保育システムって業務時間を減らすモノ?

保育業界のICT化が進められてはや数年が経ちました。これまで自治体に手書きで提出していた監査書類をPDFデータで提出できるようになったり、保護者に手書きで登園降園時間を記録してもらっていたのがタブレットにタッチするだけで記録できるようになったりと、保育園の日常は変わりつつあります。これらの保育業界向けのシステムは、保育園のアナログな部分、人が行わなくてもよい業務を見直し開発された経緯があり、いまでは20種類以上の保育システムがSaaSで提供されていす。
これを読んでいる多くの皆さんは、手書きの業務をなるべく減らして、子どもたちに向き合う時間を作りたいと考えていることと思います。
たくさんある保育システムのなかから1つを選ぶ前に知ってほしい、SaaSとは何か、保育業界特有の課題について、まとめました。

業界の課題を掘り下げて解決するバーティカルSaaS

SaaSとは何か?

クラウドでソフトウエアを提供するSaaS(サース、Software as a Serviceの略)。SaaS はおおまかに2種類にわけることができます。
1つは、顧客管理や勤怠管理をはじめとする経理や労務などの課題を、業界を問わず解決するホリゾンタルSaaS(業界横断型)、もう1つは、業界特有の課題を掘り下げて解決するバーティカルSaaS(業界特化型)です。
バーティカルSaaSは、医療業界・建築業界・飲食業界などの深刻な労働力不足を解消するためのニーズが導入のきっかけとなっています。例えば、薬剤師が全患者の服薬状況からフォローが必要な患者を検知するアプリや、建築会社向けの図面の共有サービスなどがこれにあたります。
では、改めて、保育業界特有の課題とは何でしょうか?

保育業界“特有”の課題とは?

これまで注目されてきたのは保育業界の業務量の多さ

保育業界の課題は、少子化、待機児童、保育士不足、潜在保育士、業務量の多さ(持ち帰り残業)など、思いつくだけでもたくさんあります。さきにも紹介しましたが、これまでは「業務量の多さ」に注目されることで、書類作成の時間を短縮するために多くの例文を用意したり、何度も同じことを書く部分は自動転記したりと手書き文化の見直しが行われてきました。このように従来の保育システムは業務効率化をメインとして勤怠管理や書類作成の効率化をするものなので、これは業界特有の課題を解決するバーティカルSaaSとは言えません。エクセルでもできる転記や計算を、手書きに慣れている人たちに向けて扱いやすくしたホリゾンタルSaaSの一例と言えます。

保育業界特有の課題は、保育のプロだからこそ悩む○○!

保育の専門性は「1人ひとり違う子どもを理解し寄り添った適切な援助を行うこと」にあります。保育士は、子どもの発達段階に合わせた配慮をして、家庭では実現できない集団生活の中で、子どもの主体性や自立心を育むプロです。こうした保育のプロである現場の保育士が悩む課題の1つに、クラス運営の難しさが叫ばれています。
少子化の一方で、障害を抱える子どもの数は年々増えています(グラフ:文部科学省「特別教育支援資料(令和元年度)」)。子どもが0歳で入園したときは、その子に障害があるかどうかはわかりませんが、3歳児検診の頃から周囲の子と比べて発達に気になる部分が見られてくる子が出てきます。このように、子どもによって発達段階が異なってくる中で、1つのクラスを運営していくには、1人ひとりの子どもの発達の特性を見極める必要があることから、ベテラン保育士でも、手探りで模索しながら保育をしているという現実があります。

保育業界特有の課題を解決した先に待つ「保育を楽しく!」

当たり前のことですが、子どもたちは1人ひとりが違います。こうした中で、子どもたちの障害の有無に関わらず、担当するクラスの子ども1人ひとりの発達の傾向を可視化し、園内で共有することによって、今よりももっと色々な角度から保育ができると思うとワクワクしてきませんか?こうした子どもの可能性を広げるのがデータ解析による発達の分析です。
保育園を運営する私たちは、クラス運営の難しさを解決するために子どもの発達を可視化することは絶対に欠かせない機能だと信じており、現在開発を進めています。(興味のある方は、お問い合わせください!)

【まとめ】保育業界のバーティカルSaaS

バーティカルSaaSとホリゾンタルSaaSは、どちらが優れているということではなく、それぞれの解決する課題が異なるということにすぎません。実際に、私たちが提供しているChild Care System(保育園・幼稚園向けICTシステム)も現時点ではホリゾンタルSaaSで、手書き業務をデジタル化する一通りの機能は揃っています。今後バーティカルSaaSを目指して保育業界の課題と向きあい、さらなる開発を進めていきます。


参考文献:
厚生労働省子ども家庭局保育課 保育を取り巻く状況について
厚生労働省 令和元年度 保育士の業務の負担軽減に関する調査研究 事業報告書
東京都 平成30年度東京都保育士実態調査報告書
ITビジネスオンライン 「【解説】バーティカルSaaS 国内でも盛り上がりの兆し」 
文部科学省 特別教育支援資料(令和元年度)