指導計画の書類と書き方のポイント

指導計画は、毎年、年度の始まりまでに1年を通してのねらいや、保育の流れなどを作成する「年間指導計画」と、年間指導計画で設定した1年間の目標を達成させるために、より具体的な保育の計画を記入する「月案」、「週案」、「日案」の計4種類があります。

 

作成した指導計画は主任と園長へ提出します。指導計画の承認が得られると、各クラスの保育士はこの指導計画に沿って保育を行い、事前に計画した内容がねらいどおりにできたかどうかを評価したり反省をしたりします。

 

以下では、年間指導計画、月案、週案、日案の書き方をそれぞれ解説していきます。

年間指導計画

年間指導計画を作成するためには、現段階の子どもの成長を把握しておく必要があります。

 

今後の子どもの成長を予測するために現状でわかっていないことがあるのであれば、前担任に聞いてみたり、子どもたちの様子を観察するのも良いでしょう。

 

また、年間指導計画は月案、週案、日案との整合性がズレてしまわないように、他の指導計画との関連づけを考慮しながら作成をしなければいけません。

 

例えば、夏に水遊びをすると年間指導計画に盛り込んだ場合は、月案の7月・8月にも水遊びを記載しておき、実際にいつどのように行うかは週案や日案により具体的に記入していきます。

 

年間指導計画と月案、週案、日案のねらいや保育の流れがズレていると感じた場合は、本来の目的とズレている可能性が高いため、必ず整合性が取れているか確認をするようにしましょう。

月案

月案は年間指導計画で設定した目標を達成するために、子どもたちが1か月間でどのように成長してほしいかを考え、作成します。

 

そのため1ヶ月を1~4週に分けて、項目ごとに作成しましょう。季節の変化や子どもたちの前月の様子、成長、発達を踏まえて作成することが大切です。記録項目は以下の通りです。

 

・ねらい
・内容
・子どものすがた
・援助、配慮
・環境構成
・家庭、地域との連携
・健康、食育

 

月案におけるねらいとは、年間指導計画の目標をより具体的にした目標のことを指します。年間指導計画の目標を達成するために、1か月間で子どもたちにどのような成長をしてほしいかをベースに考えます。

 

内容には、子どもたちがねらいで描いた姿になれるようにどのような活動をするのかについて、記載しましょう。

 

月案を作成する際には、箇条書きで簡潔にまとめることが大切です。また、行事についても考慮しながら作成しなければなりません。

 

特に、長い練習期間を要する行事では、その行事や練習を通してどのような能力を獲得するのかを月案に盛り込む必要があります。行事の内容についてもしっかりと把握したうえで、月案を作成するように意識しましょう。

 

また、保育園の指導方針に則った計画を立てることも大切です。園の方針に沿って計画を立てることで、一貫性のある年間指導計画、月案、週案、日案を作成することができます。過去の月案を確認することができれば、参考にするのも良いでしょう。

 

月案については次の章で具体的に解説します。

週案

週案は、月案をベースにして、1週間ごとに立てる保育計画のことを指します。月曜日から金曜日までの保育内容を、前週の子どもたちの様子を踏まえて具体的に作成しましょう。

 

週案を作成する際には、天候や行事について考慮することが大切です。子どもたちが前の週よりも成長できるように、週ごとにステップアップさせて内容を考えると良いでしょう。

 

週案には、1週間の保育におけるねらいや内容、指導、配慮といった項目に分けて記載します。ねらいには、1週間で子どもたちのどのような成長を目指すのか、内容にはねらいを達成するために、1週間どのような活動を行うのかについて記載します。

 

指導、配慮には内容で設定した活動をするにあたって、保育士がどのような指導、援助を行うのかについてまとめましょう。

 

月案で設定したねらいが食事のルールやマナーに関する内容であった場合は、1週目にルールやマナーについて本を読む、2週目には給食時間に保育士がお手本を見せ、3週目に実践するというように、徐々にステップアップするように考えることがポイントです。

 

月案で設定したねらいが自然に関することならば、屋外での活動も必要になるでしょう。そのような場合は、晴れの場合や雨の場合というように、それぞれのパターンで考えておきましょう。

 

週案を作成する場合には、ねらいを達成するためにどのような活動を行えばいいのかを軸に考えると、スムーズに作成できます。週案は1週間で達成できる内容になるよう、子どもたちの様子を意識して考えることが重要です。

日案

日案とは、週案で設定したねらいや内容を達成するために、毎日どのような活動を行うのかを記載した具体的な計画のことを指します。

 

日案には子どもたちが登園してから降園するまで、どのようなスケジュールで保育するのかを時系列に沿って記載します。時系列で計画することで、月案や週案よりもより詳細に、子どもたちの行動や保育士の行動を把握することができるのが、日案の特徴と言えます。

 

