毎年4月に作成しなければならない年間指導計画ですが、新人の保育士さんや初めて受け持つ年齢の担任になった保育士さんは、作成に頭を悩ませるケースも少なくありません。
年間指導計画は1年間の保育に見通しを立てて、子どもの発達を促すことを目的とした重要な書類です。
今回は、年齢別の年間指導計画の書き方や年間指導計画作成時のポイント、注意点、書類作成におすすめのサービスについて解説していきます。
年間指導計画とは?
保育園の年間指導計画とは、毎年4月に作成される計画で以下のような内容で構成されています。
・年間目標
・ねらい
・行事
・園児の姿
・養護、教育
・環境構成、援助、配慮
・子どもや保護者への支援
年間指導計画を作成する際には、前年度の子どもたちの様子を踏まえて、今後1年間でどのように成長してほしいかを考えることが求められます。
年間指導計画のフォーマットは保育園によって多少異なりますが、書かなければならない内容にほとんど差はないため上記の内容を参考にしてください。
年間指導計画の作成理由は?
年間指導計画の作成については、保育所保育指針で定められています。
保育所保育指針には、保育の目標を達成するために各保育所の方針や目標に基づいて、子どもの発達過程を踏まえた全体的な計画を立てなければならないと記されています。
また、計画についても保育の内容が組織的、計画的に構成され、園生活の全体を通して、総合的に展開されるような計画を作成する必要があると記されているのです。
子どもの成長は日々、あらゆる状況で見られるため、全体的に把握できるような計画の作成が必要になります。
年間指導計画作成時のポイント
保育園の年間指導計画を作成する際には、いくつかのポイントがあります。ポイントを押さえることができれば、スムーズに年間指導計画を作成することができるでしょう。
以下で、年間指導計画作成時のポイントについて確認していきましょう。
- 先輩保育士さんを参考にする
- 「保育所保育指針」の留意事項をチェックする
- 「保育所保育指針解説」を参考にする
先輩保育士さんを参考にする
保育園によって、力を入れている活動やねらいの方向性が異なることがほとんどです。例えば、英語教育に力を入れている園や運動に力を入れている園、リトミックに力を入れている園などそれぞれの園で特徴は異なります。
そのため、保育のねらいや活動の展開のしかたなどをより具体的にイメージできるように、先輩保育士さんの年間指導計画を参考にすると良いでしょう。
さらに、書き方や意識するポイントなど具体的な事柄について質問すれば、多くのことを学べるのでおすすめです。
「保育所保育指針」の留意事項をチェックする
保育所保育指針では、基本的な保育の考えかたや保育内容について、留意事項として定められています。
例えば、3歳未満児についてはそれぞれの生育歴や心身の発達などに沿って、それぞれに合った計画を作成する、違う年齢で分けられたクラスやグループ活動は、それぞれの生活や経験、発達過程を把握し、適切に援助・環境作りするように配慮する、などと記載されています。
年間指導計画を作成する際には、これらの留意事項について理解したうえで作成することが大切になるでしょう。
「保育所保育指針解説」を参考にする
すでに解説しましたが、保育所保育指針には基本的な保育の考え方や保育内容について明記されています。そのため、年間指導計画を作成する際には、保育所保育指針の内容を理解し、参考にすることが大切です。
保育所保育指針を参考にするうえで、上手く文章をまとめられない場合や言い換えができない、フレーズが浮かばない場合は、保育所保育指針をより具体的に解説した保育所保育指針解説を参考にすると良いでしょう。
保育所保育指針解説を参考に、園の特徴を織り交ぜながら年間指導計画を作成してみてください。
【年齢別】年間指導計画の書き方
