保育所で適切に子どもを保育するために必要な保育指導案の作成は、ときに保育士の大きな負担となります。また、毎月や毎週、毎日など頻繁に作成する必要があるため、保育指導案の内容に悩んでしまう人も多いでしょう。

 

ここでは、保育指導案の書き方や年齢ごとの記入例を紹介します。また、作成するポイントもまとめているため、内容に悩みがちな保育指導案をスムーズに作ることができます。

保育指導案とは?

 

保育所などで保育の方向性を示し、保育内容を具体的に設定するものが「保育指導案」です。これは「指導計画」とも呼ばれ、子どもをどのように支援・指導していくかを明確にしていく計画書です。

 

子どもの保育に関しては、厚生労働省が示している「保育所保育指針」に沿って適切になされる必要があります。この指針では長期指導案および短期指導案について、それぞれ言及されています。

 

なお、保育指導案は各園の理念や指針を考慮し、年齢ごとやクラスごとに分けて作成するのが一般的です。

指導案作成前にやることは?

保育指針や保育理念を共有する

保育指導案を作成するためには、職員全員が保育理念や保育指針を共有しておくことが重要です。保育理念や保育指針に沿って作成する保育指導案を組織的に運用できるよう、職員全員が同じ方向性を持つ必要があります。

 

クラスごと、または作成者ごとに方向性が異なると、子どもたちや保護者、また保育士自身も戸惑いかねません。職員全員が保育に対する理念や指針について共通認識を持てる場を設けましょう。

保育指導案の書き方を統一させる

保育指導案の書き方は、ある程度統一させましょう。明確なルールがないと指導案のクオリティーに差がついたり、現場が混乱したりします。

 

たとえば、「です・ます調」と「だ・である調」を使い分ける、文章の途中で主語が変わるような書き方は避けるなど、書き方を統一するための具体的なルール決めをします。

 

このように明確な書式を決めることで、作成時間の短縮や抜け・漏れ防止にもつながり、効率よく運用できるでしょう。

子どもたちの様子をしっかり観察する

質の良い保育指導案を作成するためには、園児と園の様子をしっかりと観察することが重要です。園の理念や指針だけでなく、子どもの年齢や園の雰囲気によっても保育指導案の内容や方向性は変わります。

 

発達段階ごと、年齢ごと、クラスごとの特徴に注意しながら、子ども達を丁寧に観察しましょう。また、年間計画は1年後の子どもを予測することも大切です。現状を正しく把握してこそ、達成できるであろう目標を適切に設定できます。

【期間別】保育指導案の記入例とポイント

年案(長期指導案)

保育指導案には長期指導案である年案(年間計画)、短期指導案である月案、週案、日案の順に作っていくのが一般的です。

 

年案(年間計画)は4月から翌年3月までの1年を通して継続させたいことや達成させたい目標を設定します。また、家庭や地域と連携し、季節の変化を通して豊かな心を育てるための行事や体験を取り入れると良いでしょう。

 

ただし、予定や行事を詰め込みすぎないようにすることも大切です。

月案・週案・日案(短期指導案)

月案や週案、日案などでは短期的な保育の見通しを示す短期指導案を作成します。月案は年案を達成するために、週案は月案を達成するために、それぞれ内容を落とし込みます。

 

その時期の子どもの興味や発達段階に応じて、なるべく実態に即した内容にしましょう。行事だけでなく生活や遊びの中に新しい要素を付け加えたり、連続性を尊重させたりするなど、より子どもの様子を注意深く観察しながら作成していくことが重要です。

【年齢別】保育指導案の書き方とポイント

0歳児書き方・ポイント

0歳児は見る・聞くなどの五感や座る・歩くなどの運動機能が著しく発達する時期です。

 

そのため、保育をするうえでは愛情豊かな関わりと心身・発達における丁寧な観察が必要になります。0歳児は月齢によって差が大きいため、保育指導案には長期・短期ともに月齢に応じた関わりが求められます。

長期指導案運動機能の発達や離乳・発語の促し、自然や季節を感じる散歩、生活リズムの調整
短期指導案お座りや伝い歩きを補助する、喃語・発語へ応答する、月齢に応じた遊びをする

