加配保育士とは?

加配保育士とは、発達支援が必要な子どもをサポートする保育士のことです。このような子ども達を受け入れている園では、加配保育士がそのクラスに溶け込み、他の子ども達と同様に楽しい園生活が送れるようサポートする必要があります。

 

ただし、一口に「発達支援が必要」と言っても、その種類はさまざまです。子ども達の特性に対応できるようになるためには、保育士としての資格に加え、サポートに対する正しい知識と理解が必須です。

障がい児保育の実施状況

厚生労働省の資料によると、障がい児保育を実施している園の数は、令和2年度で19,965ヶ所です。

 

また、保育所が受け入れたサポートが必要な子どもの数については、10年前の平成22年が45,369人だったのに対し、令和2年には79,260人に上り、その差は33,891人となっています。

 

この数値から見ても、障がい児保育の実施状況は年々増加しているということが分かります。

 

出典:障がい児保育の実施状況の推移|厚生労働省

加配保育士の役割について

加配保育士の主な仕事は、発達支援が必要な子どもに対し、食事や着替えとなど日常生活のサポートを行うことです。

 

また、他の子ども達とコミュニケーションがうまく取れるようにフォローすることも、加配保育士の仕事のひとつです。

 

上記以外では、行政機関や療育期間と連絡を取り合うことも、加配保育士の大切な役割の1つに挙げられます。

加配保育士の主な仕事内容

それぞれの子どもたちに合った保育計画の作成

保育園では、子ども達が園でどのように生活するかを計画した「年間計画」の他、「月案」「週案」などの保育計画を作成します。そして、その計画に沿って、保育士が子ども達の園生活をサポートするのが一般的です。

 

しかし、発達支援が必要な子ども達の中には、その保育計画に沿って生活するのが難しい子どももいるでしょう。

 

その場合は、加配保育士がそれぞれの子ども達に合った個別の保育計画を作成していきます。

 

中には、担当する子どもが他の療育機関に行っている場合もあるため、その場所での過ごし方についての話も聞きながら、それぞれの子どもに合わせた計画を立てることが重要になります。

子どものケアやサポート

加配保育士は、担当する子どもに適切なケアやサポートをするためには、どのようなサポートが必要なのかをしっかり考える必要があります。

 

発達がゆっくりな子ども達の中には、全ての園生活を他の子ども達と一緒に行うのが難しいケースもあります。時には、ただ側で寄り添ってあげることも大切です。

 

そして、無理に参加させるのではなく、担当する子どものペースに合わせて園生活を送らせるようにしてあげましょう。

 

また、どのようにサポートするかは、子どもによって異なります。まずは、子どもとの信頼関係を構築することが重要と言えます。

保護者との連携

子ども達が楽しく園生活を送るためには、保育士と保護者との連携が必要不可欠ですが、加配保育士の場合は、より強い連携が求められます。

 

特に、発達支援が必要な子どもを持つ保護者の中には、悲観的になっていたり不安を多く抱えていたりするような方もいます。

 

そのため、加配保育士は、保護者の気持ちをよく理解し、時に良き相談相手となることが大切と言えます。

 

また、園での生活の様子を共有することで、保護者の不安を少し和らげることもできます。加配保育士にとっては、子どもとの信頼関係と同じくらい、保護者との信頼関係を築くことが大切です。

担任や職員などとの連携

加配保育士は、クラスに担任や副担任がいる中、特定の子どもをサポートするためにクラスに入ります。そのため、加配保育士の仕事では、一緒に働く他の保育士との連携も重要になってきます。

 

そのクラスがどのような計画で園生活を送るのかなどは、事前の確認が必須です。例えば、該当する生徒に対して、どのように加配保育士がサポートに入るのかなどは、事前に知らせておくことが大切です。

 

また、担当する子どもの様子によっては、クラスを離れることもあります。そのような時もスムーズに対応できるよう、担任や職員とのコミュニケーションは密に取っておきましょう。

加配保育士になるにはどうしたらい良い?

では、加配保育士になるためにはどうしたら良いのでしょうか。保育士資格以外にも、必要な資格があるのでしょうか。

 

ここからは、加配保育士に必要な資格やスキルについて紹介します。

加配保育士に必要な資格は?

