乳幼児のうつ伏せ寝と窒息・乳幼児突然死症候群についての関連性は従来より指摘されており、保育園でもさまざまな対策がとられています。
子どもがうつ伏せ寝をしなくなるような仕組みがあれば、保育園で昼寝をする子どもたちを見守る保育士の方の不安や業務を軽減できるでしょう。
今回は、うつ伏せ寝による窒息や乳幼児突然死症候群を防ぐ方法を解説するとともに、昼寝をする子どもを見守るための便利グッズについてまとめました。
子どものうつ伏せ寝はいつから始めてもいい?窒息やSIDSのリスクとは?
乳幼児がうつ伏せ寝をすると、窒息や乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクが高くなると言われています。厚生労働省では、「1歳になるまでは、寝かせる時はあおむけに寝かせましょう」とされています。
SIDSとは、予兆や既往歴がないのに突然乳幼児が死んでしまう、原因不明の病気です。令和元年には78人の乳幼児が、SIDSで亡くなっています。
まずは、うつ伏せ寝と関連性がある窒息や、SIDSのリスクについて見ていきましょう。
SIDSは母乳やたばことの関連があるって本当?
SIDSについての研究が進み、その発生に影響する関連因子が分かってきています。その中の1つがたばこです。妊婦の喫煙は胎児の発育を阻み、呼吸中枢にも悪影響を及ぼします。
そして、妊婦自身の喫煙だけでなく、副流煙の影響も無視できません。たばこの影響をなくすためには、身近な人の理解と協力が必要になります。
一方、母乳育児は乳幼児にとって良い影響があり、母乳で育てられている乳幼児のほうがSIDSの発生率が低いという調査研究が報告されています。そのため、母乳育児がすすめられています。
添い寝やおくるみのSIDSとの関連は?
子どもを保護者の横に寝かせる添い寝をすることも、窒息やSIDSの発生率が上がると言われています。ただし、これはベッド以外のソファやイスで寝る場合の比率であるため、寝具の共有によるSIDSの発生率はいまだ解明されていないのが、現状です。
また、おくるみを使用することも子どもの過剰な体温上昇につながり、SIDSの発生を誘引していると懸念されています。おくるみだけでなく、毛布や衣類などでも子どもの体を温めすぎないように注意が必要です。
うつ伏せ寝による窒息・SIDSを防ぐためには?
お昼寝は家庭だけでなく保育園でも時間が設けられているため、状況に応じて窒息やSIDSを防ぐ対策が講じられています。
子どもの大切な命を守るために、うつ伏せ寝による窒息やSIDSを防ぐポイントを確認していきましょう。
ベッド:アイロン台の硬さを意識する
ベッドにおける窒息やSIDSを防ぐためには、うつ伏せ寝をしている子どもの顔が柔らかいベッドに埋もれないようにするのが重要です。
なるべく硬めの敷布団やマットレスの上を使用し、硬さはアイロン台を意識しましょう。また、短い睡眠でも、大人用のベッドやソファの上に寝かせるのはおすすめできません。
転落の危険性だけでなく、ベッドと壁の間に挟まれたり、うつ伏せ寝した際に顔が埋もれたりして窒息してしまう可能性があるため、十分に注意が必要です。
シーツ:たるみがないようにピンと張る
たるんだシーツや毛布なども、子どもの窒息につながります。シーツはたるみがないようにピンと張り、ふかふかの毛布を使わないようにすることが重要です。また、掛け布団は子どもが払いのけられるような軽いものを使用します。
さらに、パジャマと布団の機能を合わせた「着る布団」と言われるベビースリーパーなどの寝具は、毛布と比べて顔にかぶさったり巻きついたりするリスクを下げることができると言われています。
ベビースリーパーは保温効果もあるため、特に寒い時期におすすめでしょう。
枕:使わないようにする
窒息を防ぐために、子どもの顔周辺やベビーベッド周りに軟らかいものを置かないようにすることも大切です。ベビー寝具セットに枕が含まれていることもありますが、枕は使わないほうが安心です。
また、子どもの体がベビーベッドの柵にぶつからないようガードするために、ぬいぐるみやクッションを柵の前に置くことがあります。それらは窒息の原因となる可能性もあるため、柵にぶつかる衝撃を和らげる専用のベッドガードを使用しましょう。
衣類:短い袖のものを使う
寝ているときは、衣類についても注意が必要です。長めの袖のものを着ていると、スタイなどが顔にかかり、息ができなくなってしまう恐れがあります。乳幼児にはなるべく短めの袖の衣類を着せ、お昼寝の際は保護者や保育者がスタイを外すようにしましょう。
また、子どもの月齢が上がると周囲のものに興味を持ちはじめるため、誤って口に持っていき、顔にかぶさってしまうこともあります。タオルやガーゼ、取り外したスタイなどは子どもの周囲に置き忘れないように注意しましょう。
子どもにストレスのかかる時期は特に気を付ける!
