保育園に寄せられる苦情には幅広い種類がありますが、中には自己中心的な保護者の主張も少しずつ目立つようになってきています。
苦情を寄せられたときにどのような対応をするかによって、保護者との関係性が変わったり、問題が大きくなったりすることもあるので注意が必要です。
この記事では苦情に対する保護者の心理や向き合い方、保育園に多く寄せられている苦情への対処方法などについて詳しくまとめました。
保育園に苦情を言う保護者の心理とは
子どもを保育園に預ける保護者は共働きで忙しいことが多く、日中の長い時間を我が子と離れて過ごします。目の届かない場所で過ごしている子どもに対して過度に心配してしまったり、子どもを思うあまりに保育園の対応が気になったりする人も多いです。
また、子育てと仕事を両立することで多忙を極め、心の余裕がなくなってしまった結果、保育園に気持ちをぶつけてしまうというケースもあります。
もちろん保育園側の対応が悪かったという、明らかな過失に基づいた苦情もありますが、保護者の心理面が大きく関わっている苦情も多く寄せられているのが現状です。
保育園に入りやすい苦情・クレームの種類
保護者から保育園に寄せられる苦情は、小さなことから大きなことまで内容は実にさまざまです。中には、保育園の管轄外のことで苦情が寄せられるケースもあります。
保育園に寄せられやすい苦情は、園の運営方針に関することや、保育士の対応についての内容が多いようです。また苦情を訴えることによって、過剰な要求を通そうとする保護者も目立つようになりました。
近年ではストレスを抱える保護者が増加傾向にあり、それに伴って苦情対応も難しくなってきています。ここからは保育園に入りやすい苦情やクレームの種類についてさらに詳しく見ていきましょう。
保育園へのクレーム
・園児達を頻繁に公園に連れて来るため、自分の子が遊びたい遊具で遊べない
・送迎の時間がピークになると車を停める場所がない
・寒い(暑い)のになぜ外で遊ばせるのか
・保育園で遊んでいる子どもの声がうるさい
・園庭の落ち葉が道路側に大量に落ちていて汚い
保育園には園児の保護者だけでなく、地域の人からのクレームも多く寄せられます。保育園は地域に根差した子育て拠点としての一面もあり、地域の人にとっても親しみを持てる場所であることが望ましいです。
しかし園に対してクレームを寄せてくる人は通りすがりや、匿名電話で一方的に話して切る人なども多く、説明の機会を持ったりコミュニケーションを取る手段がほとんどありません。
保育園に対するクレームを受けたときは、なるべく速やかに対応するよう心掛け、改善の姿勢が地域の人にも伝わるようにすることが大切です。
保育士へのクレーム
・話をちゃんと聞いてもらえなかった
・子どもの荷物を他の園児と入れ間違っていた
・迎えの時間を伝えていたのに忘れられていた
・毎日洗い物が多い、なぜこんなに服が汚れるのか
・家に帰ったらオムツが濡れていた。ちゃんとチェックしてくれているのか
・しつけが厳しすぎる
保護者は保育士に対して、子ども1人1人にしっかり向き合った対応を求めています。もちろん保育士は保護者のニーズをしっかり理解した上で、子どもの成長に合わせた保育を提供しなければなりません。
しかし保護者とのコミュニケーションが不足していると、保育に対して保護者が一方的に悪い方向に考えてしまうことや、不安が次第に不信感に変わってしまうなどクレームの種ができてしまうのです。
保育士に対するクレームには、保護者との信頼関係が大きく影響していることを忘れてはいけません。
理不尽なクレーム
・夜なかなか寝付けなくなるので、あまり昼寝をさせないで欲しい
・家族の行事と日程が重なっているので、行事の日を変更して欲しい
・給食の献立が苦手な食べ物なので、量を減らしておやつを増やして欲しい
・保育園ではトイレの頻度を増やすなどして、パンツで過ごさせて欲しい
・家でお風呂に入るのを嫌がるので、園で毎日沐浴させて欲しい
保育園に対して自分の子どもを優遇させるような要望を訴えてきたり、集団生活という基本的な枠組みから逸脱している要求を通そうとしてくる保護者もいます。このような理不尽とも思えるクレームは増加傾向にあるとされており、頭を悩ませる保育士も多いのが現状です。
クレーム対応のためとはいっても、保護者の要求を全て叶えられるわけではありません。園の運営方針から外れないよう、きっちり線引きをした上での対応を心掛けることが大切です
