保育士の基本的な勤務時間例

勤務時間は基本8時間

朝早くから夜遅くまで子どもを預けられる保育園ですが、保育士の基本的な勤務時間は8時間です。

 

労働基準法第32条では、使用者は1週間の各日については、労働者に休憩時間を除き1日について8時間を超えて労働させてはならないと定められています。そのため、保育士の勤務時間も基本的には8時間に設定されています。

 

また、全国保育協議会が2016年に行った会員の実態調査では、正規職員全体のうち55.3%の保育士が週当たりの実働時間を40~50時間未満と答えています。

 

このことからも、多くの保育士が基本的に8時間程度勤務していると言えるでしょう。

 

【出典】全国保育協議会 会員の実態調査報告書 2016|社会福祉法人全国社会福祉協議会 全国保育協議会

時間帯がシフトにより変動する

すでに紹介したとおり、保育士の基本的な勤務時間は8時間ですが、多くの保育園は朝の7時前後から夜の7時前後の約12時間が開所時間となっています。そのため、ほとんどの保育園ではシフト制による勤務を取り入れています。

 

ただし、シフト制と一口に言っても、完全シフト制、自由シフト制、固定シフト制など様々な形態があります。固定シフト制の場合は、毎日決められたシフトで働くため勤務時間帯の変動は少ないでしょう。

 

早番、中番、遅番にはそれぞれ以下のような特徴があります。

 

早番

早番のシフトは7時頃~16時頃までの勤務が多く、子どもたちを迎え入れる準備が必要になるため開園時間よりも20分ほど早めに到着しなければなりません。出勤時刻が速いため、自ずと退勤時間も早くなるのが早番の特徴です。

早番では早朝預かりの子どもたちの受け入れや、保護者とのコミュニケーションが必要となります。保護者からの報告を担任へ引き継ぐのも早番シフトの職員の仕事です。

 

中番

中番のシフトは8時頃~17時頃までの勤務が多く、保護者が会社に出勤する時間と重なることが多いため、保育士が最も多く配置されている園が多いのが特徴です。多くの保護者が子どもたちを預けに来る時間帯でシフトの中心とも言える時間帯でしょう。

 

遅番

遅番のシフトは10時頃~19時頃までの勤務が多いです。遅番の場合は子どもたちが帰るまで勤務する必要があります。基本的に保育士は8時間労働ですが、全ての子どもが帰るまでが勤務時間となるため、残業も多く変則的です。

 

通常保育後の預かり保育も担当するため、園によっては異年齢保育を行うことが多いのも遅番の特徴です。また、担任からの連絡事項を保護者へ伝える役割も担っています。

 

このように、保育園での勤務時間帯はシフトによって左右されます。得に遅番では、子どもたちのお迎えを待つため変則的と言えるでしょう。もちろん、上記は一例のため保育園が完全シフト制なのか、自由シフト制や固定シフト制なのかによっても変わります。

 

以下では、保育士のシフト例をご紹介します。

早番7時~16時
中番8時~17時
遅番10時~子どものお迎え完了まで

 

休憩時間は基本1時間

労働基準法第34条では、使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合においては少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならないと定められています。

 

保育士においても、休憩時間は基本的に1時間設けられています。

 

一般的には、休憩時間を昼食の時間に取ることが多いですが、保育士の場合は昼食は子どもたちを見守りながら一緒に食べる必要があります。そのため、保育士の休憩時間は子どもたちの対応が比較的少ない午睡の時間に取ることがほとんどです。

 

しかし、実際は本来休憩時間である午睡の間も子どもの見守りをしている保育士がほとんどです。子どもたち全員が眠れるわけではないため、眠れない子どもや泣いてしまった子どもの対応もしなければなりません。

 

また、見守りや子どもの対応のほか、連絡帳や日誌、配布物の作成といった事務作業を休憩時間に行うことも多々あります。園によっては休憩時間中に職員会議や打ち合わせを行うこともあると言われています。

 