日案は、保育園によって毎日作成するか行事の日のみ作成するかが異なります。日案に記載する内容は、以下の通りです。

 

・内容
・予想される子どものすがた
・環境、援助、配慮

 

次に、日案の書き方の一例を紹介します。

 

8:00
【内容】
順次登園、自由遊び
【予想される子どものすがた】
自分の荷物をロッカーに片付ける
【環境、援助、配慮】
荷物を片付けていない子どもに声を掛け、片付けるように促す。
スムーズに朝の会ができるように、おもちゃはあまり出さない。

 

9:00
【内容】
朝の会
【予想される子どものすがた】
担任の前に整列して座り、話を聞く。
【環境、援助、配慮】
おもちゃが片付けられていない場合は片付けるように指導する。

 

このように、日案を作成する場合は、時間ごとに各項目に分けて記載する必要があります。また、日案を作成する際には前日の子どもたちの様子を踏まえて、翌日にどのような保育、活動を行えばいいのかを考えるようにしましょう。

 

日案はあくまで計画ですので、天候や子どもたちの体調、欠席人数などに合わせて柔軟に対応しましょう。

保育園の月案とは

月案とは保育指導案のうちの1つで、子どもたちに適切な保育をするうえで欠かせないものです。保育指導案は保育指導計画とも呼ばれています。

 

厚生労働省の保育所保育指針解説書では、指導計画について保育所は、具体的な保育が適切に行われるよう、長期的に子どもの生活や発達を見通した指導計画を行い、子どもの生活に適した短期的な指導計画を作成しなければならないとされています。

 

この短期的な指導計画が、月案や週案、日案と呼ばれるものです。月案は、毎月保育士が作成しなければなりません。そして、子どもたちがどのような園生活を送るのかについてまとめるのが月案です。

 

月案の具体的な内容としては、子どもたちの様子を踏まえて設定した活動内容やねらい、それによって子どもたちがどのようになるのかという予想、保育士の援助についてまとめます。

 

保育園によっては活動内容やねらいなどに加えて、保育室の環境や環境に関する援助といった環境構成や家庭や地域との連携、食育に関する項目が設けられることもあります。

 

また、多くの保育園では、年間指導計画と月案は長期的な計画、週案や日案は短期的な計画として分類されています。

 

月案を作成する際には、年間指導計画で設定した目標を達成するために、子どもたちが1ヶ月間でどのように成長し、どのような能力を育むのかについて書かなければなりません。

 

現在の子どもたちの様子を的確に把握して、具体的に計画を立てることが求められます。

 

出典:保育所保育指針解説|厚生労働省

月案はいつ作る?

月案作成スケジュール

月案は毎月作成しなければなりませんが、担当する子どもの年齢や成長、発達を踏まえて記載する必要があるため、完成まで時間を要する保育士も少なくありません。

 

一般的に月案は、前月の3週目や月末に作成し始めることが多いと言われています。前月の子どもの様子を踏まえて作成する必要があるため、どうしても月の前半に作成することは難しくなってしまいます。

 

保育園によって、月末の職員会議で提出する、大まかな計画を初旬に提出したのち詳細な計画を立てるなど、スケジュールは様々です。

 

スムーズに月案を作成するためにも、初旬にメモを取り、中旬に下書きを行うなど計画を立てると安心です。

【3月・0歳児】月案の文例

月案や週案、日案は、受け持つ子どもたちの年齢に合わせて作成する必要があります。今回は、0歳児の3月の月案の作成例を紹介します。

前月の子どもの様子

泣くことで保育者に欲求を伝えることができるようになった。
あーなどの喃語を話し、自分の気持ちを言葉にしようとする姿が見られた。
保育者の真似をして、多くの動きができるようになった。

 

すでに紹介したように、月案を作成する際には前月の子どもたちの様子を踏まえた内容にする必要があります。スムーズに月案を作成するためにも、上記のように予め振り返ってみるとよいでしょう。前月の子どもたちの様子を整理できたら、ねらいを設定しましょう。例文は以下の通りです。

ねらい

保育者とのスキンシップを通して、安定した人間関係を築く。
進級に向けて、保育者や友達と新しい環境に慣れる。
身の回りの音や物に興味を持つ。
絵本などを通して、身の回りの物の名前を覚える。
体を動かして元気に過ごす。

 

3月は、4月から進級することを踏まえた内容になるよう意識することもポイントです。その月、行事に合ったねらいを設定するようにしましょう。

 

ねらいが設定できたら、内容に移ります。

活動内容

保育者との遊びを通して、様々な音や運動遊びを楽しむ。
寒暖差に配慮した環境を整え、気持ちよく過ごす。
新クラスの担任とふれあい、信頼関係を築く。
保育者と共に手洗いや片付けを行い、自分の身の回りのことを進んで行うようにする。
友達と一緒につみきやおままごとなどの遊びを楽しみ、どうぞ、ありがとうといった言葉を交わして交流する。

