保育は「量の確保」から「質の向上」が問われる時代へ
保育の質が求められるようになった背景
保育はこれまで待機児童問題が注目されてきましたが、近年は各地で民間保育園の設立も含めて定員が増加して、多くの地域で解消に向かいつつあります。
子ども・子育て支援法に基づく各市町村の子ども・子育て支援事業計画では、保育の量の確保はもちろん、保育の「質の確保」を目標として掲げるところが多く見受けられます。
保育の質の確保のための「評価」の仕組み
保育の質の確保のために、保育者の研修体制の整備などの取り組みを進めるとともに、第三者機関による評価を取り入れる施設もあります。例えば、東京都福祉サービス第三者評価もその1つです。
第三者評価とは
東京都福祉サービス第三者評価を行っている「福ナビ」によれば、東京都福祉サービス第三者評価とは、「利用者本位の福祉の実現を目的に、保育事業者がサービスの質の向上に向けた取り組みを支援する」というものです。
例)東京都福祉サービス第三者評価の内容
評価機関は、事業所の職員の自己評価や利用者アンケート調査を行い、サービス現場の確認や職員へのヒアリングを通して、サービス内容や組織運営について総合的に分析し、評価をします。
評価の内容としては
利用者の声を聞く「利用者評価」
・サービスの提供
・安心・快適性
・利用者個人の尊重
・不満・要望への対応
サービス内容や組織運営を評価する「事業評価」
・リーダーシップと意思決定
・事業所を取り巻く環境の把握・活用及び計画の策定と実行
・経営における社会的責任
・リスクマネジメント
・職員と組織の能力向上
・重要課題に対する組織的な活動
・サービス提供のプロセス
などがあります。
自治体によっては東京都第三者評価の受審を義務化をしているところもあれば、受審は任意で事業者に任されているところもあります。
保育の質を向上させる「評価」はどのように取り組むべきか?
このような評価については、行政や第三者機関が、保護者による評価なども採り入れながら、適正な評価の仕組みを整備していくことが求められています。
社会情勢や法令による環境の変化に対応できるよう、保育士の配置記録を残したり、保護者とのコミュニケーションを取りやすくしたりするツールを用いることで客観的な評価をしやすくなります。さらに、それによって園全体で日々の保育の振り返りがしやすくなり「保育の質」の向上につながります。
評価をきっかけとした改善への取り組み
評価というと優劣を付けることが目的だと思われることもあります。しかし、それでは評価される施設が萎縮してしまい、金太郎飴のようにどこでも同じような保育が広がってしまうかもしれません。保育の質の評価は、本来、それぞれの施設における質の向上に活用されるべきです。従来のやり方にとらわれることなく、それまでのあり方を謙虚に見直すキッカケとなるものだと思います。
評価をする側も、調査で得られた情報を活用し、優れた取組みを周知するなどして、各施設での質の向上に向けた取組みを積極的に支援してほしいものです。これによって、より安心・安全で、保護者からも評価され、保育者にとっても働きがいがある保育園が作れるのではないでしょうか。
最近では、ICTなどのツールを活用することで業務の効率化を進めて、質の高い保育への取り組みを進めるところも増えてきています。そうした新たなツールの導入に関しても学ぶところが多いのではないでしょうか。
参考:
厚生労働省 新子育て安心プラン 公表資料
公益財団法人東京都福祉保健財団 東京都福祉サービス第三者評価 福ナビ
「保育学研究 第56巻 第1号」(2018年、一般社団法人日本保育学会)