保育士の仕事である週案の作成は、子どもたちの成長と向き合うために、とても大切な作業のひとつではないでしょうか。

 

週案は保育の目標達成への目印となり、子どもへの関わり方の心得にもなります。保育を円滑に進めるために、書き方のコツをしっかり把握して作成することが重要となるでしょう。

 

この記事では、週案を作成する目的や週案に含むべき内容をまとめ、年齢別の記入例を紹介しています。

そもそも週案とは?

週案は保育指導案のひとつで、週単位で行う活動や保育士からの働きかけをまとめたものです。

保育指導案は、1年間の計画や目標を立てる年間計画を達成するため、月案・週案・日案と、細かく期間を分けて作成します。保育指導案の作成は、子どもの発達過程に沿いながら、健やかに成長させるための保育を進めるのに欠かせません。

 

週案は月案を詳細化した内容で、1週間の子どもの成長に向き合い、時期・能力に適した活動や、保育士の関わりを具体的に計画していきます。また、週案の作成によって先週の保育を振り返ることができ、発達に合った柔軟な働きかけにもつながるでしょう。

週案の内容について

ねらい

週案のねらいは、1週間で目指す子どもたちの変化や、興味関心の高まりなどを書きます。子どもの発達には差があるため、目標のように具体的な達成を目的とせず、年齢や成長に合わせた内容にしましょう。

 

厚生労働省が定めた保育所保育指針では、保育のねらいを5つに分類しています。ねらいの作成に悩んだら参考として、内容を見直してみましょう。

活動内容

活動内容は、1週間でねらいを実現するために必要な活動を具体的に書いていきます。ねらいで設定した子どもたちの姿に近づくには、どのような活動が必要かを考えながら作成していきましょう。

 

活動内容はねらいと同じく、年齢や発達に合わせて無理のないものにしていきます。その時期にふさわしい遊びや生活を充実させる内容を盛り込んでいきましょう。

子どもの姿

子どもの姿は、1週間の園内活動で子どもがどのように楽しめるか、どのような行動を取るかを予測するものです。子どもたちの姿を想像しながら、予測できる内容をすべて書いていきます。

 

気を付けたいのは、子どもはそれぞれ違う成長や反応を見せるという点です。発達や個性によって活動中に取る行動も変わってくるため、普段から子どもたち一人一人の成長や行動を観察しておくことが重要となるでしょう。

保育士の援助内容

保育士の援助内容は、活動内容に沿った保育士の行う業務や子どもへの援助、注意事項をまとめたものです。子どもの理解度や欲求を満たし、適切な行動が取れるように誘う言葉がけなど、保育士からの関わり合いについても設定していきます。

 

子どもの姿についてまとめる際に、どのようなトラブルが起きるのかも事前に予測できるでしょう。関連付けながら、状況に合わせた援助内容を書き出していきましょう。

週案の書き方と記入例

0歳児の場合

0歳児の場合、生後半年を過ぎる頃に身近な人の顔を判別し始め、生きるための欲求を満たしてもらえる相手への愛着関係が強まり始めるといわれています。

 

子どもがのびのびと過ごせるような落ち着く環境作りや、人を信頼する気持ちを育むための、保育者との関わり合いをねらいとするとよいでしょう。

 

・ねらい
「保育者に慣れ、保護者と離れている時間も安心できる」
「園内での食事により食欲が満たされ、機嫌よく過ごせる」

 

・活動内容
「抱っこや触れ合いを通じて不安を取り除き、安心して過ごしてもらう」
「ミルクや離乳食は子どもが摂取できる量を無理なく与える」

 

・子どもの姿
「不慣れな環境で泣き出したり、眠れなかったりする子どもがいる」
「ミルクや離乳食が進まない子どもがいる」

 

・保育士の援助内容
「抱っこや触れ合いで子どもの反応をみながら、安心してもらえるような環境を整える」
「食事は保護者との連携を取り、子どもが無理なく食べられる量を把握しながら進める」