 

活動内容を記載したら、環境構成へ移りましょう。

環境構成

室温の調整のため、定期的に換気を行う。
安全に伝い歩き、歩行ができるように、棚に保護クッションを設置する。
イラスト付きのポスターを用いて、身の回りのことややり方について示す。
子どもたちが真似をしやすいように、体操などの時間は大きくゆっくりと動く。

 

環境構成の項目には、子どもたちが安全に過ごせるよう環境に関する援助について記載しましょう。続いて、予想される子どものすがたを記載します。

予想される子どものすがた

泣く、笑うなど自分の気持ちを表現する。
自分のことを自分でしたいという気持ちが芽生え、保育者の援助を拒む場面がある。
エプロンをする、ぬいぐるみのお世話をするなど、保育者や保護者の模倣をする。
音楽に合わせて体を動かす、手をたたくといった姿がある。
同じ場所にいるお友達と自然に関わり、一緒に遊ぶ。

 

予想される子どものすがたには、子どもたちの普段の様子を踏まえてどのような姿を見せるのか予想し、記載します。続いては、家庭との連携について記載していきましょう。

家庭との連携

進級に際しての不安などに耳を傾け、気持ちに寄り添う。
登降園時に、積極的に保護者とコミュニケーションを取る。
1年間の子どもの発達を保護者に伝え、喜びを共有する。

 

3月、4月など新生活が始まる時期は、特に不安を抱く保護者も多くなります。家庭との連携には、保育士としてどのような配慮をすべきか記載するようにしましょう。家庭との連携を記載したら、食育に関して記載します。

食育

自分で食べたいという気持ちを尊重して、保育者のサポートは必要最小限にとどめる。
いただきますやごちそうさまなど、挨拶をきちんと行う。
笑顔で給食時間を過ごして食事が楽しい時間であることを伝える。
適量のおかわりができるように、調理士と連携を取る。

 

食育では、乳児期から食べ物や食事に興味が持てるように関わることが大切です。食事することの大切さが伝わるように、歌などの遊びを取り入れても良いでしょう。

週案の書き方とは?

週案は、月案を参考に、より具体化した内容で1週間の活動を明確にする保育指導案です。週案を作成することによって、週単位の保育内容と保育士の皆さんがやるべきことを把握できます。

ねらい

ねらいとは、子どもがどのような資質や能力を身につけてほしいのかを考え、1週間の中で達成できそうなことを設定するものです。半年や1年といった長期での目標とは違い、1週間という限られた時間で、実現可能な内容にすることが大切です。

 

厚生労働省の保育所保育指針の養護の理念には以下の様な記載があります。「一人一人の子どもが、周囲から主体として受け止められ、主体として育ち、自分を肯定する気持ちが育まれていくようにする」。

週案のねらいによって、月案では表現できなかった詳しい内容や細かい点も明確にできるため、週の計画をより具体的に把握できる資料として保育の現場に定着しています。

 

 

 

活動内容

活動内容は、保育園での1週間の具体的な活動を書きます。

 

活動内容を書くときは、ねらいを実現するために、具体的にどのような活動をするのかを考えましょう。活動の内容と併せて、子どもの感じ方や保育士がどう働きかけるのかもイメージして書きます。

 

ポイントとして、ねらいに書いたすがたへ子どもたちが成長するために、この遊びが必要、この経験が有効、といった相関を意識すると良いです。

 

最後に、1週間で実行、実現できる内容になっているか、チェックするようにしましょう。

予想される子どものすがた

予想される子どものすがたは、活動内容によって予想される子どもの成長を書きます。活動を通して、子どもが何に対して興味を持ち、どのような行動をするかを想定し書きましょう。

 

子どもは一人ひとりに個性があり、どのような行動をとるかは一律ではありません。そのため、子どもの性格やタイプによって、考えられるすがたをすべて書き出すように意識しましょう。

 

例えば「新しい遊びに戸惑いぐずる子どもがいる」「新しい遊びを喜び、はしゃぐ子どもがいる」などは、正反対ですが両方想定される行動です。

保育者支援

保育者支援は、活動の内容の中で、保育士が行うべき援助や業務内容を書きます。子どもへどのように指導するか、あるいはどのように声をかけるか、といった具体的な援助に関する注意点を詳しく書きましょう。

 

ポイントとしては、実際に起こる可能性があるトラブルやハプニングを想定した上で、そのような事態に保育士さんがどのような援助を行うのかを書くことが大切です。

 

活動内容と子どものすがたを良くイメージした上で、適切な援助方法について書きましょう。

年齢別の週案(ねらい)の例文

ここからは子どもの年齢別に、ねらいの作成方法を説明します。子どもの年齢によって発達や特徴の違いがありますので、そういった点に着目すると実際に活用しやすくなります。