1歳児書き方・ポイント

1歳児は歩く・走る・跳ぶなど運動機能が発達し、自立のための身体機能も整っていく時期です。また、物事への関心が強まり、喜怒哀楽も明確になります。

 

保育士は保育指導案の中で、子どもの自立へ向かう行動や子どもが持つ興味・関心を温かく見守り、行動や情緒のサポートをする必要があります。

長期指導案言葉の発達や自我の芽生えの促し、外遊びや体を動かすことへの喜び、周囲への興味
短期指導案問いかけや甘えへ応答する、食事や排せつに興味を持たせる、外遊びや散歩に連れ出す

2歳児書き方・ポイント

2歳児はさらに身体機能が発達し、言語表現が広がります。また、自立心が強まるため、自分でやりたい気持ちが強くなるでしょう。

 

2歳児の保育指導案には、そのような発達や成長に伴った促しや支援とともに、生活習慣も身につけていく必要があります。また、非常に行動が活発になるため安全面や衛生面に関する注意も大切です。

長期指導案生活習慣の定着、他者との関りの拡張、体を動かす喜びの獲得
短期指導案食事や着替え、排せつをサポートする、ごっこ遊びや貸し借りなど他児との関りを深める、安全な場所での外遊びで体を動かす

3歳児書き方・ポイント

3歳児は体力と知恵がつき、ある程度大人の言葉を理解したうえで納得したり反抗したりするのが特徴です。

 

そのため、3歳児の保育指導案は、生活習慣を定着させるとともに、他者への思いやりや他者の気持ちを配慮するような関わりが大切になります。また、自分の名前を書く練習をするなどひらがなの読み書きも始めるころです。

長期指導案生活習慣の定着、優しさや思いやり、感謝の気持ちの育成、文字の習得
短期指導案着替えや排せつ、片付けを促す、ありがとうと感謝する気持ちを伝える、体を動かす遊びや指先を動かす作業をさせる、ひらがなで自分の名前を書く

4歳児書き方・ポイント

4歳児は身体・運動能力が発達し、より活発になります。また、社会性や言語の発達も著しく、自己解決力や自意識が芽生えてきます。

 

4歳児の保育指導案は、社会性や言語の発達を促すようなゲームや遊びの展開が中心となるでしょう。また、ゲームや遊びを通してルールやマナーを学ぶ時期でもあります。

長期指導案健康管理への意識向上、年下児との異年齢交流、ひらがなの習得
短期指導案手洗い・うがいを促す、話し合いでゲームや遊びを決める、絵の具による作品を作る、年下児との合同遠足

5歳児書き方・ポイント

5歳児は言語能力や記憶力、コミュニケーション能力などが向上します。そのため、友達と時間やものを共有したり他者と関わったりする喜びを感じられる時期です。

 

5歳児の保育指導案では、人の意見を聞き、自分の気持ちを伝える機会を増やせるような提案をしていきます。また、小学校進学に向けて自立心を養っていくことも重要です。

長期指導案自立した生活習慣の獲得、集中力や責任感、他者への思いやりの育成
短期指導案給食当番や掃除当番などの役割を与える、 アクセサリー作りなど細かい作業をさせる

保育ICTシステムでスムーズな書類作成を

 

保育指導案は年齢ごとに内容が異なります。また、日案や週案など頻繁に作らなければいけないため、保育士の大きな負担となっているのが現状です。

 

それを少しでも省力化したい場合はICT化をおすすめします。特に保育業務支援システムCCS(Child Care System)は、ほとんどの事務作業を一括管理でき、保育士1名分の業務を削減できると試算されています。

 

保育指導案については前年度コピーや参考例文付きなどの機能により、事務作業が大幅に軽減できるでしょう。

まとめ

保育指導案は、園の理念や雰囲気だけでなく、子どもの成長や個性に合わせて修正を加えながら運用していきます。そして、それを作成すること自体を目的とすることなく、より良い保育のために活用される必要があります。

 

保育指導案の作成が負担になり、保育の質を下げてしまうような場合は、保育のICTシステムを導入するなど、効率よく保育指導案を作成できる手段を考えていきましょう。そして、より質の良い保育を目指してください。