1歳児の場合

1歳児前後になると歩行が始まり、自分の体を思い通りに動かせるようになって遊びにも幅が出てきます。言葉の理解が進むとともに、意志の伝達や自己主張が出始めるでしょう。周囲への関心も広がるため、友達との関わりや遊びに関する内容を取り入れます。

 

・ねらい
「戸外活動や外遊びで自然に興味を持ってもらう」
「友達と関わり合い、保育者以外との交流を楽しむ」

 

・活動内容
「公園への散歩で外遊びや遊具を使った遊びを楽しむ」
「保育者が見守るなかで、友達との遊びを楽しむ」

 

・子どもの姿
「虫などの生き物や遊具での遊びを怖がって泣き出してしまう子どもがいる」
「友達と手をつないで歩き、楽しさから気分も高揚している」

 

・保育士の援助内容
「子どもの反応を見ながら、こわくないよ、ちょっとさわってみようか、などの適切な声かけをやさしく行う」
「手を引っ張りすぎて転んだり怪我したりといったトラブルを防ぐため、一緒に行動する子ども達をサポートする」

2歳児の場合

2歳児になると、走ったりジャンプしたりといった、大胆な動きが活発になります。また、身の回りの簡単なことを、自分でやろうという行動が多くみられるでしょう。身体機能に関する内容や、自立心の成長を促す生活習慣を身に付ける内容がおすすめです。

 

・ねらい
「着替えなど身の回りのことを自分でやろうとする」
「運動遊びや遊具を使った遊びから、全身の使い方を覚える」

 

・活動内容
「衣類の着脱に挑戦し、前後ろの確認やボタンのかけはずしを練習する」
「運動遊びを通して、体を動かす楽しさを知る」

 

・子どもの姿
「衣類の着脱が難しく、保育者に甘えたり不機嫌になったりする」
「危険な高さから飛び降りたり、揺れるブランコに近づいたりといった危険な行動を取る」

 

・保育士の援助内容
「できないことに共感しながらさりげなくサポートし、うまくできたら褒める」
「子どもがけがをしないよう、運動遊びや遊具を使った遊びの際には、危険がないか子ども達全体を見守る」

3歳児の場合

3歳児は食事や排せつなどの日常的な生活動作を自分で行えるようになり、あいさつや歯磨きなどの習慣も覚え始める時期です。社会性を伸ばす活動や、生活習慣などに絡めた内容を取り入れるとよいでしょう。

 

・ねらい
「安定した生活リズムを身につける」
「保育士や友達、異年齢の子どもたちへのあいさつをしようとする」

 

・活動内容
「食事の準備や排せつの際に、子どもが自ら意志を伝えやすいようにする」
「登園時と退園時のあいさつができるよう誘う」

 

・子どもの姿
「自分で動くタイミングがわからなかったり、遊びを優先したりして、失敗してしまう子どももいる」
「こちらから声をかける前に、大きな声で自分からあいさつしてくれる」

 

・保育士の援助内容
「遊びに夢中になってしまう子どもや、意思表示が苦手な子どももいるため、全体だけでなく個別に様子を見ながら声をかけ、行動を促す」
「あいさつが苦手で戸惑っている子どもには、笑顔でやさしく声をかけて様子を見る」

4歳児の場合

4歳児になると、知能が大きく発達し、想像力も強くなっていきます。作り話をできるようになってくるのもこの頃からです。文化や季節の移り変わりにも興味がわいてくる時期のため、年中行事や季節ごとの自然遊びに絡めた内容もおすすめです。

 

・ねらい
「自然にあるものを使って制作し、想像を楽しむ」
「クリスマス会の準備を通じて、友達と協力する楽しさを知る」

 

・活動内容
「落ち葉やドングリ、木の枝など、子どもが興味のあるものを使い、自分の顔を制作して遊ぶ」
「みんなで同じ目標に向かって楽器演奏や歌、ダンスを練習する」

 

・子どもの姿
「制作を楽しみながら、植物の名前にも興味を持つ子どももいる」
「年長児の姿を見て、自分もうまく踊りたい、演奏したいと頑張っている様子がみられる」

 