保育園では1年を通して様々な行事が行われるため、1年を4期に分けて年間指導計画を作成するケースが多くなっています。
4期に分けることで、その季節でやりたい事や子どもたちに学んでほしい事、それらを通して予想される子どもの姿、保育士の行動やそれに伴う準備期間などの見通しを立てやすくなります。
また、真っ白の状態から作成するのではなく、園のテンプレートを活用することも重要です。保育園によっては1年を3期に分けるケースもあるため一度確認しておきましょう。
年間指導計画を作成する際には家庭や地域との連携も計画に組み込み、さまざまな人と関わる機会を作りましょう。家庭や地域と連携することで、社交性や協調性を伸ばすことができます。
0歳児の場合
0歳児の年間指導計画は、以下のような内容になります。
・年間目標
保育者とのふれあいを通して信頼関係を築く
個々の生活リズムを尊重して、安全な環境下で快適に過ごす
・0歳児1期行事
入園式、身体測定、誕生日会
・ねらい
個々の生活リズムを把握して保育者との信頼関係を築き、安心して過ごす
・子どもの様子
空腹やおむつの不快感などを、泣いて知らせる
音のなる方を見たり、あやすと微笑んだりする姿が見られる
・環境構成や保育士の援助
安全に遊べる環境を整える
柔らかい音のなるおもちゃなどを使って、興味を促す
このように、年間を4期に分けてそれぞれの行事やねらい、子どもの様子などについて記載しましょう。
1歳児の場合
1歳児の年間指導計画は、以下のような内容になります。
・年間目標
多くの経験から身の回りの事柄に興味を持ち、探索活動を行う
保育者との信頼関係を築き、自分で挑戦する気持ちを持つ
・1歳児1期行事
入園式、進級式、健康診断、誕生日会
・ねらい
保育者との信頼関係を構築することで情緒が安定し、好きな遊びを楽しむ
・子どもの様子
不安から、登園時に泣く姿が見られる
園生活に徐々に慣れ、保育者とのふれあいや好きな遊びを楽しむ
・環境構成や保育士の援助
新しい環境に慣れるように、優しく声掛けを行う
子どもが楽しめるような制作やおもちゃを用意し、園生活の楽しさを伝える
上記は1歳児1期の例ですが、このように年間を4期に分けてそれぞれの期の行事やねらい、子どもの様子などについて記載しましょう。
2歳児の場合
2歳児の年間指導計画は、以下のような内容になります。
・年間目標
保育者の適切な援助を受け、基本的な生活習慣を身につける
園生活を通して、物事や友だちへの関心を広める
・2歳児1期行事
入園式、進級式、健康診断、誕生日会
・ねらい
新たな環境に慣れ、好きな遊びを楽しむ
・子どもの様子
不安から、登園時に泣く姿が見られる
排せつや食事など、身の回りのことを自分で行おうとする
保育者との遊びや友だちとの交流を楽しむ
・環境構成や保育士の援助
個々の発達状況に応じて、基本的な生活習慣が身につくように援助する
楽しく食事ができる雰囲気を作る
定期的に排せつの声掛けを行う
上記は2歳児1期の例ですが、このように年間を4期に分けてそれぞれの期の行事やねらい、子どもの様子などについて記載しましょう。
3歳児の場合
3歳児の年間指導計画は、以下のような内容になります。
・年間目標
言葉や動作を通して挨拶をし、園のルールを守って生活する
保育者や友だちとの関係を通して、自分の気持ちを表せられるようになる
・3歳児1期行事
入園式、進級式、健康診断、誕生日会
・ねらい
新たな環境に慣れ、保育者や友だちとの関わりを楽しむ
・子どもの様子
新しい環境に戸惑いながらも、好きな遊びを見つけて楽しむ姿が見られる
排せつや食事など、身の回りのことを自分で行おうとする
保育者や友だちに対して関心を持ったり、友だちの手伝いをしたりする
・環境構成や保育士の援助
個々の発達状況に応じて、生活リズムを整えられるように援助する
食べ物に興味が持てるように、食事の楽しさや美味しさを伝える
園児同士で興味が持てるような遊びを考える
