1.保育園のお昼寝について

厚生労働省の「保育所保育指針」でお昼寝(午睡)は「生活のリズムを構成するうえで重要な要素」とされています。
午睡中の不調に対して見落としが無いよう見守るために、より細やかな見守りが必要です。

 

保育園ではお昼寝の時間を設けることで、以下3つのメリットがあるとされています。

・子どものぐずりを予防できる

・子どもの睡眠不足を解消できる

・手の空いている保育士が事務作業に充てる時間を確保できる

 

「保育所保育指針」ではお昼寝の時間帯や時間数に規定は設けられていません。
疲れて眠くなってしまった子どもの機嫌が悪くなってしまわないように、子どもにとって安心して眠ることのできる安全な睡眠環境を確保するように心掛けましょう。

 

【参考】保育所保育指針

 

一般的に5歳以下の子どもは1日10時間以上の睡眠が必要とされているため、夜間の睡眠だけでは睡眠時間が確保できていないケースが少なくありません。
1日に必要な睡眠時間を保育園という安全な環境で確保することで、子どもの成長の為に必要な睡眠時間を補うことができます。

 

子どものお昼寝時間は、手が空いている保育士が連絡帳やおたよりの作成といった事務作業に充てられる時間てしても活用できるため、保育士にとっては1日の中で唯一事務作業を行う時間帯でもあります。もちろん、定期的にお昼寝をしている子どもの状態チェックすることが大前提の時間ではありますが、すきま時間をうまく活用することで効率的に仕事を進められるでしょう。

 

近年、さまざまな観点からお昼寝によるデメリットも指摘されるようになりました。

・子どもの生活リズムが乱れる

・卒園後、お昼寝の習慣が抜けにくい

・お昼寝の時間に眠ることができない子どもがストレスを感じてしまう

 

子どもは大人よりも多く睡眠を取らなければならないわけですが、保育園で一斉にお昼寝時間を設けることで、その日お昼寝が必要のない子どもも睡眠時間を設けることで、かえって生活リズムが崩れてしまう、といったデメリットや、お昼寝が習慣化して小学校に入ってからもお昼寝の時間に眠気が来てしまったり、眠たくないのに寝かしつけられることにストレスがたまってしまう、といったデメリットにも近年、着目されています。

2.最適とされている子どものお昼寝時間

0歳

0歳児は2~4時間のお昼寝が最適とされています。月齢によって必要なお昼寝の時間は変わるため、朝寝・夕寝を加えてお昼寝時間を確保することも検討しましょう。

登園時間にもよりますが、お昼寝の時間は正午頃に2時間を目安に設け、生後6カ月未満の場合は1時間の朝寝と1時間の夕寝、生後6カ月以降は夕寝をなくし朝寝も30分に減らすといったように調整していくと良いでしょう。

1~2歳

1~2歳児は1時間半~2時間半のお昼寝が最適とされています。朝寝の時間をなくし、正午頃にまとめて長いお昼寝を取るようにします。15時頃までに起こすと、夜間の睡眠への影響を最小限に抑えられるでしょう。

3歳

3歳頃から徐々に個人差が大きくなり、お昼寝を必要としない子供も出てきます。子供が夕方頃に眠そうな様子を見せる場合は、1時間程度のお昼寝時間を設けるのが望ましいでしょう。

ただし、寝かしつけても眠れない、お布団に入るのを嫌がる園児は無理にお昼寝させる必要はありません。

4~5歳

4歳頃になると、8割以上の子供がお昼寝を取らずに一日活動できるようになると言われています。何歳までお昼寝が必要かは所説ありますが、近年では年中・年長クラスではお昼寝時間を設けない保育園も増えてきました。

子どもの様子や保護者の希望、当日の活動内容によっては、30分程度お昼寝の時間を調節してください。

 

【参考】未就学児の睡眠指針 厚生労働科学研究費補助金 未就学児の睡眠・情報通信機器使用研究班

3.お昼寝をするための環境設定

お昼寝には、子どもが快適に眠れるような環境を作ってあげるための3つのポイントをご紹介します。

室温と湿度

居心地の良い温度と湿度のコントロールを心掛けましょう。
夏はエアコンを使用して28度前後に室温を保ち、場合によっては除湿機を利用して湿度を60%程度に抑えます。

反対に、冬は乾燥しやすいため、感染症対策も兼ねて加湿器を利用しましょう。室内を暖かく保つことも大切ですが、睡眠時は体温が上がりやすいため、服の着せすぎ、布団のかけすぎによって子どもが息苦しそうにしていないか、お昼寝中の子どの様子から配慮をしてあげてください。