保育士への苦情・クレームが起きる原因とは
誤情報の拡散・保護者の不安
最近では一部の悪質な保育園による、ずさんな管理体制や保育方法などが、メディアなどでも頻繁に取り上げられるようになりました。
中には虐待や事故など、命に関わるような問題もあり、不安要素として保育園に対する保護者の見方も厳しくなっているといえます。
一部の悪質な保育園がクローズアップされやすい中で、保育園全体の在り方が問われる形となっており、保育園は決して安全ではないという誤った認識を持つ人が増えているのです。
保育園に子どもを預けている保護者は、子どもと離れて過ごす時間が長く、保育現場の様子を実際に見ているわけではありません。不安材料となる情報だけがひとり歩きしてしまい、疑心暗鬼に陥ってしまうことも十分考えられます。
子育ての相談ができない
育児に対する孤独感や、子どもの発達に対する不安感が募る一方で、ぶつける場所が周りにないため保育園に感情を発散させてくる保護者もいます。
核家族化や近所付き合いの希薄化など、相談できる人がいないという孤独感の中で、育児に励んでいる保護者も少なくありません。
特に保育園に子どもを預けている家庭は、両親ともに長時間の労働をしながら子育てにも追われており、心身ともに疲労が溜まりやすい状態になっています。
周りに話を聞いてくれる人も、サポートをしてくれる人もいない状況では心の余裕もなくなってしまうのです。
また保育園は単に子どもを預かるだけの場所ではなく、子育てを支援する場所でもあり、保護者が気持ちをぶつけやすい場所でもあるのです。保護者がクレームを訴えてくる背景には、子育てに関する悩みを抱えていることも1つの原因となっています。
子どもを大切に思っている
子どもを過度に大切に思うがゆえにクレーマーになってしまう保護者もいます。それというのも、日本の少子化問題が深刻化の一途を辿っているからです。
2020年の出生数は約85万人と2年連続で90万人を下回り、2021年には約81万人まで減少しています。2022年の出生数はさらに減少することが懸念されていています。それに伴い1人っ子の家庭も増えており、初めて育児をする保護者の割合も高くなってきています。
さらに少子高齢化という背景もあるため、1人の子どもに対する保護者の思いがますます強くなっているといえます。我が子を大切にしたい思いが強くなりすぎて、過剰に心配してしまいあれこれ口出ししたりといった行動につながっているのです。
保育園側に不満があるというよりは、子どもへの心配や不安がクレームにつながっていることも多いので、保護者の気持ちに寄り添う姿勢が求められます。
保護者からの苦情・クレームへの対処法
保護者から苦情やクレームが来た場合は、速やかに対応することが得策です。従業員教育を徹底するだけでなく、苦情対応窓口を設けるなど、保護者に向き合う姿勢を大切にすることが肝心です。
対応の仕方によっては、保護者の感情を逆撫ですることにもつながるので、誠意を持って対応しましょう。以下にポイントをまとめたので参考にしてみてください。
・保護者の話が終わるまで、話を遮らずに最後まで聞く
・共感の姿勢を心掛け、保護者の思いを受け止める
・無理難題な要望に対しては、別の対策を提案をしてみる
・謝罪をするだけではなく、今後の対応についてしっかり話す
・個人の問題としてでなく、保育園全体の問題として職員間で共有する
よくある保育園への苦情・クレーム事例一覧
実際の保育現場において、とりわけ多く寄せられる苦情やクレームの内容には、どのようなものがあるのでしょうか。
頻度の高い苦情やクレームの内容を知っておくことによって、保護者が保育園に強く求めていることを把握できる他、あらかじめ対応方法や対策を考えておくことにも役立ちます。
ここからは保育園に多く寄せられる苦情やクレームの事例について、ケースごとに紹介していきます。内容を参考にしながら、保護者対応に役立ててください。
行事
「なぜうちの子は脇役なのか、発表会の配役に納得できない。もっと目立つ役をやらせて欲しい。」
このようなクレームを寄せてくる保護者は多く、立ち位置なども同様の理由でクレームの原因なりやすいといえます。
保護者は行事の様子から普段の園生活を連想するので、自分の子がいつも後回しにされているのではないかと感じたり、可愛がられていないのではないかという不安がクレームにつながりやすくなります。
このような場合は、役決めの経緯や行事を行う意味などを丁寧に説明して、子どもを不当に扱っていないことを理解してもらう必要があります。
