「残業」は保育士の離職理由第2位!

2018年度の東京都保育士実態調査によると、保育士の離職理由は1位「給料」、2位「仕事量が多い」3位「労働時間が長い」という結果になっています。人手不足の保育業界において「残業」の対策がどれだけ求められているか、よくわかるデータです。

第1位の給料については、国を挙げた対策が行われていますが、私立・公立の違いなど施設ごとの運営事情もあるため、すぐに改善することは難しいかもしれません。しかし、残業時間は運営者の努力や工夫で改善できる可能性があります。

保育士の残業時間の実態は?

当たり前ですが、保育士の残業時間は勤務している施設によって異なります。
2018年、名城大学蓑輪明子助教授らの調査では、名古屋市内の認可保育園で働く保育士の時間外労働は月平均16.6時間にも及んでいます。また、時間外労働のうち、超過勤務手当が支払われているのは平均3.6時間で、それ以外はサービス残業となっているそうです。
具体的には、どんな内容の業務で時間外労働、残業をしてしまうのでしょう。

勤務時間前の時間外労働

先の調査によると、勤務時間前の時間外労働は、保育準備、鍵開け、保育室等の環境整備(ゴミ出しや空気の入れ替え、掃除)など朝特有の業務が特長として挙げられます。勤務時間前の15~30分、これらの業務を行ってから、登園する園児を迎えるという方が多いのかもしれません。

休憩時間中の時間外労働

休憩時間は本来、業務から離れて休息をとることが保障されている時間を指します。保育士の場合、園児が午睡をしている時間に休憩を交代で取るのが一般的ですが、実際には、休憩時間中に、連絡帳の記入、保育記録など、保育室内で子どものそばをはなれずにできる事務業務を行うことが多いようです。

勤務時間後の時間外労働(持ち帰り残業)

勤務時間後の残業は、打ち合わせ、翌日の保育の準備、保育日誌や保護者対応などが挙げられます。
また、家に持ち帰って仕事をする、いわゆる持ち帰り残業としては、月案・週案などの保育計画類や行事の準備、壁面、お便りなどの制作が多いようです。

保育士の残業時間はなぜ多くなる?

これまで保育士は勤務時間前から持ち帰り残業まで、時間場所問わず、業務に追われていることを紹介してきました。ではなぜ、保育士の残業が増えてしまうのでしょうか。いくつかの要因を挙げていきます。

事務作業が多い

一般的な事務業務というと経理や労務、総務などがありますが、もちろん保育施設にもこれらの業務はあります。職員の勤怠管理、シフト作成、給与計算、備品発注など事務を担当する職員を採用している施設もありますが、保育士がこれらを兼任するケースもあります。
さらに保育士ならではの事務業務といえるのが保育書類の作成です。保育の質を高めるためには、子どもの発達を理解し、実践した保育の振り返りが欠かせません。保育の振り返りを行うためには、保育計画書類を作成し、子どもたちの活動の様子を記録する必要があります。
保育計画は、長期計画(年間・月間)と短期計画(週案・日案)があります。長期計画は子どもの発達や季節に応じた内容で作成するのに対し、短期計画は子どもの関心や生活の実態に即して作成します。
また、保育記録の仕方も様々です。日誌や週日案や個人記録などが継続的に行うことで子どもの理解を深めていきます。
これらの書類作成だけでなく、保護者への連絡帳の記入、行事の準備で衣装や小物だけでなく、季節にあった壁面を手作りすることが求められるため、子どもと関わる時間以外の事務作業の量が多いと言えます。

配置人数が少ない

保育の多様化やコロナ対策など安全管理の徹底など、業務量は年々増えているにも関わらず、国が定める保育士の配置基準は、他国に比べ少ないことも要因の一つと考えられます。特に、3歳児からは保育士1人で20人の保育にあたり、4歳以上児は保育士1人で30人の保育にあたります。これでは、園児の安全に目を配るのも大変ですし、1人に係る負担が大きいです。

配置基準(保育士1人で保育にあたる児童の人数)

 0歳1歳2歳3歳4歳以上
日本3人6人6人20人30人
イギリス3人3人4人13人13人
ドイツ3.75人3.75人4.75人9人9人
ニュージーランド5人5人10人10人10人

全国小規模保育協議会より作成
以上のような理由から、勤務時間内に仕事を終えることができずに残業や持ち帰りをすることが常態化してしまうといえます。
では次に、貴重な人材を確保・維持するために、残業を削減する方法について、まとめていきます。

保育士の残業を減らす5つの方法

保育園業務に特化した残業削減方法を5つご紹介します。やっていないものがあれば、ぜひ試してみましょう。

余裕を持った計画と業務の見える化

イベントは保育業務の中で負担が大きいもののひとつです。イベント時期から逆算して作業を開始し、計画的に進めることで日々の業務に余裕を持たせられます。

イベントにともなう作業内容はTODOリスト化することもおすすめです。「いつから・だれが・どのように」業務を行うのかを明確にして、一日当たりの業務時間、一人にかかる負担が大きくならないように配慮して早期から進めましょう。

