少子化の背景にある、「子どもへの愛情」という驚きの分析結果

社会学者の山田昌弘氏の『日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?』(光文社新書、2020年)という本があります。その150ページで、日本の少子化の原因分析として、次のように述べられています。

「多くの人は、『世間並みに子どもを育てられない状況に陥るようなリスクを避けるために、結婚や子どもをあきらめる』。それが少子化をもたらす最大の要因だと私は判断している。これは、単に世間体という外圧的な圧力だけではなく、こどもへの愛情に基づくので、なかなか変えることは難しい。」

なかなかショッキングな指摘ではないでしょうか。この思考を支えているのが、子どもを「より良く育てる」のが親の使命であるという、東アジア特有の考え方であるとも論じられています。欧米では、「子どもを早く自立させること」が親の使命とされることとの大きな違いだそうです。

文化的に根深いこのような子ども観や親の使命感のあり方を、保育向けテクノロジーサービスで一朝一夕に変えることができないことは承知しています。

しかし、学習科学や認知科学の知見を踏まえて、「子どもは自分で成長してくものだし、その成長そのものが喜ばしいものなのだ」と、周囲の関係者を含めてわかり合えるように、テクノロジーでサポートし、「孤育て」からの脱却を図ることが、少しは少子化対策になるではないかと思う今日この頃です。