0歳児

0歳児は喜びや不安の気持ちを表現しようとするなど、心と身体の機能の発達が目覚ましい時期です。保育者の見守りによって、安心して過ごせるように、安全な環境づくりや情緒を安定させる関わり方を意識しましょう。

 

(例)子どもが保育者に慣れ、安心感を持てるように、声かけをしたり抱っこをしたりするなど、積極的に関わる

 

0歳児は、保育者が落ち着ける環境を整え、触れ合うことによって安心できる保育を行うようなねらいを設定すると良いでしょう。

1歳児

1歳児は自立心が芽生え、周囲の友達や環境への関心や興味が広がり、言葉の発達もこの時期から始まります。そのため、1歳児の週案では、友達との関わりを盛り込み、子どもの関心や興味の広がりに着目すると良いと言えます。

 

(例)友達や保育士と一緒に楽しく遊ぶ
(例)友達と関わりを持って、一緒に遊ぶ

 

子どもの自立心と関心が育つ時期であるため、周囲の環境に関わることへつながるねらいを取り入れてみてください。

2歳児・3歳児

2歳児・3歳児になると体を動かすことも多くなります。

 

2歳児は、走る、ジャンプするといった運動ができるようになる時期です。運動に関するねらいを作るのが良いでしょう。

 

(例)かけっこやボール遊びで身体を動かし楽しく遊ぶ

 

3歳児は、食事やトイレなどの基本的な生活行為を自立してできるようになる時期です。また、社会性が身につく大切な時期でもあります。遊びにルールを取り入れたり、友達と関わったりするようなねらいを作ってみてください。

 

(例)自分の持ち物やしまう場所を覚え、自分のものを使うことを理解する

4歳児・5歳児

4歳児は知的好奇心や想像力が発達し、今までできなかった難しいことが少しずつできるようになってきます。道具を使って物を作ることや、かくれんぼなどのルールがある遊びを盛り込むと良いでしょう。

 

(例)ルールのある遊びを通して、みんなで遊ぶ楽しさを知る

 

5歳児は、想像力や判断力が発達するとともに協調性が育つ時期です。友達と協力して何かに取り組もうとする場面を作ることを意識しましょう。

 

(例)友達と一緒に制作物を作り、協力して完成させる

 

4、5歳児は、自発的な子どもの行動を促す週案を書きましょう。

週案を書く時のポイントとは

週案は子どもの年齢に合わせ、1週間で達成できる内容になっていることが基本です。月全体の流れの一部として考え、日ごろから子どもの様子をよく観察して作りましょう。

園の方針に沿う

週案はそれぞれの園の方針に沿って作らなければいけません。保育士さんは週案を作るときに、園の保育方針に沿った内容になっているか意識しながら内容を考えます。

 

保育士さんによって内容の統一性がなくばらばらだと、お互いのフォローがうまくいきません。週案を作ったら、他のクラスの保育士さんとお互いに情報を共有しておきましょう。

先週の様子を振り返る

週案は、先週の子どもの様子を振り返り、その時の状況に合わせて考えることが大切です。

 

子どもの様子をよく観察した上で、必要な変更を小まめに加えつつ、子どもの状態や年齢に合った週案を考えましょう。その際、保育士・園の都合や段取りを優先して内容を考えていないか、時々チェックしながら書くことが肝心です。

よく使用される言葉を理解する

子ども主体に週案の内容を考える時、欠かせない言葉、ポイントとなる言葉があります。キーワードとして意識して考えると、子どもに合わせた良い週案作りができます。

 

(例)のびのび・よろこんで・一緒に・楽しむ・ゆっくり・誘う・見守る・満足・こまめに・かかわり・スムーズに

 

これらのキーワードをいつも手元に用意し、週案作成時に活用するようにしましょう。

月案や年案と統一性を持たせる

週案は単に1週間の予定や段取りを決めるものではなく、年案・月案と連続性や相関をもたせて作成し、統一性のある内容にすることが大切です。

 

年案・月案・週案の連続性に不備があると、子どもたちの成長や発達に影響する可能性もあるため注意が必要です。統一性、一貫性のある計画を作るように意識しましょう。

まとめ

保育園の指導計画は、年間指導計画をベースにしてより具体的な保育の計画を立てていくものです。月案、週案、日案は、子どもたちの成長を促し、適切に保育するうえで重要な指導計画です。

 

例えば、月案には前月の子どものすがたやねらい、内容、環境構成、予想される子どものすがたなど多くの項目が存在します。どの項目も、充実した保育を行うために欠かせないものであると言えます。

 

まず第一に担当する子どもたちの様子や年齢を考慮して、保育指針の内容や作成時のポイントを理解したうえで書くように心掛けてみませんか?