待機児童問題は、保育園だけではありません。保育園の方は、最近の調査からみるとほぼ解消の方向に向かっているように見えますが、学童保育は、まだ厳しいようです。

 

「小1の壁」と言われるほど、小学校に入学した子どもの預け先がなく、これまで勤めてきた仕事を辞めざるを得ない状況になることもまた問題視されています。

 

このため、放課後児童クラブ(学童保育)が増えていますが、そこには課題もあります。

放課後児童クラブ(学童保育)とは?

 

放課後児童クラブ(学童保育)は、すべての子どもたちが放課後の時間を大人の見守りのもとで安全に遊び、宿題をしたりスポーツなどをしたり、安心して過ごせる環境を提供する施設です。

 

多くは学校の空き教室、学校内の専用の建物などが利用されていますが、学外の施設、例えば児童館などを利用している場合もあります。

 

最近は共働き世帯が増えている関係で、学童保育を利用する子どもが増えています。パートなど時短で働き、普段は学校がある時間内で働いている家庭でも、学校の長期休みだけは学童を利用したいという場合もあります。

学童の定義とは?

学童は、放課後や長期休業期間などに保護者に代わって子ども達の保育をしてくれるサービスです。共働きや1人親、介護等で保護者が家にいない間、宿題、おやつ、会話等家庭に当たり前にある環境を与えてくれます。

 

普段は学童と呼ばれていますが、正式名称は「放課後児童健全育成事業」と言いい、児童福祉法第6条の3第2項の規定に基づき、学童の運営は主に厚生労働省の管轄となっています。

 

学童の目的は、子ども達が安心して過ごせる家庭のような生活の場の提供と、働く保護者のサポートです。

 

社会保障審議会少子化対策特別部会の資料に、学童の目的と役割が記載されています。共働きや1人親の小学生の放課後や土曜日・長期休みの場合は、一日生活を継続的に保障することで、両親の仕事と子育ての両立支援を保障することとされています。

 

また、放課後とひと言で言っても学童が子ども達を見ている時間はとても長いものです。全国学童保育連絡協議会の調査によると、学童の年間開設時間は1,650時間にもなり、放課後や長期休業等すべての時間を合わせるとかなりの時間をカバーしていることになります。

 

学童は主に3つの種類に分けられ、それぞれ「放課後子ども教室」「放課後児童クラブ」「民間学童」と呼ばれています。以下にその詳細について説明します。

 

学童の種類は大きく分けて3つ

  • 放課後子ども教室
  • 放課後児童クラブ
  • 民間学童

学童は「放課後子ども教室」「放課後児童クラブ」「民間学童」と、大きく分けて3種類あります。ここからは、3つの学童の違いについて紹介します。

 

まず1つ目の放課後子ども教室は、文部科学省の管轄です。こちらは学校の空いている教室を利用している場合が多く、宿題等の学習支援・体験活動・交流活動など行っています。子ども達の指導員は、主にボランティアや学生等です。

 

2つ目の放課後児童クラブは、厚生労働省の管轄です。共働きの家庭等の小学生を対象に、放課後の生活や遊びの場を提供してくれます。開催場所は児童館や学校となり、宿題をしたり遊んだりして過ごします。子ども達の指導員は子どもに専門性を持った人が担当します。

 

最後に民間学童は、社会福祉法人、NPO法人や民間企業が運営します。民間企業が運営していることもあり、経営者により特色が異なり様々なイベントやサービスがあります。魅力的なサービス内容が受けられる利点がある一方で、料金が割高となっている場合が多いです。

過去最高数にのぼった放課後児童クラブ(学童保育)の子どもの数

 

厚生労働省によると、放課後児童クラブの数や登録児童数は年々増加傾向にあります。

 

令和3年には放課後児童クラブの数は26,925か所(前年比+300か所)と過去最高を更新したほか、登録児童数も過去最高の約134万8,275人(前年比+37,267人)となりました。

 

しかし、施設の数は増えているものの、都市部を中心にいまだ施設を利用できない待機児童は約13,000人おり、この数をいかに減らしていくかは重要な社会課題の1つです。

 

放課後児童クラブ(学童保育)の現状から見えてくる課題

 

待機児童問題のほかにも、放課後児童クラブ(学童保育)の運営には様々な課題があります。

定員数の課題

1つ目は「定員数」をめぐる課題です。

 

施設の広さや支援員の数によって定員数が決まりますが、現在、利用定員を41人以上と設定しているところは約40%あるなど、大規模運営が目立ちます。

 

41人以上と言えば、小学校の1クラスより多い人数です。さらに、71人以上の定員で運営している施設は1,553か所もあります。

 

児童数が増えれば、出席の確認や安全管理などでの支援員の管理負担は大きくなります。

 

また、子どもにとっても落ち着けない環境となったり、遊びや活動に制限がかかったりするなどの影響を及ぼします。

開所時間の課題

2つ目は「開所時間」をめぐる課題です。

 

放課後児童クラブの約60%の施設では、子どもを18時半以降まで預けることができますが、残りの約40%の施設は18時半以前に終了してしまいます。

 

フルタイムで働く保護者のライフスタイルとズレが生じ、働き続けることが困難になってしまいます。

場所の課題

3つ目は「場所」をめぐる課題です。

 

放課後児童クラブの多くは学校の敷地内の空き教室などが利用されていますが、学外の児童館や公民館、保育所などで運営されるケースもあります。

 

距離や環境にもよりますが、毎日学校から移動しなければならず、送迎があるかどうかも運営団体によるので、保護者の負担となっているケースがあります。

支援員の課題

4つ目の課題は「支援員」をめぐる課題です。

 

放課後児童クラブ(学童保育)の支援員は、子どもたちの協同性や主体性を育む支援を行い、働く保護者や地域との連携を担う重要な仕事です。

 

2015年に「放課後児童支援員」としての資格が設けられましたが、専門性を要する仕事でありながら、有資格者は支援員全体の56.5%となっています。

 

さらに、年末年始以外は土曜日も開所しているところも多く、長い労働時間をシフト制で回しています。子どもが長時間楽しく過ごせるよう、工作やゲーム、遊びのプログラムなどを毎日考える負担も大きくなっています。

【保護者目線】学童を選ぶときに重要視したいポイントとは?