多くの職場では、休憩時間は自由に外出や離席することも可能ですが、保育士の場合は突発的な事故などに備えなければならないとして外出を禁止している園も多いのが現状です。

 

本来、休憩時間は地涌に利用できると法律で定められていますが、実際は多くの制約の中で休憩時間を使用しているのが現状です。

 

【出典】労働基準法 第4章 労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇|安全衛生情報センター

残業は月4~5時間

厚生労働省が2019年に行った賃金構造基本統計調査では、保育士の残業時間は月に4時間程度であると言われています。

 

しかし、実際は行事の前は事前準備などで残業が多くなるほか、指導案や制作物などを日頃から持ち帰ってこなしている保育士が多いため、実際にはさらに多くの時間を残業に当てています。

 

保育士は子どものお世話や遊び相手、日々の保育を行いながら、突発的なけがや病気などに対応しなければならないため、事務作業が後回しになってしまうことが多々あります。

 

子どもの個人情報が詰まったものは持ち帰りできないことがほとんどで、溜まった仕事を園内でサービス残業としてこなすことも少なくないのが現状です。

 

厚生労働省が行った調査では、仕事の持ち帰りやサービス残業の時間は含まれておらず、実際の残業時間は40~60時間にのぼると言われています。ただし、保育士の数が多い園や開所時間の短い園などでは、ほとんど残業がないこともあります。

 

【出典】賃金構造基本統計調査 |e-Stat

勤務形態によって勤務時間は変わる

短時間正社員の場合

保育士には短時間正社員という雇用方法があります。短時間正社員とは、フルタイムの正社員よりも所定の労働時間や日数が短い正規雇用の労働者のことを指します。

 

短時間正社員は、家庭の都合で長時間働けない保育士などが働きやすくするための仕組みであり、労働時間は基本的にフルタイムの正社員よりも短くなっています。

 

また、時間当たりの基本給や福利厚生はフルタイムの正社員と同様に設定されています。

 

【出典】保育士等に関する関係資料|厚生労働省

フルタイムの正社員の場合

保育士のフルタイム正社員では、すでに紹介したとおり1日8時間勤務が基本です。また、フルタイムの正社員は週5日の勤務を基本としており、残業時間も月に4~5時間あります。

 

フルタイム正社員は、指導計画や行事の準備、日々の保育の準備など多くの業務を担っています。加えて、セミナーや研修などに参加することもあり、多忙なスケジュールであることがほとんどです。

 

【出典】保育士等に関する関係資料|厚生労働省

派遣社員の場合

保育園では、派遣社員として勤務する保育士も多くいます。派遣社員とは、人材派遣会社との契約を通して保育園に派遣されて業務にあたる働き方のことを指します。

 

派遣社員にはの労働者派遣法によって定められた期間制限のルールがあり、同じ派遣先で3年以上働くことができません。

 

派遣社員はシフト制で働くようになっており、時給はパートやアルバイトよりも高く設定されていることが多いです。ただし、正社員のようにボーナスなどはありません。

 

【出典】派遣で働く皆様へ |厚生労働省・都道府県労働局

アルバイト・パートの場合

アルバイトとパートはそれぞれ呼称が異なりますが、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律において、この2つは同様の扱いとなっています。

 

この法律では、短時間労働者(パートタイム労働者)は、1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて、短い労働者のことを指すと定められています。

 

保育士では、パートで雇用された場合はフルタイムでシフトに入ることが多く、アルバイトで雇用された場合は自由に時間を決められることがほとんどでしょう。

 

【出典】パートタイム労働者とは|厚生労働省

【出典】短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律|e-GOV法令検索

休憩時間は確保しにくい?