子どものケンカ
「ブランコの順番待ちで順番抜かししようとする子がおり、抜かされた子が抜かした子を押し退けたところ、抜かした子の保護者がうちの子がいじめられたと訴えてきた。」
保護者からこのようなクレームが寄せられたときは、納得のいく事情を説明することが大切です。喧嘩が起こった理由をなるべく詳しく説明し、一方的に相手の子を責められる状況ではないことを理解してもらうようにしましょう。
保育の現場ではほんの些細なことでも子ども同士の喧嘩につながります。喧嘩の経緯を細かく伝えられるように、普段から子どもの様子をよく見ておくことが重要です。
子どもの怪我
「保育園から帰ってきたら膝を擦りむいている」
このような事例も保育園では頻繁に寄せられるクレームの1つです。ここでまず大切なのは、子どもを負傷させてしまったことに対して謝罪することです。例え小さな怪我であったとしても、子どもが怪我をしていることは事実であり、防げなかったことを謝罪して誠意を伝えしょう。
謝罪を後回しにしてしまうと言い訳がましくなり、保護者を余計に苛立たせてしまう原因になるので注意が必要です。保護者の言い分もしっかり聞いて、気持ちがある程度落ちついてきたら、怪我をした状況や理由などを詳しく説明してください。
保育士への要求
「子どもが他のクラスの担任を気に入っているので、担任の先生を変えて欲しい」
保護者の中にはこのように受け入れるのが難しい要求をしてくる人もいます。クレームの範囲を超えて、単なる我が儘のような要求をしてくる保護者が年々増えてきているのです。
クレーム対応の方法は、保護者の要求を全て受け入れることだけではありません。ときには保護者に交渉して、譲歩してもらうことも大切です。
ここまでという明確な線引きの元で、保育士がフォローする部分と家庭で協力をお願いする部分を、しっかり話し合っていくことが大切です。保育士側が歩み寄る姿勢を示すことで、理解を得られることにもつながります。
保護者からの苦情・クレームを防ぐ方法
保護者からの苦情やクレームを未然に防ぐには、信頼関係をしっかり築いておくことが大切です。保護者が苦情やクレームを保育園に寄せてくる理由には、前提として不安や不満があります。
日頃から保護者とのコミュニケーションをしっかり取るなどしておくことで、些細なことでも保育園側に話しやすくなる利点があります。さらに連絡帳を活用することで、日頃の子どもの様子が保護者にも伝わりやすく、大きな安心材料になります。
保護者の苦情やクレームは、保育園にとって不利益なものばかりではなく、保育園の運営をより良くするためのヒントが含まれていることも多いです。苦情やクレームが寄せられたときは、まず保護者の話をしっかり聞く姿勢を大事にしてください。
送迎時などで保護者と顔を合わせるときには、明るい挨拶や笑顔で対応するように心掛けながら、何でも話せる信頼関係を作りましょう。
保育園と保護者をつなぐ連絡帳アプリ
保育園と保護者の連携を密にして、信頼関係を強くするためには、専用の連絡帳アプリを使うのもおすすめです。
株式会社CHaiLDが提供しているChild Care System(チャイルドケアシステム)は、アプリによって子どもの様子を保育園と家庭で共有できるだけでなく、連絡帳のように伝達事項をリアルタイムに伝え合うこともできます。
多忙な保育現場では、送迎時に保護者から聞いていた連絡事項を忘れてしまったり、職員間で共有していなかったりというトラブルが起こりがちです。連絡帳アプリを使うことで、保護者からの連絡を職員間に一斉に伝えられる上、内容を忘れる心配もありません。
連絡帳アプリは伝達事項を気軽に保育園に連絡できるため、保護者の安心感や信頼感につながり、保育士の心にもゆとりが生まれます。クレーム減少のためにも一度検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
保育園に寄せられる苦情やクレームの中には、対応が難しいものもたくさんあります。対応に困ったときは自分だけで解決しようと無理はせず、目上の人に相談したり複数人で話し合ったりすることが大切です。
理不尽なことを要求された場合は保護者に歩み寄る姿勢を持ちながらも、安易に何でも受け入れないように注意してください。保育園に寄せられる苦情やクレームへの正しい対処法を知って、保護者にとって安心と信頼を置ける保育園を目指しましょう。