上記のように、年間を4期に分けてそれぞれの期の行事やねらい、子どもの様子などについて記載しましょう。
4歳児の場合
4歳児の年間指導計画は、以下のような内容になります。
・年間目標
安全で保健的な環境下で、個々の欲求を満たしながら快適に園生活が送れるようにする
自分の気持ちを表現したり相手の気持ちを考えたりしながら、園児同士で楽しむ
・4歳児1期行事
入園式、進級式、健康診断、誕生日会
・ねらい
「~してあげたい」「~したい」という欲求を汲み取り、実際に挑戦することで達成感や喜びを分かち合う
子どもの発見や気づき、楽しむ気持ちに共感しながらやり取りを楽しむ
・子どもの様子
新しい環境や保育者に少しずつ慣れて安心して過ごす姿や、緊張して自己発揮できない姿が見られる
自分の気持ちを上手く表現できずに泣く、物を投げるといった姿が見られるが、代弁することで嬉しそうにする
・環境構成や保育士の援助
新しい環境に少しでも早く慣れるように、個々の様子を気にかけて適宜援助する
言葉で表現しようとしているときは時間をかけて見守り、必要があれば援助する
上記のように、年間を4期に分けてそれぞれの期の行事やねらい、子どもの様子などについて記載しましょう。
5歳児の場合
5歳児の年間指導計画は、以下のような内容になります。
・年間目標
自分でできることを増やしながら、態度や生活習慣を身につける
自分の気持ちを様々な表現で伝える
自然や身近な物事に興味関心を持ち、探求心や好奇心を高める
・5歳児1期行事
入園式、進級式、健康診断、誕生日会
・ねらい
新たな環境に戸惑う子どもが多いため、園生活を通してやりがいを感じられるように何かをするときには褒めることで子どもを認め、情緒を満たす
植物や昆虫の世話を通して、愛着や命の変化を感じられる環境を作る
・子どもの様子
緊張していた子どもも少しずつ発言が増え、園生活を楽しむ姿が見られる
自分たちで植えた花のお世話を、園児同士で声を掛け合いながら積極的に行う
・環境構成や保育士の援助
新しい環境に少しでも早く慣れるように、個々の様子を気にかけて園児同士での関りが持てるように声掛けを行う
気持ちをなかなか表現できない場合は代弁することで気持ちを受け止め、気持ちを伝えることへの満足感を得られるように援助する
上記のように、年間を4期に分けてそれぞれの期の行事やねらい、子どもの様子などについて記載しましょう。
書類作成なら保育ICTシステムでスムーズに
保育士の業務は子どもの見守りや世話だけでなく、行事の準備や年間指導計画の作成など多岐にわたります。少しでも保育士の業務負担を減らすためにも、保育ICTシステムの導入を検討することがおすすめです。
保育ICTシステムのChild Care Systemは、特許を取得しているシフト作成やスムーズに保護者とやり取りができる連絡帳アプリ、午睡センサーといった様々なサービスを展開しているシステムです。
保育園や幼稚園など950施設に導入実績があり、年間2600時間分の業務を削減してくれると言われています。書類作成の時間を削減し、子どもと関わる時間をより多く確保できるというメリットもあります。
まとめ
保育園の年間指導計画は、保育所保育指針で作成を定められていて、子どもの成長を全体的に把握するために欠かせないものです。
年間指導計画を作成する際には、先輩保育士が作成した年間指導計画を参考にする、保育所保育指針の留意事項を理解する、保育所保育指針解説を参考にすることでスムーズに作成することができます。
また、年間指導計画は基本的に4期に分けて作成されるため、各期で意識したい行事などを織り込みながら作成しましょう。園のテンプレートを活用すれば、時間短縮にも繋がります。より業務効率を上げたい場合は、保育ICTシステムの活用を検討してみてください。
紹介した記入例やポイントを参考に、子どもたちの姿を思い描きながら年間指導計画の作成をしてみましょう。