明るさ

お昼寝時間には電気を消し、カーテンを閉めて薄暗い環境を作ります。薄暗い環境をつくることで子どもがお昼寝の時間だと認識しやすくなる、光の刺激を除去してゆっくり休息できるといったメリットがあります。

ただし、暗くし過ぎると監査時に指摘を受けてしまったり、子どもの様子を確認しずらくなってしまうため、遠くからでも子どもの表情や顔色を見られる暗さに調節しましょう。

同じ場所で寝かせる・配置の問題

いつもと同じ部屋、同じ配置で寝かしつけることも大切です。慣れた環境だと安心するので落ち着いて眠ることができます。

子どもの寝る場所の配置は、一人ひとりの特性を踏まえて決めましょう。隣にいると興奮してつい遊んでしまう子ども同士は離してみたり、仲良い子が周りにいないと寝つけない子ども同士は隣にするといった配慮を心掛けましょう。

 

【参考】保育所保育指針解説

4.子どもを寝かしつけるコツとは?

お昼寝の時間帯に上手に眠れない子どもを寝かしつけるコツも見ていきましょう。子どもがお昼寝しやすい配慮を行うことで、子どもが安心してお昼寝をすることが増えていき、保育士の負担を軽減することもできます。

背中やお腹をトントンする

背中やお腹をトントンは王道の寝かしつけです。背中やお腹を一定のリズムで優しくトントンをすることで、安心して寝入ることができます。子どもによって好きなトントンの速さ・強さは異なるため、子どもの様子を見ながら調節してあげてください。

抱っこやおんぶをする

お布団で眠れない場合、抱っこやおんぶをするとスムーズに寝入ることができます。抱っこやおんぶをしながら優しく体を揺らし、子どもが寝入ったタイミングでそっとお布団に入れてあげましょう。中々寝付けない子どもには、立ち上がった状態の抱っこやおんぶから徐々に布団での寝かしつけに移行するなどの工夫をしてみてください。

添い寝をする

他の方法を使ってもうまくお昼寝してもらえない場合には、子どもが安心をして寝入ることができるように添い寝を試してみてください。体温が伝わるように寄り添うと、人のぬくもりを感じることで安心をして、スムーズに寝入りやすくなります。

5.子どもを寝かしつける時の注意点とは?

子どもの睡眠中は、窒息や乳幼児突然死症候群(SIDS)の発症といったリスクがあります。お昼寝中の事故を防ぐために、保育士は子どものお昼寝中のチェックを怠ってはいけません。

 

SIDSは健康な乳幼児が何の予兆もなく睡眠中に死亡する病気で、2018年には78名の乳幼児がSIDSにより亡くなっています。SIDSはうつぶせ寝にのみ発症するものではなくあおむけ寝でも発症しますが、うつぶせ寝による発症率が高いことが分かっているため、お昼寝はあおむけ寝の状態を保ってください。

 

これはうつぶせ寝による窒息死を防ぐことにも役立ちます。寝返りで下を向いてしまう可能性もあるため、保育士の方々は定期的に様子を見てあおむけに戻してあげることも大切です。

 

定期的な状態チェックは0歳児が5分に1回、1~2歳児が10分に1回と決められていることが多いです。寝る姿勢以外にも顔色や呼吸、体温を確認し、必要に応じてメモに記録しましょう。最近はお昼寝時間や身体の向きを検知し、自動で記録してくれる午睡センサーもありますので、保育士の負担軽減のために検討することもおすすめです。

 

【参考】保育所保育指針解説

6.まとめ

お昼寝は子どもの「生活のリズムを構成するうえで重要な要素」です。子どもにとって安心して眠ることのできる安全な睡眠環境を確保するように心掛けましょう。

 

子どもを寝かしつける時は、快適な室温・湿度に保ち、暗くし過ぎず安心して眠れる環境を整えてください。それでもお昼寝が上手くできない子どもは、背中やお腹をトントンしてみたり、抱っこ、添い寝といった寝かしつけのテクニックを活用して安心して眠ることができるよう配慮してあげてください。

 

定期的なお昼寝中の状態チェックを欠かすことなく、日々の危機管理を行いながら、それぞれの子どもにあった睡眠環境を担保しましょう。

 


参考文献:

厚生労働省

保育所保育指針

厚生労働省

保育所保育指針解説

愛媛大学医学部附属病院 睡眠医療センター

 未就学児の睡眠指針 厚生労働科学研究費補助金 未就学児の睡眠・情報通信機器使用研究班

午睡チェックセンサー CCS SENSOR