 

長い時間を預けることになるため、大事な子どもをどこの学童に預けるかは保護者の大きな悩みとなります。

 

子どもが満足した学童時間を過ごすことが出来て、保護者も安心していられるように、子どもの性格や家庭の事情に合った学童を選びたいものです。これらを叶えるため、希望するポイントや不安に思うポイントをピックアップすることをおすすめします。

 

以下で、特にチェックしたいポイントを整理してご説明します。

利用可能時間

学童を選ぶとき、まず気になるポイントは利用可能時間です。仕事時間とお迎え可能時間を照らし合わせて学童を選びましょう。

 

分かりやすく言うと、公営の放課後児童クラブと民間学童では、利用できる時間が違います。

 

多くの放課後児童クラブは、最長で19時までとなっています。その一方、民間学童は19時を超えて夜遅くまで預かってくれる施設もあります。

 

また、延長保育が可能かどうかも残業が多い仕事をしている保護者には大切なポイントです。

 

しかし、延長保育は追加料金が必要となることもあるため、選択肢としては学童を併用することを検討しても良いでしょう。同時に検討学童施設に送迎サービスがあるかどうか確認すると良いでしょう。

職員数

学童の利用人数や職員数が入所案内等で確認できる場合は、児童の数対職員の数の割合が問題ないのかどうか確認する必要があります。

 

学童では1クラスを40人以下とし、40人程度の子どもに対して指導員は2人以上配置することに加え、うち1人は放課後児童支援員という資格保持者とするよう定められています。

 

人員不足が問題視される保育園等のように、学童でもしっかりと規定通りの指導員が在籍しているかどうかの確認は重要でしょう。

 

人員不足となると子どもに目が行き届かず、思わぬ事故や子ども達のストレスとなる場合があります。

 

通っている児童や施設全体の雰囲気

検討している学童を見学できるようであれば、施設の雰囲気や通っている子ども達の雰囲気を、実際に目で見て確認しましょう。どんな活動をしているのか、明るい雰囲気か、子どもたちは楽しそうで明るいかなど肌身で感じることができるでしょう。

 

学童にはそれぞれの特色があり、勉強に重きを置いているところや自主性を伸ばすためのびのびと生活させている施設まで様々です。

 

自分の子どもにはどのような雰囲気があっているのか、どんなイベントやプログラムなのかを踏まえ検討しましょう。

【指導員目線】課題の解決は学童保育ICTがおすすめ

 

保育園の事務作業を省力化し、保育士の働き方改革を進めてきたChild Care System(チャイルドケアシステム)では、これを応用し、放課後児童クラブ(学童クラブ)のICT化を支援するため、月額3,000円でサービスを提供しています。

 

ここでは、その機能の一部を紹介します。

出席簿の自動作成で出席者を簡単に把握する

大規模な定員数を抱える放課後児童クラブ(学童保育)において、児童の在籍確認は毎日の重要な業務です。

 

児童の入退室記録や欠席の連絡などを支援員はきちんと把握する必要があります。

 

学童ICTシステムのChild Care Systemでは、児童が入退室する際、タブレットにタッチするだけで時間を自動記録し、出席簿を作成します。誰が来ていないか一目で分かり、安全管理がしやすくなります。

連絡帳アプリで保護者との連絡をスムーズに行う

支援員の人材不足は深刻です。少ない人数で子どもたちの状況を把握し、安全で安心な環境を提供しなければなりません。

 

帰宅時間の変更の把握や欠席の連絡などは、これまで電話や紙の連絡帳などで確認するしかありませんでした。学童ICTシステムのChild Care Systemでは、手書きでやりとりをする作業を効率化し、アプリで保護者と簡単に連絡をとることができます。

 

また、大切な連絡は既読確認付きでメッセージを送ることもできます。

 

これ以外にも、おやつ代の集金などを引落しで行ったり、紙のお便りの印刷作業をなくし、アプリで配信することもできます。

放課後児童クラブ(学童保育)の質の確保のためにできること

放課後児童クラブ(学童保育)は今後ますます重要な社会インフラになっていくでしょう。

 

しかし、支援員の待遇や、保護者の利便性、子どもの過ごす環境など、今まで以上に深く議論されるべき課題も多いのも事実です。

 

学童ICT化で支援員の働きやすい環境を整え、子どもの笑顔の増える放課後児童クラブ(学童保育)となるようChild Care Systemはサービスを展開していきます。

待機児童は未就学児だけの課題ではない

 

放課後児童クラブは社会保障の領域です。

 

しかし、社会保障というと年金・医療・介護など高齢者向けにばかりに焦点が当たりがちとなり、放課後児童クラブなどの若年層には目が向きにくかったと言えます。

 

待機児童問題は、未就学児の保育園の問題と考えられることが多いですが、保護者のいない時間に子どもたちがどのように過ごすかということは、未就学児であっても小学生であっても、本質的には同じ課題です。

まとめ

 

最近は利用者も増え、多くの時間を子どもたちが過ごす学童では、課題がまだまだあることが分かりました。

 

保護者視点から見た心配な点、指導員目線から見た課題と感じる点を分かったうえで、子ども達により良い環境を提供することが大切です。

 

ICT化により指導員の負担を減らし、子ども達の安全を守ることができます。