・保育士の援助内容
「子どもからの質問に答えられるよう、植物の名前を図鑑やアプリなどで調べておく」
「みんなが楽しめるよう、打楽器を準備して子どもたちが興味を持つパートを振り分ける」

5歳児の場合

5歳児は自己主張と妥協を使い分けることもでき、友達関係など周囲との関わりもより複雑になる時期です。また、就学前には保護者からの相談なども増えてきます。友達との関わり方や、就学に向けた取り組みなどを盛り込みましょう。

 

・ねらい
「遊びや日常生活を通じて、保育者や友達との会話を楽しむ」
「文字や数字を理解できる喜びを感じる」

 

・活動内容
「チームごとの制作や運動遊びで、保育者や友達との会話の機会を増やす」
「文字遊びに関する絵本や、数字を使った簡単なゲームを楽しむ」

 

・子どもの姿
「自己主張が激しくケンカすることもあるが、お互いに話し合って協力できている」
「自分の名前をひらがなで書いたり、簡単な足し算ができたりする子どももいる」

 

・保育士の援助内容
「おとなしい子どもでも意見が出しやすいよう、みんなが主張しやすいルールを提案しながら話し合いをサポートする」
「全体が無理なく理解できる絵本や教材を準備する」

週案を作成する際のポイント

園の保育方針に沿う

週案は自分がやりたいことを書いたり例文を写したりせず、園の保育方針に沿った内容にしましょう。

 

保育方針は園ごとに異なりますが、子どもたちをどう保育していくかを指し示す目印となります。週案の作成の際には、発達に応じた働きかけや活動内容を考える必要がありますが、その場限りの考えで作成すると、保育のやり方が大きく変わってしまう可能性があるのです。

 

保育方針をベースに週案を作成することで、保育の方向性のズレを防ぐことができるでしょう。

年案・月案と統一性を持たせる

保育士同案のひとつである週案は、年案・月案と統一性を持たせて作成する必要があります。

 

年案は年間指導計画、年間カリキュラムともよばれ、年の終わりの目標を達成するための計画で、季節ごとイベントなど長期的な見通しを立てるものです。月案、週案は年案を達成するための具体的な1か月の目標、1週間の活動をまとめていきます。

 

統一性を持たせずに作成した週案は、保育の連続性を途絶えさせ、子どもたちを戸惑わせてしまいます。年案と月案を意識しながら1週間の活動を考えていきましょう。

先週の子どもの姿を踏まえる

週案は活動内容や目標だけでなく、先週の子どもの姿や発達状況に合わせた内容にしなければいけません。

 

子どもたちがどんな遊びを楽しんでいるのか、トラブルなどが起こっていないかを把握し、状況に合わせて作成しましょう。ほかにも、急に気温が上がる季節には戸外活動の時間変更や、沐浴の時間を確保するなど、季節や天候に合わせて計画を練る必要も出てきます。

 

子どもを主体とした計画を立て、柔軟に対応しながら楽しく活動できるような内容にしましょう。

週案作成に必要な言葉を理解する

週案作成の際には、子どもの姿を想像できる、伝わりやすい言葉を理解して使用しましょう。たとえば「楽しむ」という単語は、興味を持って取り組む様子、「味わう」という単語は、感じる・体験するといったさまざまな意味合いで使います。

 

また、年齢に合った表現にも、言葉の理解は重要です。0歳児の週案に「友達との関わりを楽しむ」とあっても、実際には友達との関係を築ける時期ではありません。

 

子どもをよく観察し、わかりやすく発達に適した言葉を使うことで、どのような変化をもたらせたいかが想像しやすくなり、活動内容を具体的に設定できます。

まとめ

週案の作成は、子どもの成長に寄り添い、保育園での生活を充実させるのに欠かせないものです。また、活動内容が具体的になるため、保育士同士の連携も取りやすく、保育の質の維持向上にも役立つでしょう。

 

ねらいを達成しやすい週案を作成するには、テンプレートに頼らず、保育活動の連続性を重視しながら、子どもの姿をしっかりと見極めた内容を取り入れるのが重要です。

 

ぜひ本記事で紹介した書き方や作成ポイントを参考に、子どもたちの成長に合った週案を作成してみてください。