 

すでに紹介したとおり、労働基準法では労働時間が6時間を超え8時間以下の場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩を取らなければならないことになっています。

 

しかし、保育士の休憩時間は子どもたちが午睡している間にあてられ、休憩せずに泣いている子どものお世話や寝ている子どもの見守り、連絡帳の記入などの事務作業に取り組まなければならず、休憩時間が取りにくいのが現状です。

 

保育士の仕事は体力勝負なので、しっかり休憩時間を確保して集中力や体力を回復させるべきですが、ほとんどの場合は休憩時間も仕事をしなければならない状況です。

 

本来、休憩時間は労働者が権利として労働から離れることが保障されていなければならないため、どうしても休憩時間がとれない場合は上司などに相談するとよいでしょう。

 

【出典】労働基準法 第4章 労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇|安全衛生情報センター

休憩時間確保のポイント

勤務体制や配置の見直し

休憩時間を取ることが法律で決められていても、休憩を取りにくいのが保育士の現状です。保育士がしっかりと休憩時間を確保できるようにするためには、勤務体制や職員の配置の見直しが不可欠です。

 

職員1人1人の勤務時間や抱えている業務内容を把握し、慌ただしい時間を避けながら交代で休憩できるように、勤務体制や職員の配置を見直すと良いでしょう。

 

パートやアルバイトの職員の出勤時間を調節すれば、正社員の職員の休憩時間を確保することができます。

 

【出典】労働基準法 第4章 労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇|安全衛生情報センター

休憩に入りやすい雰囲気作り

保育士の仕事は多忙であるため、他の職員が忙しく働いている中で休憩に入ることに申し訳なさを感じる保育士も少なくありません。そのため、休憩に入りやすい雰囲気を積極的に作ることで、誰でも休憩に入れる、休憩をとれることが当然な環境を整えられるようになってきます。

 

具体的には、主任保育士や年長者が積極的に休憩に入り、別の職員に休憩を促すなどの方法があります。職員同士でお互いの休憩時間を把握していれば、積極的に声掛けをして休憩に送り出すことも可能です。

ICTシステムの導入

すでに紹介したとおり、保育士の業務は子どもたちのお世話だけではなく、連絡帳や行事の準備や事務作業などと多岐にわたり、満足に休憩時間を確保できないことも多々あります。休憩時間を確保するためには、保育士1人1人の業務量を減らすことも大切です。

 

保育士1人1人の業務量を減らすための具体策として、事務作業などの業務の効率化を図るために、保育のICTシステムの活用を検討すると良いでしょう。

 

ICTシステムを活用することで、保護者へのお知らせの配信や園児の情報管理、職員の業務管理など様々な業務の効率化を図ることができます。

ICTシステムの導入ならChild Care System

 

Child Care Systemとは、株式会社CHaiLDが開発・提供を行っている、保育園・認定こども園・幼稚園向けのICTシステムを提供しているサービスです。

 

登降園管理、日誌作成、連絡帳アプリ、午睡チェックセンサーなどの機能があり、園児の保護者との連絡も可能です。只今アップデート中のシフト作成機能は、出勤時間と園児の年齢に合わせた登降園時間を照らし合わせることで最適な保育士配置人数の自動計算を行うことができるようになります。

 

Child Care Systemでは、サポート相談窓口が様々な相談に乗っているため、パソコンなどの機器に慣れていない場合でも安心してご利用いただくことができます。

 

まとめ

保育士の雇用形態は、フルタイム正社員や短時間正社員、パートやアルバイトなど様々で、雇用形態によって労働時間も異なります。特にフルタイム正社員の場合は、多くの業務を担っていることから休憩時間を確保しづらく、持ち帰りでのサービス残業も多いというのが現状です。

 

職員がしっかりと休憩時間を確保することは、職員の権利であり集中力や体力の回復、リフレッシュにも繋がります。勤務体制の見直しやICTシステムの導入などを利用して、より良い環境で保育できるように働きかけることが重要ではないでしょうか。

 


参考文献

 

厚生労働省

保育士等に関する関係資料

厚生労働省・都道府県労働局

派遣で働く皆様へ

厚生労働省

パートタイム労働者とは

社会福祉法人全国社会福祉協議会 全国保育協議会

全国保育協議会 会員の実態調査報告書 2016

安全衛生情報センター

労働基準法 第4章 労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇

e-Stat

賃金構造基本統計調査

e-GOV法令検索

短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律