アプリ技術屋がみた監査の風景

アプリの技術屋はときどき保育園の監査も見学する。今までいくつもの監査を拝見してきたが、そのたびに監査の方に勉強させていただいた。以下、これまでの断片的な情景を思い出しつつ、書きました。さすがに1日で起きたエピソードではないので、どうか誤解されませんよう。

 

 

・・・そのとき、園長の視線が一点に固まった。そしてそのまま、ゆ~っくりと前かがみに背筋を下げる。
いきなり戦闘態勢か? まさか。
口元のスマイルこそ保っているが、園長の顔からは明らかに表情が消えている。

視線を監査の方に向けたままで、水平に首をかしげる園長。緊張感は周囲のスタッフにも伝わり始めた。
向かいの席に座る監査の方は、園長のそうした様子を知ってか知らずか、総評の読み上げを変わらぬペースで続けている。はきはきした口調だが、心なしか語気が強まってきた。
いったい、監査の方の、どの言葉に引っかかりを感じたの??

この間、わずか数十秒。その後は園長も気を取り直したのか、おだやかな必殺スマイルを取り戻し、監査の方のアドバイスにリズムを合わせ、うなずきながらメモを走らせた。

————今日は園の自治体監査の日。アプリ開発の参考に、と監査の方のご厚意で見学の機会をいただけた。
そもそもなぜ、筆者のようなアプリ技術屋が監査の場にいるのか。

それは、弊社が保育園の運営とアプリの自社開発を両立しているからだ。

アプリの名前は、⌈CCS PRO⌋

主に、認可保育園や認定こども園にむけた業務支援システム(アプリ)で、弊社保育園の現場から生まれ、現場の声をもとに育て上げられた。
今年で誕生7年目。誕生以来ずっと、ほぼ1週おきにバージョンアップを繰り返している。
やりすぎ、といわれることもあるが、筆者ふくめた同業のみなさん共々、その実感は薄い。

待機児童問題など社会の関心も高い保育業界だけに、それくらいの急ピッチで変わり続けるものなんだろうとも思う。

そうした流れの速さは、自治体監査の方々も同様なのだろう。

監査を見学するたびに、新たなテーマに引き合わせてくださる。業務支援アプリだけに、監査の通過は一大テーマ。

自然と、監査の現場に足を運びたくなる。

監査の方からいただくご指摘は、とにかく勉強になる。お世辞なんて全くない。まさに、目からウロコだ。

もちろん、手放しで感動するばかり、とは限らない。感動した分の数倍は、手痛い思いをして帰ることになる。

最近の例でいえば、災害対策。

近年の監査で重要度がぐんぐん上がっているテーマの一つだが、ここで監査の方から、鋭いリクエストを頂戴する。
停電中や屋外でもパソコンで在園状況が確認できるように、とのこと。

はい?? パソコンを、電源ぬきで動かせとおっしゃった??
などと、速攻の反論が筆者の口から漏れかけたが、ここは、ぐっと我慢の傾聴モード。
監査完了まで堪えに堪えた後で、見学先の園スタッフに愚痴まじりで吐き出した。
(セリフはこの場に書けたものじゃない。)

だが、スタッフ数名からの返事に、背筋が伸びた。避難訓練などでは、同じ思いを何度も感じたという。
しまった! これは、現場の声そのものだ! 監査のみなさま、ごめんなさい。

そして程なく、弊社直営園のPCは、電源が途絶えても自力で稼働できるノート型に一本化された。

また、災害時のデータ持ち出しに備えて、アプリ自体もタブレットで簡易的に表示できるように改良した。

さらにさらに、今年度からは、データ入力の主力を、持ち運びの得意なスマホに移行し始めた。

(宣伝:CCS NOTE のことです。どうぞ御贔屓に)
こうした、アプリの利用機器の様変わりも、監査の方の有難くも耳の痛い一言から始まったのだった。

さて、冒頭の園長の視線の話に戻る。

どうやら園長は、筆者と同様に、耳の痛いアドバイスをいただいたようだ。

園の運営方針にかかわる指摘、それも、スタッフと意見が分かれ、議論の末に園長が押し切って始めたテーマだった、と後から聞いた。

園長とはなんと孤独なのか。すべては園のために、と、あえて選んだ道だろうに、その決心を監査の方に揺さぶられる。

それも、ようやく説き伏せた園スタッフの面前で、だ。監査の方、ちょっと、いじわるじゃない??

しかし、結論からいうと、園長にはたいへんに勉強になったという。

むしろ、早いうちに指摘していただけて助かったとも。監査の方の正しさって、いつも後からわかるらしい。

そうは言っても。監査の当日には、そんな落ち着いた様子はまったくなかった。
そりゃそうだろう。

監査にむけて、園を挙げて準備し尽くした日々を知る身としては、恨み言を抑えきっただけでも拍手さえ贈りたくなる。
ねー、園長? と思ったのは、実は私だけ。

一晩たった後では、そうした監査の方からの指摘を(鵜呑みにしないまでも)しっかりと実践し始めていた。

園長も監査の方も、すごいな~。などと書きながらふと気がついた。
この状況、どこかで見たような・・・ドラマに出てくる、嫁と姑のバトルそのものだ!

表向きには平静を保ちつつも、意見の食い違いが、嫁姑の間で火花を散らす。
周囲はハラハラ。けれど、嫁も姑も、家を良くしたいという思いは同じ。やがて双方の歩み寄りが始まり、気がつけば、戦友のような友情が二人の間に育ってゆく。

姑は先人の智恵を嫁に託し、嫁はその智恵をもとに現代的なアイディアで成功をひた走る、というドラマ王道パターンじゃないか。

耳の痛い監査のアドバイスも、園長へのあふれる愛が監査の方にあればこそ。

ひょっとして、自治体が目指す監査とは、こうした嫁と姑がつなぐ智恵の伝承じゃないんだろうか、と強く感じた。

ならば! ここで居合わせた筆者も、何かの縁。求められる役柄に徹してみせよう。
え? ただのアプリ屋に、なんの役があるのかって?

そんなの、決まってますがな。
嫁と姑、双方からお叱りを頂戴する、ダメ亭主の役しか残ってませんってば(笑)。