【最初から読む】収集したデータを徹底分析!子ども研究室のミッションとは…第1回目のインタビュー記事はこちらから。

統計的な研究において、保育の研究は他の分野と比べるとあまり進んでいない

Q:保育に関する研究はどのくらい進んでいるのでしょうか?

もちろん、これまでの長い歴史のなかで保育に関する統計データの分析は世界中で実施されています。しかし、保育の分野における研究はそこまで大きく進んでいる分野ではないというのも事実です。

例えば、看護や介護などの分野では科学的な研究が多く進められており、学術的にも確立されている部分が大きいです。そのため、私は看護理論を参考にして、日々のデータ分析をおこなっています。統計という視点で考えると、看護業界は保育業界よりも進んでいます。

保育に関する学術的な研究も多く発表されているのですが、学術研究というのは研究している人たちが解明したい仮説があって、それを証明するためだけのデータ分析に過ぎません。あまり継続性がない研究も多く、現在の保育現場に落とし込んで使える情報があまり多くない部分があります。

保育に関するデータ分析を2年以上やっていくなかで、学術研究で行われているデータの分析の目的と、現場が欲しいものは性質がまったく違うと感じましたね。

Q:保育に関するデータ分析の難しさはどのような所にあると考えていますか?

保育に関する研究は他の分野よりも進まない要因のひとつに、子どものデータを取得することの難しさが挙げられます。0歳や1歳の新生児であれば、自らの意思で行動をすることが少ないためにデータ取得のハードルはそこまで高くはないです。
しかし、3歳以上になると、データを取る側が期待するような行動をしてくれず、行動をコントロールすることが難しいという問題があります。つまり、子どもたちが元気すぎて、期待するようなデータはうまく取れないということですね(笑)

発達のパターンを見つけ出し、質の高い保育サービス提供につなげたい

Q:保育のデータ分析を通して実現したいことは何ですか?

我々が知りたいことは、世の中の一般的な3歳児が数年後にこうなります、というような類いの情報ではありません。いま目の前にいる子どもが、今後どのような発達をしていくのかということが知りたいのです。

保育の実務を行うなかで、子どものことが100%分かるようなことはありえません。しかし、サイコロを振るよりは確実なことを知りたいと思っています。子どもたちのデータを分析することで、少しでも目の前の子どもにとって良い保育を提供したいという願いで、データ分析を行っているのです。

多様なデータを解析して、データの塊から人間が一見しただけではわからないパターンを見つけるのが私の与えられたミッションです。子どもの発達において何かしらのパターンを見出すことができれば、時間軸を先に進ませた時に、どういう変化をするのか見通しも立てることができると考えています。分析したデータを生かして、質の高い保育サービスの提供に繋げたいですね。

【続きを読む】第4回 直営の保育園を持っていることの強みを生かしたデータ分析を

石塚 康志 いしづか やすし

東京大学経済学部卒。経済産業省入省後、各部署を担当の後、経済分析部門を比較的長期にわたって担当。その経験を活かし、保育現場で生まれるデータから、子どもの発達理解や保育士のスキルアップにつながる、新たなインサイトを生むべく、分析手法を開発中。

ライター:小町 ヒロキ

早稲田大学政治経済学部を卒業後、大手損害保険会社で5年間営業職として勤務。退社後、金融機関での勤務経験を生かし、Webライターとして独立。
現在は、複数のメディアにて取材ライターとして活動中。

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