SIDSの直接的な原因は未だ明らかになっていませんが、前述した睡眠時の姿勢や周囲の喫煙状況、生後早期の状態、風邪などの体調不良、環境の変化などが関係していると言われています。
特に、生後半年までは脳や心臓の働きが不安定であるため、この時期にさまざまなストレスがかかるとSIDSにつながる可能性が高くなります。
そのため、この時期に何かで顔をおおうことがないようにする、うつ伏せ寝にならないように対策するなど、特に注意深く見ることが大切です。
よく聞くけど本当?うつ伏せ寝と歯並びの関連性
うつ伏せ寝は、乳幼児の窒息やSIDSと関連があるだけでなく、子どもの歯並びにも影響すると言われています。
うつ伏せ寝をすることで、4~5kgほどある頭の重さが長時間一点にかかることになります。寄って、徐々に歯のバランスを崩してしまい、下あごが偏移したり、かみ合わせに影響が出てしまう恐れがあります。
なお、横向きに寝ている場合も同様です。窒息やSIDS対策だけではなく、このような関連性があることもしっかりと理解し、子どもの寝る体勢には注視しておくことがおすすめです。
どうしてもうつ伏せ寝をしてしまう子どもを見守る便利グッズはある?
子どもによってはうつ伏せ寝が好きで、あおむけに寝かせても知らないうちにうつ伏せ寝になっている子どももいます。しかし、家庭内はさておき、保育園で常に全員の子どもをうつ伏せにならないか見張っておくわけにはいきません。
そこで、どうしてもうつ伏せ寝をしてしまう子どもを見守る便利グッズの活用を検討してみましょう。今回紹介する便利グッズは「午睡チェックセンサー(CCS SENSOR)」です。
このCCS センサーは、おむつの前面に挟むようにして使います。サイズはおよそ5cm×5cmで、乳幼児の口に入らない大きさです。
CSS センサーをつけると、子どもがうつ伏せ状態になったときにセンサーが検知し、保育園の先生が使うタブレット画面にアラートが表示されます。
さらに、子どもの呼吸数や頭の向き、睡眠時間などの午睡チェック項目が自動で記録されたり、赤ちゃんのお腹の表面温度を計測して、発熱予測をしてくれたりなど、とても画期的な機器です。
保育園の先生は、お昼寝をしている子どもの見守りだけではなく、途中で起きてしまった子どもの寝かしつけやお昼寝チェック表・連絡票の記入など、さまざまな業務が山積しています。
このような、午睡チェックセンサー(CCSセンサー)などのICT機器を上手に利用し、安心安全な保育環境を整えましょう。
うつ伏せ寝をしてしまう子どもにつけてみた結果は?
上記で説明した、うつ伏せ寝をしてしまう子どもにCSS センサーをつけた体験談によると、子どもがうつ伏せになりにくいという報告がありました。
CCS センサーは、クリップでおむつの前面(子どものお腹側)に挟んで使います。そのため、子どもがうつ伏せになったときにCCS センサーの存在を感じます。痛みなどはないものの、違和感があるため自然とうつ伏せをやめて、あおむけで眠るようになるためでしょう。
また、CCS センサーを導入した保育園では、うつ伏せで眠る子どもが少なくなったという報告があります。これにより、昼寝中の子どもの見守りに関する保育士の不安軽減に、大きく貢献していると言えます。
ただし、子どもの中にはどうしてもうつ伏せ寝にこだわる子もいるため、保育士の目視チェックは欠かさず行いましょう。
便利な仕組みをうまく使って安全に過ごそう
乳幼児のうつ伏せ寝は、窒息やSIDSと関連性があると言われています。その要因には、日常的によく使用するベッドや枕、シーツなども含まれます。家庭においては特に、子どもが就寝する際は注意を払うようにすることが大切です。
保育園においては、数多くの子どもたちを同時に見る必要があります。ほかの業務を多く背負っていると、なかなか安心して見られない保育士の方もいるのではないでしょうか。
そのような場合には、今回紹介した便利アイテムなどを取り入れることで、業務の負担が減り、安心して子どもたちをお昼寝させてあげられます。
大切な子どもの命を預かる上で、安心して保育できる環境づくりはとても大切です。この記事を参考に、窒息やSIDSについての知識を身につけましょう。