調理をする人、食材となる動物などに対する感謝の気持ちが芽生えることも、子ども達にもたらされる良い効果の1つです。また、保育園の給食においては、仲間と楽しく同じものを食べる喜びが感情を豊かにするでしょう。
食育を通して基本的な食事のマナーも身につきます。これは、同じ食卓を囲む人と気持ちよく食事をするためにも重要なことであり、将来公的な場でマナー違反をして恥をかくなどの失敗を防ぐことにつながります。
保育園で食育を行うことで、食事の際の姿勢や食事前後の挨拶、箸やスプーンの使い方など、身につけておきたいマナーを子どもの頃から自然に楽しく身につけることができるでしょう。
様々な国・地域の食文化に触れられる
食育の一つの役割として、様々な国・地域の食文化を子ども達に伝えることも挙げられます。保育園が所在する地域に伝わる郷土料理や特産物をメニューに加えることもあるでしょう。また、季節に応じて行事食を給食で提供する場合もあります。
さらに、保育園によっては世界各国の代表的な国民食を給食の献立に取り入れることもあります。このように食育を通して、地域の伝統的な食文化を子ども達に伝えたり、子どもが普段の生活では出会えないメニューを食べたりすることも食育のメリットです。
これによって、子ども達は地元の食文化に親しむだけでなく、多様な食文化に触れるきっかけとなるでしょう。それと同時に、子どもは非日常の体験を楽しむこともできます。
厚生労働省の「食育に関する指針」とねらい
厚生労働省発表の「楽しく食べる子どもに~保育所における食育に関する指針~」 では、現代の若者の朝食欠食や思春期やせなど、食を原因とした問題を解決する一助として、乳幼児の食育の重要性が説かれています。
そして、保育園における食育のねらいとして以下の「目指すべき子ども像」を挙げています。
1.お腹がすくリズムのもてる子ども
2.食べたいもの、好きなものが増える子ども
3.一緒に食べたい人がいる子ども
4.食事づくり、準備にかかわる子ども
5.食べものを話題にする子ども
このねらい(目指すべき子ども像)を念頭に置き、実際に行う食育活動の内容を考え、食育計画を立てましょう。
保育園での食育計画表の作り方とポイント
保育園での食育活動は、食育計画や指導案に基づいて実施されます。そして、食育に関しての知識を持ち、担当する子ども達の発達状況や食育計画終了時の成長を予測できる人が食育計画表の作成者に適しています。
また、食育計画表は年齢ごと、またはクラスごとに年間計画表を作成するのが一般的です。保育園における食育計画表の作り方とそのポイントを見ていきましょう。
食育のねらいに合わせて作成する
前述した厚生労働省発表の「楽しく食べる子どもに~保育所における食育に関する指針~」では、子どもの年齢・月齢ごとに食育の「ねらい」と食育計画の「内容」が具体的に明記されています。
また、配慮事項も丁寧に解説されているため、保育園で食育計画表を作成する場合はここに記載された「ねらい」に即した食育計画を立案すると、効率よく進めることができるでしょう。
季節に合わせた行事食を考える
食育計画の内容として、季節ごとの行事に合わせた献立の給食を提供したり、子ども達の手で簡単な調理体験を実践したりするのも良いでしょう。これにより行事と食の関連性を体感でき、理解しやすくなります。
それと同時に旬の食材を用いることで、行事と季節、そして食が結びつきます。行事食で季節に合った食材を食べれば、旬の食材への興味が持て食の楽しみが広がるでしょう。
野菜を育て食へ興味を持たせる
園内の敷地で野菜を育て、その世話や収穫を子ども達に体験させている保育園も多く見られます。野菜を自らの手で育てることは、食材に関する興味を抱かせ子どもの食べる意欲につながるでしょう。
園内に敷地がなくとも、プランターを利用してネギを育ててみたり、容器に水に浸して豆苗などを育てるなど、手軽な方法でも野菜の育ちに関わることができます。子ども達が実際に世話をして野菜の成長を実感することが重要です。
食育だよりを配る
「食育だより」や「給食だより」は、保育園で実施している食育活動の内容や給食の献立に関する情報を発信するツールです。子どもの健全な心と体作りのための栄養管理や、季節に応じた食の話題などに関する情報を提供します。
これらのおたよりは、保育園での食育活動を保護者に知ってもらう目的と同時に、保護者が食育への意識を持ち関心を高める効果をねらっています。家庭での協力がなければ食育の成果は出づらいでしょう。
振り返り次回へ活かす
食育計画表を作成して実践したら、必ず振り返りをすることが重要です。会議で改善点を挙げたり、保育士同士で空き時間に話し合ったりして、次回に活かしましょう。
また、子ども達の状況や社会の変化、食材の調達状況などによって、事前に立案した食育計画が順調に進まない場合もあります。計画途中であっても再計画を練り直すなど、状況に応じて柔軟に対応しましょう。
食育の知識を身につけるのにおすすめの資格
食育計画表を作成するためには、食に対する知識が求められます。ここからは、食育の知識を身につけるためにおすすめの資格を紹介します。
食育に関する深い知識を持った保育士さんが食育指導をすれば、効率よく成果が上がるだけでなく、保護者の信頼を得られやすいでしょう。また、資格を取得することで転職活動が有利に進められるなど保育士さん自身のメリットも期待できます。
幼児食ベーシッククラス
「協会認定 幼児食ベーシックアドバイザー」は日本幼児食協会が認定する資格で、幼児期に得るべき食育や栄養、食物アレルギーと食品添加物などについての基礎知識があることが証明されます。
食育計画表を作成するに当たって、栄養素の知識はもちろん食物アレルギーや食品添加物に関する知識も重要です。
食生活アドバイザー
「食生活アドバイザー」は一般社団法人FLAネットワーク協会が認定する資格で、人が健康に生きるために「生活の一部としての食」について提案ができるスペシャリストです。
出題範囲は、栄養と健康から食文化と食習慣、食品の分類、衛生管理、社会の仕組みなど、食を取り巻く幅広い知識が求められるため、バランスの取れた食育指導が可能になるでしょう。
食育スペシャリスト
「食育スペシャリスト」はNPO法人みんなの食育が認定している資格で、大人・子どもの食育に関する知識に加えて、食事・食育に関する企画力やプレゼンテーション力が身につけられます。
この資格を取得すると食のメニュープランニングが身につくため、食育計画表の作成に適した人材と言えるでしょう。
保育士の業務支援はChild Care System
株式会社 CHaiLD(チャイルド)が提供するChild Care Systemは、保育園運営に必要な書類を作成・管理が効率化できる保育業務支援システムです。
これを導入することにより、食育計画の立案支援など保育士の業務が省力化されるだけでなく、保護者に向けて食育計画表や食育だよりなどのおたよりを電子ツールで配ることが可能となります。
また、保護者とのやりとりをスムーズに行う連絡帳アプリなども備えています。
まとめ
保育園で行う食育は食育基本法や食育推進基本計画に則り、食育計画表を作成しそれを実行していくことが基本です。その中で、大人のように多くの言葉を理解できない子ども達に食事の楽しさや大切さを伝えなければいけません。
食は心身の健康や子どもの成長の基礎となるため、食育指導は保育園で欠かせない取り組みと言えます。正しい知識を持った指導者の元、保育園の食育を通して子ども達の食の基礎を築くために力を尽くしましょう。