テンプレートやフォーマットを用意する

定期的に作成する保護者向けのおたよりや、職員間で共有する保育計画などの書類作成は、毎回悩むことがないように定型のテンプレートやフォーマットを可能な限り用意すると、作業効率が格段にアップします。

保護者向けのおたよりであれば、季節ごとに伝えたい内容をまとめておく、あいさつ文などの固定部分はあらかじめテンプレートに記載しておくと、より短時間で作成できるでしょう。

保育計画の作成では、これまでの計画をすぐに参考にできるよう分かりやすい場所に置く、年齢ごとに気を付けるべきポイントをまとめると、作成時に悩む時間が減り、保育計画のマンネリ化防止にもつながります。

チームを組んで業務を分担する

保育士が一人で業務を抱え込まないように、チームで業務を行える体制づくりも残業削減に有効です。

各自の担当業務を全員が把握できるように情報を共有して、お互いに助け合えれば、一人あたりの負担を軽くできます。個人ではなくチームで業務にあたれるよう、動きやすい配置や連絡方法を検討してみましょう。

事前の情報共有で会議を短縮する

多くの園では定期的に職員会議が開催されていますが、事前に情報共有しておけば、会議ではポイントを伝えるだけで済むので、時間を短縮できるでしょう。

議題や資料を事前に共有できれば、参加者も前もって意見や考えを整理できるので、より有益なミーティングになります。

会議資料は余裕をもって作成するようにし、事前に情報共有できる体制を整えましょう。

ICT化で業務を効率化する

手書きで行う連絡帳や保育の記録、計画書の作成などは、日中は保育に集中しなければならない保育士にとって、残業の大きな原因となります。

こうした事務作業は保育ICTシステムの導入によってかなり軽減できます。ICTとは、情報通信技術を利用して業務の効率化を図ることです。

パソコンやスマホ、タブレットなどを使用して、連絡帳や計画書、記録などをデータ化することで記載や確認作業がスピーディーに行えるほか、園児の連絡先やアレルギーの有無などの重要情報の管理も、より簡単により正確にできるようになります。

給食のレシピや子どもたちの写真を保護者と共有することもできるので、保育士の負担を減らしながら、職員間や保護者とのコミュニケーションもより密に行えるのも魅力です。

多忙な時期をフォローできる変形労働時間制

残業削減対策として変形労働時間制も注目を集めています。変形労働時間制とは、月や年単位で業務量に合わせて労働時間を調整できる制度です。

一般的な残業の考え方では、法定労働時間「原則1日8時間、週40時間まで」を超えた労働時間は「残業時間」となります。

変形労働時間制では、仮に月単位で規定した場合、ひと月のトータルで規定労働時間を設定します。業務量が少ない月初は1日の勤務時間を6時間に、忙しくなる月末は1日の勤務時間を10時間などに調整できるため、暇な時期は早く上がり、その分多忙な時期に働くといった無駄のない働き方が可能です。

保育士にとっては労働時間の最適化となり、施設側にとっては人件費の削減につながるでしょう。

業務改善におすすめの保育ICTシステムとは

保育ICTシステムを導入すると、業務効率化はもちろん、シフトが複雑になる変形労働時間制にも対応が容易になります。保育士不足が深刻化する昨今、多くの保育の現場では保育ICTシステムが導入されています。

おすすめの保育ICTシステム、株式会社CHaiLDの「CCSPRO」を例に具体的なメリットを見ていきましょう。

  • 様々な計画書、書面のテンプレートや例文が利用できるので、事務仕事にかかる時間も大幅に削減できる
  • 職員間、職員と保護者間での情報共有もオンラインでスムーズにでき、写真入りの成長記録も共有できる
  • 園児の登園予定管理、実際の登降園の記録も可能で、各職員のシフトに合わせた配置人数も算出できる
  • 職員の勤怠管理や残業時間の把握もオンラインで管理でき、昼休憩などの中抜けや変形労働時間制にも対応できる

このように、これまで多くの時間や人手が必要だった業務も、保育ICTシステムを導入すれば自動化でき、業務時間を大きく短縮できます。

保育士、保護者、園の運営者にとって、多くのメリットがある保育ICTシステムを導入して、より安定した保育を実現しましょう。

まとめ

保育士の離職理由は残業や業務量の多さが上位にあげられています。人手不足が続く昨今、早急な対策は急務といえます。

保育園の有効な残業対策として、余裕をもったイベント準備やチーム化、会議前の情報共有、法定労働時間を効率的に使える変形労働時間制などがあげられますが、そのすべてにおいて業務のICT化が効果を発揮します。

保育ICTシステムは計画書などの作成や情報共有を容易にし、複雑なシフトにも自動計算で対応できます。保育士の負担を大きく減らし、残業時間の削減にもつながるでしょう。

参考文献:
あいち保育労働調査プロジェクト愛知県保育労働実態調査 結果報告 2018年3月9日
全国小規模保育協議会