他の保育士同様、加配保育士になるためには保育士の資格が必要です。しかし、それ以外に必要な資格は特にありません。

 

これは、保育士資格取得の際には障がい児教育についても学ぶため、知識がすでに身に付いていると考えられているためです。

 

したがって、加配保育士になった際は、資格取得時に身に付けた知識をもとに、現場で子ども達をサポートしていくことになります。

 

出典:保育士資格を得るには|一般社団法人全国保育士養成協議会

加配保育士に求められるスキル

障がい児教育をすでに受けているとは言え、加配保育士を目指すのであれば、さらに知識を身に付ける必要があります。

 

「発達支援が必要な子ども」と言っても、その症状はさまざまです。症状によってサポートの仕方に違いがあるため、適切なサポートの仕方などは、改めて学ぶ必要があるでしょう。

 

また、子どもの様子を見て臨機応変なサポートを行うことも大切です。加配保育士は、知識はもちろんのこと、状況に対応する力などを現場の経験から学ぶことも重要です。

加配保育士の求人傾向

現代では、共働き夫婦が増えていることもあり、子どもを保育園に預ける方が増えていると言われています。そのため、全体的に保育士の労働者数は不足しています。

 

一方、加配保育士の正社員での求人は、現状そこまで多くありません。どちらかといえば、パートやアルバイトでの募集が多く見られるでしょう。

 

給料については通常の保育士と大差はないとされており、厚生労働省の資料によると保育士の年収は約382万円となっています。

 

出典:保育士|厚生労働省

加配保育士のやりがいやメリット

加配保育士に対して、仕事内容的にも大変なイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。

 

しかし、その一方でやりがいが感じられる仕事でもあります。ここからは、加配保育士の仕事をすることで感じるメリットについて紹介していきます。

子どもにしっかりと向き合うことができる

加配保育士と通常の保育士の違いは、担当する子どもの数です。

 

一般的に、加配保育士が担当する子どもの数は、1人や2人の少人数です。そのため、担当する子ども1人1人にしっかりと向き合うことができます。子どもの様子や性格に合わせてサポートすることで、学べることも多いでしょう。

 

また、子どもと強い信頼関係を築くこともできます。たくさんの子どもよりも、少人数の子どもとしっかり向き合って成長をサポートしたいという方には、メリットをたくさん感じられる仕事と言えます。

保育士としてスキルアップが目指せる

加配保育士を経験することで、保育士としてのスキルアップを目指せる可能性もあると言われています。

 

通常の保育士の場合、年間計画をスムーズに行うために、時には計画を優先して行動することもあるかもしれません。

 

しかし、加配保育士は「計画を遂行する」というよりも、まずは子どもの様子を見て判断し、行動することを優先します。結果として、子どもを見る目が養われていきます。

 

保育士としてさらにレベルアップしたいと考えている方は、加配保育士を選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。

加配保育士の大変な点やデメリット

保育士としての成長が望めるというメリットがある加配保育士ですが、実際に働いてみると、通常の保育士の時には感じなかった大変さを感じることもあります。

 

加配保育士を目指す際は、以下で紹介するデメリットも理解した上で挑戦しましょう。

ストレスを感じることがある

加配保育士は、通常の保育士に比べて子どもへの対応で悩むことが多いと言われています。

 

常に子どものことを考えた上でサポートしていても、時にはうまく働かないこともあるでしょう。また、どんなに信頼関係を構築しようとしても、なかなか心を開いてくれない場合もあります。

 

さらに加配保育士の場合、このような状況にプラスして、悩みを相談できる人が周りに少ないことも多いです。時には自分1人だけがその園の加配保育士という場合もあります。

 

そのため、悩みごとを相談できず1人抱え込んでしまい、それがストレスになってしまう可能性は考えられます。

正社員の求人が少ない

現在、障がい児保育を行う園は増えていますが、全体で見ると、まだ対応していないという園も多いのが現状です。そのため、加配保育士に挑戦したいと考えていたとしても、希望の園で働けないこともあり得ます。

 

また、加配保育士は担当する子どもが欠席した場合は、フリーの保育士として業務に当たるのが一般的です。加配保育士の求人がパートやアルバイトが多いのは、この働き方が原因の1つと言えます。

加配保育士に関する補助金制度

保育園が加配保育士を配置すると、その分の人件費がかかります。そのため、国は、園が加配保育士を配置できるように、補助金制度を用意しています。

 

ここでは、その補助金制度を2つ紹介します。

①療育支援加算

療育支援加算とは、加配保育士を配置するために必要な経費に対して、国の援助を受けられる制度です。

 

主任保育士が自分の業務に専念できるように、加配保育士の配置にかかる費用を国が補助してくれます。この制度のおかげで、保育園は加配保育士を手配することができ、障がい児保育に携われるようになります。

 

出典:保育所等における障害のある子どもに対する支援施策について|厚生労働省

②障害児保育加算

障がい児保育加算は、発達支援が必要な子どもを受け入れている「特定地域型保育事務所」に対し、加配保育士を配置する際に生じる経費を補助する制度です。

 

この制度を利用すると、発達支援が必要な子ども2人につき1人の加配保育士を配置するために必要な経費を、国や自治体が負担してくれます。

 

出典:保育所等における障害のある子どもに対する支援施策について|厚生労働省

まとめ

発達支援が必要な子どもをサポートする加配保育士は、時には大変だと感じることも多い仕事です。

 

しかし、子どもと密に関われる分、担当する子どもの成長を直に感じられるやりがいのある仕事とも言えます。

 

保育士として成長したい、子どもと密に接する保育をしてみたいという方は、加配保育士を人生の選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。