様々な課題を改善する保育ICTとは
ICTとはInformation and Communication Technology(情報伝達技術)を略したものです。中でも「保育ICT」はインターネットを活用し、保育計画や登降園管理、シフト管理などさまざまな保育に係る業務を効率化するシステムを指します。
経済産業省では保育ICTの活用で、保育現場の業務時間削減に大きく寄与できると試算しており、保育士の負担軽減や人材不足問題解消への活路として期待されています。
また、ICTの導入によって保育記録をデータ化することで、幼児教育施設から小学校、中学校、高校に至るまで成長記録や学習履歴を引継ぎ、一貫した教育が可能になります。
1人の児童の長期的な育成につながり、よりよい教育体制が整えられるメリットもあり、政府は幼児教育や保育の現場にICT化を推奨しています。
保育ICT導入のメリットは業務時間の削減?!
経済産業省の試算では保育ICTシステムの導入で、1カ月あたり77.5時間を削減できるとしています。それほどの効果がどのように生まれるのか具体的にみていきましょう。
事務作業の効率化
保育士は事務にかける手間の多さも課題ですが、ICT化でかなり軽減されます。
保育日誌や連絡帳、指導案や計画書、保護者へ配布するお便り作成などは、テンプレート化や情報共有、過去データの容易な閲覧などができるようになるため、書き方に悩むことなく簡単かつスピーディーに作成が可能になります。
複雑なシフトや給与の計算も自動化
保育士不足の解消としてパート・アルバイトの活用や変動労働制が推奨されていますが、働き方が多様化し、シフト管理の複雑化を懸念する声もあります。
保育ICTはパートやアルバイト、正社員などの異なる勤務時間や賃金、労働体系にも対応し、自動でシフト作成を行えます。
また、毎月の残業や有休の管理、研修時のシフト調整なども容易になるので、人件費の効率化にも役立ちます。
保護者との連絡も簡単スピーディー
保護者のスマホとアプリで連携しておくと、連絡にかけていた手間が減り、かつ確実に連絡がとれるようになります。
たとえば、緊急時連絡や登降園の出欠席連絡、急病などのお迎え時などに電話が通じなくても、アプリやメールを通じてやり取りができるため、かけなおしや伝達不備なども発生しません。日々の成長記録の共有やお便り、緊急連絡の一斉配信などもアプリで行えるので、書類も減り、情報管理も簡単になります。
保護者は都合のよいタイミングで情報をチェックでき、連絡帳もスマホで入力できます。保育ICTは、保育園側だけではなく保護者にとっても便利なシステムなのです。
業務時間の削減例
経済産業省が公開している資料では、ICTシステムを導入した園の業務削減例が紹介されています。
朝の登降園の電話対応が1カ月に30時間削減。さらに、8時間半かけていた個人記録が2時間に、3時間かかっていた請求管理が30分に、保育士間の共有もたった6分になるといった、データ化と情報共有の容易化が時間削減に大きな役割を果たしています。
※引用元:経済産業省「保育現場のICT 化・自治体手続等標準化等について」
https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/hoiku_ict/pdf/001_02_00.pdf
保育ICTシステムの導入費用
保育ICTを導入する際のコスト面を懸念する経営者の方も多いことでしょう。こちらでは実際にどのくらいのシステム導入費用が必要か詳細に解説していきます。
導入費用は5,000円前後~
保育のICT導入にかかる全体費用は、各会社のサービス内容によって大きく異なりますが、初期費用と導入費用があり、初期費用は0~30,000円の価格帯が一般的です。
ICTシステムは様々な機能があるため、導入費用は申込内容による段階的な価格帯となっています。おおむね5,000円/月から選択可能になります。
プランの選択で費用は調整できる
保育ICTシステムは、指導案作成や登降園連絡、バスのGPS機能、シフト管理、さらに園で撮影した写真販売まで多彩な機能が搭載されているので、申し込む機能を最小限に絞れば初期費用を抑えることが可能です。
ICT導入で費用対効果を検討しているのなら、豊富なプラン展開をしている会社を利用することもポイントです。
例えばCCSの料金プランでは、4,900円のエントリープラン、13,000円のベーシックプラン、23,000円のスタンダートプランと、機能の充実度に合わせたプランが用意されています。必要に応じてその他オプションが選べるといった特徴もあります。
保育ICT導入は補助金が使える
保育業務支援システムを導入する際は、厚生労働省の「保育所等におけるICT化推進補助金」という補助金制度を利用できます。
一施設あたり100万円を限度に、タブレットの購入費用やインターネット回線の工事費用、通信費用などの経費の一部が補助されます。
注意点として、自治体により対象施設が異なるケースがあるため、事前に確認が必要です。他にも、園児台帳、指導計画、保育日誌の3つを作成できる機能を持ったシステムが対象になるため、検討中のサービスが補助金対象になるかも事業者に確認しておきましょう。
保育ICT導入のために必要な3つのもの
ICTシステムを導入しても、使うときになってトラブルが生じては大変です。導入を成功させるためには、以下の3つが必要になります。
- 作業しやすい環境
- セキュリティ対策
- 保護者の理解と全員参加
保育ICTシステムはタブレットや専用端末、PCを使って入力作業を行います。業務を効率化させるには、安定した通信環境やデバイスの保管・設置場所、子どもたちの手が届かない作業環境が大切です。
また、園児の個人情報や職員の給与データなどを扱うため、データ通信の暗号化やアクセス制限など、セキュリティ対策をしっかりしている会社を選び、保護者や職員の安全も守らなければなりません。
こういったセキュリティ対策やシステム導入によるメリット、協力してほしいことを保護者や職員にきちんと説明し、理解を得ることもポイントです。必要に応じて、システム会社に協力を求めるとスムーズです。
まとめ
保育ICTは、インターネットや電子ツールを活用して保育園運営を効率化できるシステムです。従来手書きだった保育計画の作成や日誌作成、シフト作成などをデジタル化でき、業務時間を大幅に削減できます。
事業会社にもよりますが、導入費用は月5,000円前後で、いろいろな料金体系から選べるため、自社に合ったプランを選択可能です。多くの保育ICTシステムでは、導入時に補助金も活用できるため、負担を最小限に抑えられます。
ICTシステムの導入には快適な作業環境やしっかりしたセキュリティ対策、保護者・職員の理解と参加が不可欠ですが、人件費の削減や人手不足に大いに役立ちます。